「そば打ちも良かったが、講師と出会えて楽しかった」――加藤社長がノリノリでそば打ち体験をアピール石川温のスマホ業界新聞

» 2015年10月09日 11時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 9月30日、NTTドコモは2015-2016冬春モデル 新商品・新サービス発表会を開催した。終了後、加藤薫社長の囲みが行われた。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年10月3日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。


―― 今日の発表会は全体的に楽しく、加藤社長がノリノリだったように思えた。何があったのか。

加藤社長 「ノリノリなのは、なんといってもあの体験。ご紹介したそば打ちの講師の方が山中さんというのだが、人生に触れたような気がした。『私は不器用です』と初っ端に言われた。『しかし教えるのは上手いです。名人や達人が教えるのが上手いかといえばそうじゃなりません』と。草木にも魂がありとか、ちょっと哲学的な話をされる方で、とてもいい出会いだった。

 そばを打つことそのものも私にとって好奇心といいますか、非日常で楽しかったが、講師の方に会えて楽しかった。その辺のことを伝えたくて、今回は入れ込んでおりました」

(★ ホント、加藤社長のプレゼンは熱がこもっていたし、製品もきちんと説明されていて良かったと思う。社長のポジションになると、なかなか人に教えてもらう機会もなさそうなだけに、本当に良い経験だったのかも)

―― 「すきじかん」はキャリアとしては珍しいサービスだと思うが、目標はあったりするのか。

加藤社長 「あまり目標設定はしていない。綾野剛さんも奇しくも言っていましたが『溶接』など、非日常的なものもある。まったく違う世界、そこにある真髄にちょっと触れていただき、自分の生活が豊かになったらいいなという思いがいっぱい詰まっています。そういうことをみなさんに体験できるサービスにしたい」

(★ 狙っているのは50代女性だけど、若者でも楽しめるものも多かったりする)

―― 月額6000円というのは、カタログ型の体験サービスはいくつかあるなか、高額ではないか。

加藤社長 「高めかな、と思う。観光でそば打ち体験だと4000円くらいだと聞いている。私はしたことないが。プラス、一流の場を設定しており、そこは体験していただくとパフォーマンスが決して劣るものではない」

(★ 毎月、マガジンが届いたりするので、それの経費もかかっているようで)

―― これまでドコモは便利さや機能性、効率性を訴求する商品を扱ってきたが、その真逆のような「すきじかん」を提供する必然性はどこにあるのか。

加藤社長 「必然性というよりも、ユーザーといろんな側面で接したい、役に立ちたいと思います。そういうものとなると、ああいったご提案になる。音楽やビデオもそちらのほうにふっている。私なんかも64歳で、時間や来し方を振り返る頃。そうしたタイミングの方に、生活、非日常にも目を向けたいというのが本音でございます」

(★ 体験型カタログがサブスクリプションで提供されるというのはキャリアらしいかと)

―― 政府のほうから、携帯電話料金は高い高いと言われている件について、加藤社長はiPhone発売イベントのときに、データ通信量が増えているから仕方がない側面もあるといっていた。最近の平均データ通信量はどのくらいか。

加藤社長 「えーっとですね。私ども平均を見てみると、これって言って良いのかな。平均はだいたい3GBくらい。もちろん、もっと使う人もいれば使わない人もいる。

 昔よりは増えていると思う。ここ10年で生活費に占める割合が増えているという指摘だが、ここ10年に大きな変化が起こっている。フィーチャーフォンからスマートフォンが出てきて、高機能・高性能になりながら、コンテンツやサービスが非常に発達している。

 特に日本は小学生、中学生の方々にも楽しんでいただいているというところがあって、非常に普及しているというベースがある。我々はパケットをできるだけお安くし、シェアだとか長く使っていただけた方や若い人へ割引の配慮をするような新料金体系を去年から提供している。

 実は1000億円以上の痛み。逆にいえば1000億円以上をお客様に還元したのかなと。口はばったいが値下げした効果になっている。

 自分でどれぐらい使うんだろうかというのを考えながらプランをいろいろ選べる。一定の使いやすいプランができていると思っている。その中でも、安い方がいいのだろうが、私どもも企業の成長、企業価値を頭に入れながら、お客様の満足度をどのように充実させていくか。これは料金の基本中の基本なので、ずっと考え続けており、これからもしっかりと考えていきたいと思っています」

(★ 確かに値下げして1000億円損したというのは説得力があるな)

―― 通信料金と端末料金が一緒になっているところが問題視されているが。

加藤社長

「2006〜2007年にモバ研の中で、端末をコロコロ変える人の方が得だ、月々の料金が高いという議論があった。料金が少し下がり、端末を定価に近い形で売りましょうという話になったが、スマホになってからそうじゃなくなってきた面もある。そういうのがどうあるべきか考える、いい機会なのかもしれない」

(★ 月々の端末値引きを辞めて、端末代金をユーザーにすべて負担してもらった方がキャリアが儲かる。いまの仕組みもユーザーに還元されていると言えなくもないが)

―― 日本は通信料金が高いという指摘があるが、どうとらえているか。

加藤社長 「年に一度、発表があったりしますが、物価指数や通貨価値も国によって違ったりして、なかなか単純には比べられないと思うが、日本は決して高くないと思っている。みなさん、ご存じだと思いますけど、他国の主要都市ではもっと高い状況になっていたり、競争が入って安くなっているところもある。そんな中で中庸よりも少し下目くらいだと思っています」

(★ コカ・コーラやビッグマックで世界の物価を比較していたりするけど、これからはiPhoneの通信料金で比べてもいいと思う)

