インタビュー
» 2016年01月30日 21時33分 公開

神尾寿が語るモバイル業界(3):2016年、販売奨励金が抑えられてもiPhoneは売れると思う理由 (2/3)

[小林誠,ITmedia]

キャリアが中古スマホを扱うことも?

―― だけど中古スマホがあること自体を知らない人もまだいますよ。そこまで一気に進みますかね?

神尾氏 私はキャリアが認定中古システムをやるのではないかと思っているのです。

―― ドコモショップで中古を売る、なんてことも?

神尾氏 そうです。キャリアがユーザーのスマホを下取りして、高品質で安心できる中古スマホだと認定してキャリアショップで売る。スマートフォンには車検や整備簿のような仕組みはありませんが、キャリアであれば、少なくとも自分たちが新品を売ったお客さんの(スマホの)利用期間は分かっていますからね。中古ビジネスを行う上で、品質の管理と保証がしやすい、という強みもあります。

 キャリアショップから見ても、キャリア側が認定と保証や保険をつけた中古スマートフォンならば安心して取り扱えます。新品の価格が値上がりして総販売数が下がってくる中で、安いスマートフォンを求める一般のお客さんに、良質な認定中古商品をお勧めできるのはメリットになると思いますよ。

―― それでキャリアはいいんですか?

神尾氏 いいのですよ。キャリアが本来的に売りたいのは、スマホというハードウェアではなく、回線契約と各種サービスなのですから。新品だろうが中古だろうが、ユーザーが自社の回線・サービスを利用する「端末」さえ満足して買ってくれればそれでいいのです。それにビジネススキームへの初期投資さえ終われば、今後の市場環境下では認定中古スマホの方が利益は出しやすいですよ。

 また収益面以外でも、認定中古スマホのシステムを構築すると、キャリア主導で端末市場の硬直化を防ぐことができるようになります。認定中古システムで重要なのは“程度のいい高年式の中古品を調達すること”。ですからキャリアがこの仕組みを構築すれば、スマートフォンの新製品に関心の高い層向けに、高額下取りによる買い換え支援プログラムを用意しやすくなります。ここで調達した「良品」は、安いコストでリフレッシュして認定中古スマホとして高めで販売できる。しかもこれだと回線やサービス契約のロスリスクがまったくありません。

―― うちの読者のように、端末を頻繁に買い換える人にはうれしいかもしれない。

神尾氏 そうなんですよ。新しい機種を次々使いたい人にも良いことなんです。だからキャリアが認定中古市場を作ったら、スマホの短期型リース販売も始めると思いますね。Appleも米国で既に類似のシステムを行っていますけど、ようは「1年スマホを貸して、1年後にそのスマホは引き取ります、だけど新しいスマホをまた貸します」というふうに。あるいは1年後にスマホを引き取ることを条件にして売る。引き取ったスマホは中古として売る。キャリアにとっては2度おいしいわけです。1つのスマホで2回ビジネスが行えるわけだから。

―― 中古に不安がある人も、キャリアが認定していれば安心できますね。

神尾氏 リフレッシュもキャリアならできるし、修理補償だって付けられます。法人需要にも応えられる。特にKDDIはトヨタの資本が入っているのですから、積極的に(中古ビジネスを)やればいいのですよ。実はトヨタは中古車ビジネスでのノウハウも相当すごいのですが、そこから指導を受けてスマホ版の中古ビジネスをいち早く立ち上げればいいのです。

―― 今は下取りした端末を海外に流していますが、それを国内で売る、と考えればいいわけですね。

神尾氏 そうです。難しいことではない。これまでは中古を売っても、新品が0円で売っていたから売る必要も買う必要もあまりなかった。だけどこれから新品が高くなれば、中古が売れるようになっていきます。

―― 新品でもミドル、ローエンドのスマホを売るという選択肢もあると思いますが。

神尾氏 日本市場の特性で考えると、ブランド力のないメーカーからミドルレンジやローエンドのスマホを調達して売るよりも、Appleと協議してiPhoneの認定中古市場を育てた方がいい。ビジネスはそちらの方がおいしいから。逆にAndroidスマホは中古市場で売れる端末を開発しないと。そのためにはブランドが必要で、結局ハイエンド端末でブランドを作る必要があります。

