自分の時計を“スマートウォッチ化”できる――台湾メーカーの「iMovement」に注目山根康宏の海外モバイル探訪記

» 2016年07月13日 06時00分 公開
[山根康宏ITmedia]

 スマートウォッチブームはここのところ一段落。「Apple Watch」発売直後の盛り上がりがウソのように、最近はあまり新製品の話も聞かれません。しかし海外の展示会へ行けば新興系メーカーから今もさまざまなスマートウォッチが発売されています。

 最近のトレンドは、機能を盛り込んだ「高機能なIT製品」よりも、日本でも発売されているWithingsの「Active」のような、見た目はクラシカルで一見すると普通の腕時計にしか見えないような製品です。スマートフォンが高機能化すればするほど、腕にはめる時計はそのコンパニオンではなく、逆にアナログなものを求めてしまうのが人間の心理なのかもしれません。

スマートウォッチ 腕時計メーカーもスマートウォッチ市場に進出

 日本時計協会のデータを見ると、腕時計(ウォッチ)の世界の生産台数は2013年に下げ止まり、2014年、2015年と上向いています。そんな腕時計メーカーがスマートフォンからの通知を振動やライトで知らせてくれる簡易機能を持ったスマートウォッチを本気で作り出したら、スマートウォッチ市場はむしろ一気に広がるのかもしれません。6月に開催された「MWC上海2016」でも、中国の老舗腕時計メーカーがそんな簡易スマートウォッチを発表しています。

スマートウォッチ iPhone、Android、そして“第3のOS”にも対応する腕時計

 中国のFIYAは、知る人ぞ知る老舗メーカー。中国の腕時計と聞くと何やら怪しいものを想像してしまいますが、このFIYAは低価格品から高級品まで品質のしっかりした腕時計を製造しています。何とこのFIYAの偽物が中国では出回るほど。そのFIYAが開発したスマートウォッチは、スマートフォンへの通話着信やSNSのタイムライン更新などを腕時計内蔵のバイブレーションで知らせてくれます。対応するスマートフォンはiPhoneとAndroid、それに加えて中国のアリババが開発した「Yun OS」にも対応。YunOS搭載スマートフォンは中国では数社から発売されていますが、それにも対応するとは、さすがです。

スマートウォッチ 普段使っている自分の腕時計、スマートウォッチにならないかなぁ

 スマートウォッチに手を出せない人の中には、普段使っている腕時計がお気に入りだから、という人も多いのでは? 両親や恩師、恋人からプレゼントされたり、何かの記念にもらったりと、思い入れのある腕時計って「時を知るための道具」じゃないんですよね。

スマートウォッチ 普通の腕時計にスマートウォッチ機能を内蔵できる、だとぉ!

 ソニーの「wena wrist」のように、腕時計のベルト部分に機能を持たせる製品も出てきていますが、ベルトも含めて愛着のある人には向かない製品です。ならば「腕時計の中にスマートウォッチ機能を内蔵しちゃいえばいいじゃないの」と考えたのが台湾のPRINCOという素材メーカー。ちょっと強引なこの手法は、ものづくり大国でもある台湾人らしい発想なのかもしれません。

スマートウォッチ 腕時計のムーブメント部分に取り付けるだけ、らしい

 PRINCOの開発した「iMovement」は、市販のクオーツ式腕時計の内部のムーブメントとほぼ同じサイズのスマートウォッチ化モジュール。腕時計で広く使われている「2035」「2105」という型番のムーブメントと互換があるそうで、それとまるまる入れ替えることで、腕時計の中身をスマート化してしまうというもの。腕時計の中身も今はモジュール化されているので、付加機能を持たせたモジュールと交換すればスマートウォッチの出来上がり、ということなのです。Bluetooth 4.0LEを内蔵し、バッテリーは腕尾計のものを利用。バッテリー寿命は約18カ月とのこと。

スマートウォッチ スマホの通知を振動でお知らせ

 iMovementを内蔵したからといって、腕時計の文字盤にディスプレイが追加されるわけではありません。スマートフォンに専用アプリを入れると、電話着信、SNSの着信、予定通知、アラームに応じて腕時計が振動します。また歩数を計測してスマートフォンアプリで記録することも可能です。

スマートウォッチ モーションセンサーでスマホのカメラコントロールも

 腕時計側にはボタンなどがありませんから、スマートフォンのコントロールができないように思えます。ところがiMovementはモーションセンサーを内蔵しており、腕時計をはめた腕を動かしてスマートフォンのコントロールもある程度できるのです。例えば腕を前に突き出してスマートフォンのカメラのシャッターを切る、といった操作も可能。モーションセンサーは他のアプリや機能に割り当てることもできるとので、腕を振ってiPhoneをコントロールなんてこともできそうですよ。

スマートウォッチ 腕時計を後からスマートウォッチにアップデートできるようになる

 iMovementは一般消費者向けの製品ではなく、腕時計メーカー向けに2016年内に販売する予定とのこと。やがては各腕時計メーカーが自社の製品に「スマート機能あり」のバージョンを提供したり、あるいは後からスマートウォッチ化アップグレードを提供したりするなんて時代がやってくるのかもしれません。iMovementの価格は50ドルくらいなので腕時計メーカーとしても導入しやすいでしょう。どんなメーカーが採用するかは分かりませんが、2017年あたり、スマートウォッチ機能がオプションで追加できる腕時計が出てきたら、恐らくこのPRINCOの製品を採用しているのでしょうね。実際にどんな製品が出てくるか、楽しみにしたいところです。

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