―― 端末が高額だという指摘があるが、今回バリエーションを広げて、そこに応える意図があるのか。

加藤社長 「そうですね。バリエーションを増やしながら、一方でいろんなキャンペーンもかませて、結局、お客様に一番いい形は何かといつも試行錯誤している。これが決め手というものがなかなかないが、本当に探っていきたい」

(★ arrows Fitとか、明らかに安価にしてケータイからの乗り換えを狙っている感じ)

―― 高市総務大臣が通話定額ではないプランにも言及しており、ドコモ以外はそういったプランがある。そのあたりはどう検討しているか。

加藤社長 「まだ何も考えていません。私、不勉強でまだ聞いておりません。そういう考えもあるのかと思います」

(★ まぁ、NTTドコモは通話定額じゃないプランを復活させても良いと思う)

―― 今回、豊富なバリエーションの端末が発表されましたけど、同じAndroid端末なのに、何でこんなに操作性が異なっているのか。ソフトウェアのバージョン、ホーム画面の扱い方、メニューの階層などこんなに違うことが、Androidへの敷居を高くしていると感じる。ドコモが音頭をとって統一に向けたナビゲートをしていくつもりはあるか。

加藤社長 「これはハードもソフトにも、いろんなメーカーのお考え方があり、それぞれ、この部分を伸ばしたい、この部分を強調したいというのもメーカーで違っている。なので、我々はマルチベンダーから調達させてもらい、特徴あるものをラインナップしている。

 その結果として操作性がちょっと違うところは、少しご迷惑をかけているが、昔のようにドコモの端末はこの操作で、と統一させることが、かえってそれぞれの個性をなくすかもしれない。コスト的な問題もあり、そのような予定はありません。少し慣れていただければ。Androidのベースのところは一緒にしようとは思っている。結果、少し違うところはご容赦いただきたい」

担当者 「ホーム画面などはお客様の使い勝手を考えて、統一したホーム画面を使っていただける工夫をしている。使いやすいAndroidしていくのは引き続き取り組んでいきたい」

(★ これはキャリアで統一させてはダメだと思う。メーカーの個性が死んでしまうだけに。Androidの宿命かと)

―― 今回、Nexus5Xを投入したり、発表会でも初めてだと思うが、Androidのバージョンアップをやっていくことを力強く断言した。方針の変化があったのか。

加藤社長 「ユーザーの声もありますし。ラインナップはあまり多彩にすると何を選んでいいか分からないないと言われるし、ひとつふたつにすると、選べるチョイスが少ないといわれ、そこのところのあんばいをずっと探ることになる。今回はこういうかたちでやらさせていただいた。

 一方でOSは進化していくので、丸山は言いにくそうに6カ月かかったと言っていたが、できるだけ速くがんばります。できるだけ速くバージョンアップという気持ちは前々からあった。我々もある程度、力がついてきた。そういうこともあって、そこにチャレンジしていくという決意表明でございます」

(★ バージョンアップをしないことにはマルウェアなどのリスクへの危険も増す。一方でコストの負担もあり、どこまでやるかは難しいところ)

―― Android 5.0のバージョンアップのときにアップデートでトラブったというか、少しもたついたところがあったが、その割には6.0のときにはサクッとアップデートしていけるのか。

加藤社長 「そこから学んだことがあるんだよね」(と担当者の肩を叩く)

担当者 「お客様から新しいOSで使いたいというニーズが増えてきている。前回はうまくいかなかった部分が少しあったが、今後はできるだけ対処はできるようにしていきたい」

加藤社長 「絶対ないとは言えませんので。もし、なにかあったらできるだけ速く(対応する)」

(★ FeliCaとかNOTTVとか、アップデートをする上で検証作業に負担のかかるモノが多いので、どうしても時間がかかるようで)

―― iOSはサクサクアップデートできるが、Androidは時間がかかる。そこはユーザーの不満になっていたりするのか。

加藤社長 「結果的に何かあると不満はでますので。1社できっちりと作り込んでいる端末と、いろんなところにオープンにしながら、それぞれの工夫を中に入れている製品とは、少し本質的には違うかも知れません」

(★ そこはiPhoneと比べてはいけないような)

―― 端末ラインナップは豊富だが、料金プランのバリエーションが少ないことが問題視されているが。なぜ料金プランはバリエーションが出てこないのか。

加藤社長 「えっと。昨年、新料金プランを提供しており、これはバリエーションそのもの。長期に使えばシェアもでき、1Gバイトごとの追加もでき、若い方々には安いプランがあり、らくらくホンやデータ通信向けのプランもそろっている。一定のバリエーションはこの中に内在していると思う。いろんな意見がまだあるのは現実なので、どう取り込んでいくか、どういう設計にしていくかは、本当に毎日といっていいほど考えている。そこの知恵を出しているところ」

(★ 従量制の音声プランがないという以外は、バリエーションが多すぎてむしろわかりにくい位かと)

―― KDDIは3Gバイトのデータ定額プランから選べる。音声はすぐに対抗したが、データ通信料金の対抗はどのように考えているか。

加藤社長 「構造がちょっと違う。我々は2GB、5GB、8GBと刻んでいる。ここをどう理解していただけるか。さきほどのいろんな割引も含めて、それぞれに特徴があっていいのだと思う」

■取材を終えて

 最後の質問にも関係するが、料金プランにおいて他社とちょっとでも差異があれば「なぜ、追随しないのか」と突っ込まれ、同じにしたら「横並びでいいのか」と叱られる。キャリアの料金戦争は本当に大変だと思う。

 確かに家計の負担は増しているのは事実だが、ここでキャリアが大幅値下げに踏み切れば、MVNOの存在意義はなくなるわけで、何とも難しい舵取りを迫られているように思える。

© DWANGO Co., Ltd.

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