 ただ、Androidはブランドだけの問題でもない。さっきのモデルチェンジサイクルもそうだし、OSバージョンアップへの対応もある。そこがiPhone並みにならないと、中古市場では厳しい。

―― Androidのスマホはバージョンアップできない機種が多いですね。その割に新機種が半年に1回は出てくる。

神尾氏 キャリアの都合に合わせた新機種投入は、もうやめるべきですよ。キャリア側も自社都合をメーカーに押しつけるのは、いいかげんにやめるべき。キャリアとして端末ビジネスに関わるとしても、これからは新しい流通モデルを作らないと。

Androidが売れるには、ミドルレンジよりもハイエンドが必要

―― 先ほどのAndroidのリセールバリューの話ともつながるのですが、AndroidはもうiPhoneに勝てないんですかね?

神尾氏 まず最新世代のAndroidスマートフォンが、機能面・性能面でiPhoneに大きく劣っているということはありません。セキュリティをはじめとする設計思想や、使いやすさに対する考え方の部分で違いがある、といったくらいです。OSの部分だけを見れば、Androidの方が優れている点もあります。

 ではなぜiPhoneとAndroidスマートフォンで差が付くかというと、Appleの製品戦略とブランド戦略に、Androidスマートフォンを作るメーカーが負けてしまっている。とりわけ日本では、これまでキャリアの販売戦略の影響でコストパフォーマンスでの差別化競争が起きにくかったため、ブランド戦略での差が大きいですね。「同じ実質0円で買えるのならAppleのiPhoneがいいし、iPhoneの方が安いなら、なおさらiPhoneがいい」という構図が作られてしまっていたのです。

 このような背景を踏まえてAndroidスマートフォンメーカーの復権を考えると、まずは「メーカーとモデル数が減ること」が最優先です。爆発的な普及拡大期が終わってしまったので、消費者にとって分かりやすいブランドに絞り込まれる必要がある。Androidスマートフォンを代表するブランドが、1〜2個くらいまで減った方が一般の消費者には理解しやすい。これは同時にAndroidのエコシステムにおける分断(フラグメンテーション)問題の解消にも貢献します。

―― その場合、どういうスマホを売っていくべきですか?

神尾氏 まずは質感が高くて、何となく安心して使えそうなハイエンドモデルでしょうね。少なくとも、グローバル市場でミドルレンジやローエンドにカテゴライズされる製品ではありません。

 日本ほどスマートフォンのハイエンドモデルが普及している国はないと思うのですが、ユニークなのがリテラシーが低い人ほど「とりあえず安心して使えるハイエンドモデル」を買いがちなのです。リテラシーが高い人は割り切りができるのですが、日本は割り切り下手な人が多い。自分の使い方を考えて最もコスパのよい端末を選ぶよりも、割賦を組んでキャリアに購入サポートを付けてもらってでも、“安心して使えそうなハイエンドモデル”を欲しがる人が大半なのです。

―― 2015年は、ドコモがミドルレンジのスマホを出してきました。

神尾氏 だけど売れていないでしょう? ミドルレンジで過去に一番売れたのは「Xperia A」くらい。これには理由があって、まずXperiaというブランドがきちんと存在していたこと。そして当時、ハイエンドモデルの「Xperia Z」が品薄だった。Xperia Zがしっかり売れていて、しかも店頭にないところに、ドコモのツートップ戦略に推されてXperia Aが投入された。当時のドコモの広告宣伝戦略も奏功し、Xperiaブランドとうまく調和したことで成功したんです。

photo 2013年に大ヒットした「Xperia A SO-04E」

―― タイミングが良かったんですね。

神尾氏 そうですよ。あのときXperia Zが売れ残って投げ売りされていたら、Xperiaブランドの価値も下がっていた。しかもハイエンドモデルが店頭で安く存在していたら、後出しでもミドルレンジモデルだったXperia Aは売れなかったでしょうね。

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