過去最高益を達成したKDDI――収益指標は「ARPU」から「ARPA」へ(1/2 ページ)

» 2015年05月12日 19時33分 公開
[石野純也ITmedia]

 KDDIは5月12日、2015年3月期の決算会見を開催した。業績は、営業収益が4兆5731億円、営業利益が7413億円、純利益も4279億円を確保し、過去最高益を達成。代表取締役社長 田中孝司氏は、「3期連続2ケタ成長を目指していきたい」と意気込みを語った。

photo KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏

スマートバリューとMNP転入に支えられて過去最高益に

 高収益の背景に挙げられるのが、ユーザー数の拡大だ。田中氏が紹介したオペレーションデータによると、MNPで他社から移るユーザーの数が順調に拡大しており、「3月には年間最高水準に至った」。一方で、解約率も通期で0.69%に改善している。この大きな要因は、auスマートバリューにある。田中氏によると、auスマートバリューの利用者は「未利用者に比べて解約率が低く、安定した顧客基盤の確立に寄与している」という。auスマートバリューの利用者は、スマートフォン契約者の50%、auひかりユーザーの60%に達しており、auユーザーへの浸透率が高いサービスであることがうかがえる。

photophoto 2期連続2ケタ成長を達成し、業績は好調(写真=左)。MNPの純増数も、過去最高水準になったという(写真=右)
photophoto auスマートバリューの効果もあり、解約率は低下,高いauスマートバリュー浸透率。固定とモバイルの融合では他社を一歩リードしている

収益の基準を“回線”から“アカウント”へ

 これに加えて、1人1人のユーザーから得られる月間平均収益であるARPU(Average Revenue Per User)も向上しており、「2015年3月期はイヤーオンイヤーで初めて反転した」。2015年3月期のARPUは4230円。2014年3月期の4200円から30円、0.7%の増加となった。理由には、スマートフォンの伸びが挙げられる。2015年3月期には、スマートフォン率が54%に達し、全体の中に占めるLTE端末の比率も50%となった。ユーザーの規模拡大と、そこから得られる収益の両方を向上させたことが、最高益につながっているというわけだ。

 ただし、今後は1回線あたりではなく、1アカウントあたりの収益を上げる方向を目指しているという。田中氏が掲げたキーワードが、「『ARPU』から『ARPA』(アーパ:Average Revenue per Account)へ」。「分母はau契約者1人あたりで計算している」という数値で、複数台持ちの実態を反映させたものだ。裏を返せば、複数の端末を使いこなすユーザーが着実に増えているということでもある。田中氏によると、タブレットの累計契約数は100万台を突破したといい、「1人あたりのモバイルデバイス数も1.37台から1.4台に増やしていく」方針だ。

photophoto スマートフォンの拡大に伴い、ARPUも反転した
photophoto 今後は、「ARPU」から「ARPA」へと指標を変えていく(写真=左)。1人あたりのモバイルデバイス数も増加傾向(写真=右)
photo タブレットの契約は100万台を突破

サービスとオープン領域にも注力

 また、「付加価値ARPUの拡大を目指す」という従来からの路線も、今後強化する。KDDIは「auかんたん決済」と「au WALLET」という2つの決済プラットフォームを持っているが、この流通総額を高めていく目標を掲げている。具体的には、2015年3月期の流通総額0.38兆円を、2016年3月期には0.85兆円まで高めていく。金融サービスについては、au損保、じぶん銀行に加え、ライフネット生命に出資。コマース領域では、LUXA(ルクサ)を完全子会社化している。

 これらに加えてオープン領域では「Syn.」の規模を拡大し、「延べ月間利用者総数は1億人を超える規模になった」。

photophoto 決済プラットフォームは、auかんたん決済とau WALLETの合計で、流通総額0.85兆円を目指す(写真=左)。オンラインコンテンツに加え、金融やコマースに注力することで、決済プラットフォームとの相乗効果を狙う(写真=右)
photo サイドメニューでサービス連携する「Syn.」は延べユーザー数が1億を超えた
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年