スマホ特需が終わった2015年――2016年は「Apple Pay」が風穴を開ける?:神尾寿が語るモバイル業界(1)(3/3 ページ)

» 2016年01月18日 06時00分 公開
[小林誠,ITmedia]
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あらゆる消費を1つのサービスでまとめる時代に

―― あとはApple Payが入ってくる時期ですね。

神尾氏 意外と早いと思いますよ。日本は今まで述べた通り、既にリーダー・ライターが普及している国ですから。先行マーケットなんですよ。2016年の注目トピックの1つとして、Apple Payがいつ入ってくるか、というのがある。

―― 2016年にもう入ってくる?

神尾氏 可能性として、あり得ますよ。それくらいにApple Payをやらないと、日本のおサイフケータイ陣営が再度まとまってしまう可能性がありますし。ただし今のところApple Payは「Wallet」アプリでしか使えない。そのアプリの中にしかサービスが入れられない。だったら入れればいいだけなんだけど、これだとプラットフォーム的なサービスの展開ができない、という問題が生じます。Apple Payの日本導入の綱引きが、「Appleのウォレットサービスだけ使えるようにする」のか、(Apple Payの)「SDKを公開して、Apple以外のウォレットサービスを認めるのか」になるでしょう。

photo Apple Payで使うクレジットカードの情報は「Wallet」アプリで管理する

―― そこまでもうかるものなのでしょうか。

神尾氏 単体でもうかるかどうかというより、それが今のビジネストレンドになっています。とりわけ飲食店や流通小売は今、スマホ向けサービスへの投資がバブルになっている。それはなぜかというと、“集約化”が起きているのです。

―― 集約化とはどういうことですか?

神尾氏 集約化は2段階ありまして、その1つ目は少子高齢化で人が減っていくことです。これは普通に考えれば、ネガティブ要因です。消費単位のとしての人の数が減ることで、消費の頻度と絶対量が減りますから。

 しかし、2つ目として、人が減っていくことで資本の集約化が始まります。既に団塊ジュニア世代からそうですが、少子化の影響で子どもの数が少ないので、親から上の世代の資産が分散しにくくなります。よく最近の子供は「(両親と、父方と母方の祖父母)6つのサイフを持つ」と言いますが、それが社会全体にスライドして広がっていくのです。例えば、1人っ子同士が結婚すれば、2世帯分の資産が1世帯に集約される。無論、これは祖父母や親の世帯に一定の資産があることが前提ですが、マクロな視点で見れば、垂直の資産移動に伴って子供が減った分の集約化が起こる。これによってプチ資産家は、確実に増えます。

―― なるほど。高額商品が売れるようになりますね。

神尾氏 そうです。ただし買いに来るお客さんの数、購入回数は減ります。人が少なくなっていくわけですから。しかし資産の集約化の恩恵があった世帯では、1人あたりや1世帯あたりの消費額は増えるのです。無論、この現象の反対側には、集約化によって親世代に資産がない世帯との格差が広がるという問題もありますが、それはまあ別の問題ですね。

 今後の流通小売りや飲食では、人の数の減少を客単価の拡大で補うことが重要になります。中長期トレンドとして資産および所得の格差は必然的に拡大しますから、そこで客単価の高い優良顧客を「どう囲い込むのか」「どう取り込むか」の競争になるのです。ここでスマートフォンを介して得られる情報は、とても重要になるのです。

―― リアルビジネスでスマホを使う。キャリアが発表する新しいサービスも、生活の全てをスマホにまとめようとしていますよね。

神尾氏 そうですね。コストコの会員制度や、Amazonのプライムサービスみたいなものですよ。あらゆる消費をうちのサービスにまとめませんか? 集約しませんか? という。コストコがガソリンの不当廉売で問題になりましたが、コストコからすればガソリンなんてオマケなんですよ。無料で配ったとしても、会員がそれ以上に大量にコストコで買い物をしてくれればいい。Amazonが動画や音楽をプライムサービスでは無料で提供しているのも、オマケだから。プライム会員がAmazonで買い物をまとめてくれるならば、動画や音楽なんて無料で配ったっていいのです。

―― キャリアも通信以外のサービスに手を出すしかない?

神尾氏 2020年代まで見据えれば、まさにその通りです。通信事業だけでキャリア同士が競争するなど、ナンセンスですよ。日本の大手キャリアは、巨大な顧客基盤を持っているわけですからね。優良顧客を選別し、そういった「プレミアムなお客様」を囲い込む術はあるのですから。

 今後のキャリアは、通信事業以外にこそ力を入れて、変わっていく必要があります。通信事業だけにひきこもって、MVNOも交えて価格競争をしても意味がない。際限のないARPU(ユーザー1人あたりの売上)の奪い合いになり、低価格競争になれば、市場規模が小さくなってしまう。それはあまり良い未来ではないですね。

(続く)

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