セカオワのアジア進出も支援 聴き放題の「KKBOX」がリアルな音楽事業も手掛ける理由(2/2 ページ)

» 2016年02月18日 21時21分 公開
[平賀洋一ITmedia]
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―― ライバルが増えて市場拡大を歓迎しているとのことですが、パイを奪い合うような局面ではないということでしょうか。

クリスCEO 両方の性質があると思います。拡大しつつ、その中でシェアを競い合う市場だと思います。

「KKBOX」

―― その中でKKBOXの強みを教えてください。

クリスCEO 大きなキャンペーンを行っていませんが、日本ではシェア2位の規模を持っています。そして最大の武器はコンテンツ数。そして日本ではまだ、定額制音楽配信サービス自体の認知度が高くありません。アンケートでは「まったく知らない」という比率も高かった。そのため、PRチームの活動も重視しています。

ジョセフィン・チャン氏 機能面ではキャッシュできる曲数の多さ、歌詞表示機能、他のユーザーと同じ曲を聴きながらチャットができる「Listen with」、そしてスマートフォンやタブレット、PCといった対応デバイスの豊富さですね。

 またグローバルのプレーヤーではないため、市場ごとのニーズに柔軟に対応できると考えています。

―― ユーザー属性について教えてください。またAndroidとiPhoneの比率はどれくらいでしょうか。

アイゼロ・リーCOO 台湾でのメインユーザーは15〜35歳で、ほかのエリアもほぼ同じですね。もちろんスマホが9割以上で圧倒的です。台湾はスマホユーザーの8割くらいがAndroidユーザーですが、KKBOXユーザーに限ればiPhoneと半々くらいです。

―― iPhoneユーザーも多いのですね。Apple Musicが始まったことで影響はありましたか。

リーCOO 台湾はまだApple Musicの提供エリアではありませんから、影響は出ていません。

―― Apple Musicが始まらないのは、KKBOXのシェアが高いためですか?

チャン氏 それは分かりません(笑)。Apple Musicがスタートした香港でKKBOXユーザーのAndroid比率が増えた(iPhoneユーザーが乗り換えた)というデータはありません。現時点で大きな影響はないと思っています。

―― 日本ではシェア2位ということですが、1位はどちらでしょうか?

クリスCEO 私の口から公式に認められないのですが、スマホメーカーでもあるA社です(笑)。ハードのシェアも高く、音楽サービスの会員数も多い。しかも3カ月無料などのキャンペーンも行っていました。その後の解約率は分かりませんが。

―― 日本・韓国ではここ数年でLTEなどの4Gネットワークがかなり整備され、スマホの通信速度がかなり上がりました。4Gはほかのアジア各地でもスタートしています。インフラが充実したことで、サービスの利用動向はどう変わったのでしょうか。

クリスCEO 非常に大きな変化がありました。曲がよく聴かれるようになった。3Gのころはアクセスして1曲聴くまで時間がかかりましたが、今はすぐに再生されます。

チャン氏 当然ユーザーの利用時間も増え、ここ1年で確実に伸びています。

クリスCEO ただレスポンスが良すぎて、データ容量を使い切ってしまう恐れがでてきました。リッチコンテンツの定額制サービスが普及する一方で、キャリアがデータ使い放題プランを見直すなど新たな影響を与えていると思います。

 では使う度に通信帯域を使っているかというと、そうでもありません。ストリーミングサービスは一般的に、コンテンツを一時的に保存するキャッシュを利用します。そのため、再生する度に必ず通信するとは限りません。特にKKBOXは最大4000曲を一時保存できますから、その分ネットワークへの負荷も少なくなります。

 ストリーミングという言葉の意味は、エンドユーザーとわれわれ業界では認識が違うかもしれませんね。キャッシュをどううまく使うかが重要で、聴く度に常にダウンロード通信が発生するわけではありません。良く聴くコンテンツはキャッシュに置いておける、しかもダウンロード販売的に比べて料金が安い――という点をもっと訴求したいと思います。

「KKBOX」

―― 通信インフラが整備されたことで、より高品質なコンテンツを求める声も出てきました。音楽配信ではハイレゾのダウンロードやストリーミングサービスも出てきましたが、高付加価値のサービスを開始する予定はありますか。

クリスCEO 今のところハイレゾ配信などの予定はありません。一般的なイヤフォンでは250Kbps以上の音質の差は聴き取れないという調査結果があります。特にスマホでハイレゾの音をしっかり楽しめる環境は限定的で、よほど良いイヤフォンやスピーカーで出力しないと高音質であることを楽しめないと思います。

 現在のユーザー動向を見る限り、今の以上の高音質へのニーズ、ダウンロード販売のニーズはあまり高くないと思っています。

―― KKBOXのアプリは非常に多機能ですが、一方でもっとサクっと音楽を聴きたいというニーズもあるかと思います。機能を絞ったライト版、あるいは配信コンテンツを限定して料金を下げた専門版など、バリエーション展開はお考えですか。

チャン氏 ユーザーが増えて求められるニーズも多種多様になり、サービスや機能が増えてきたことは否めません。利用動向を見ながら、機能やサービスの取捨選択をする必要は常に行っていきたいと思います。

―― YouTubeやニコニコ動画などではいわゆる歌ってみた系のコンテンツも人気で、歌い手が固定ファンを獲得する、あるいはメジャーデビューするというケースがありますね。ユーザー参加型のサービスについてのお考えを教えてください。

クリスCEO もちろん視野に入っています。われわれはオフレーベルコンテンツと呼んでいて、2017年にインディーズやアマチュアの作品を配信できる仕組みを一部用意するつもりです。ただ、どなたでも配信できる訳ではありません。一定の基準をクリアするかの審査を行い、厳選したコンテンツを用意したいと思います。

―― CEO自らオーディションする。ということもあるのでしょうか?

クリスCEO 審査方法、基準については未定でまだなんとも言えません(笑)。一度配信されても、ユーザーが低い評価を付けた場合は配信を停止するといった仕組みも考えられますね。それに合わせて、音楽SNS的な機能も自社で用意したいと思います。

―― KKBOXはKDDIの子会社で、そして日本は大手キャリアの影響が強い市場です。今後の日本展開でKDDIの後押しを受ける予定はあるのでしょうか。

クリスCEO KDDIとは非常にいい関係です。新しい展開については話あっている最中で、具体的な内容は今はお話できません。

―― 台湾では音楽配信以外のリアルな音楽ビジネスを手掛けています。これを日本や香港・マカオ、シンガポール、マレーシア、タイなどほかのエリアに広げるお考えはありますか。

「KKBOX」 KKBOXが台湾と香港で発行している音楽情報誌

チャン氏 各地域ともマルチな経営方針で対応していく方針で、リアルな音楽ビジネスを台湾以外でもチャレンジしたいと思います。同時に定額制音楽配信サービスをしっかり広めていきたいですね。

―― 中国やほかのアジア地域、そしてグローバルにはどのように展開されるのでしょうか。

クリスCEO 現時点でエリア拡大は考えていません。現在提供中の市場はまだまだ高いポテンシャルを秘めていると思います。

 特にホームマーケットの台湾では音楽配信だけでなく、リアルな音楽ビジネスも展開しています。まだまだやることがあり、既存の市場でもっとサービスを充実させることを優先したいと思います。

―― 今日はありがとうございました。

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