関西一丸となって「+d」を推進、dポイントの加盟店開拓にも注力――NTTドコモに聞く関西戦略(1/2 ページ)

» 2016年08月04日 17時52分 公開
[石野純也ITmedia]

 ドコモは、「+d」という戦略を掲げ、幅広い会社や行政とのコラボレーションを進めている。+dは、ドコモの持つ通信や決済、送客といったアセット(資産)を、他分野に生かしていくものだ。具体例としては、新潟市に導入した「クラウド型水田管理システム」や、DeNA、九州大学と福岡市で実験を行う自動運転などがあり、その成果も徐々に出始めている。ドコモの吉澤和弘社長によると、6月末で、+dの取り組みは66件にまで増加しているという。

 法人向けのソリューションにつながる+dだが、その一部はB2B2Cとして、一般のユーザーにも恩恵があるものになっている。また、dポイントでの提携も、+dの1つ。ローソンやマクドナルドでの支払いに対してポイントの形で還元を受けられるのは、ユーザーにとって目に見えやすい+dの成果といえる。

 幅広い分野の企業や行政機関との提携を目指す戦略であるだけに、+dでは、全国に散らばる支社の役割も重要になってくる。本社機能を東京以外に持つ企業とのコラボレーションや、各地方自治体との提携が必要になるからだ。その地域に住むユーザーの課題を解決するという点でも、支社の果たせる役割は少なくない。中でも、関西地区は本社を構える会社が多く、大都市の大阪府を擁するため、人口も多い。+dにとっては、重要な地域の1つといえる。

ドコモ関西 関西でも「+d」の取り組みが広がっている
ドコモ関西 大阪市教育委員会との取り組みでは、授業用にタブレットを試験導入している
ドコモ関西 神戸新聞社・電通とは、郷土教育につながる取り組みを行っている

 その大阪で取材をする機会があり、ドコモの関西支社で+dを推進する法人営業部長、関根聡氏にお話を伺うことができた。ドコモ全体の戦略を、関西支社としてどのように受け止め、活動しているのか。その具体例や関西地区ならではの特徴を聞いた。

さまざまな技術を持つ中小企業とも提携する

ドコモ関西 NTTドコモ 関西支社の関根聡氏

――(聞き手:石野純也) ドコモの関西支社として、+dについて特徴のある動きを教えてください。

関根氏 +dは全社的な取り組みですが、関西としては、「dケータイ払いプラス」で全国とは違う動きをしています。dケータイ払いプラスは、ショッピングサイトなどで代引きやクレジットカードの代わりに、ドコモの暗証番号だけで簡単に買い物ができるサービスですが、あちらを促進するチームが、もともとはコンシューマー系のところにありました。それを変え、今はわれわれの+dチームと一緒に動くようにしています。

 実例としては、繊維系の総合商社であるワールドさんがあります。自社での販売に力を入れたかったということもあり、dケータイ払いプラスを導入し、dポイントが付くようにしていただけました。dケータイ払いプラスでは売り上げが伸びないと思われるかもしれませんが、クレジットカードを持っていない学生さんや、クレジットカードの番号をネットで打ち込むことに抵抗のある方が、気軽に買い物をできるようになります。結果として、今までより、2割、3割売上が伸びたという事例もあります。

 こうすることで、(法人営業の通常の営業先とは違う)マーケティング部門、営業部門など、売上に直結できるところと直接お話ができ、お客さまの売上が上がり、われわれにもプラスになります。新しい付き合い方ができるということですね。関西以外で、こうした動きをしているところはないと思います。

―― 本社機能を持つ会社が多いということも影響しているのでしょうか。

関根氏 ネット系、リアル系も含め、いわゆるナショナルアカウントと呼ばれるかなり大きな会社が多いですね。メーカー系や食品系などの本社が多いのも、特徴だと思います。

 そうした名だたるナショナルアカウントにわれわれのアセットを提供し、彼らのサービスの黒子になっている一方で、関西はモノ作りの街でもあり、さまざまな技術を持っている中小企業もいっぱいあります。そういったところと組んで、新しいサービスを作り上げる取り組みもしています。

―― その具体例を教えてください。

関根氏 面白い取り組みとしては、鳥獣対策があります。関西でもイノシシが出てきて困る、鹿が出てきて困るという地域があり、その対策として、GPSと通信機能を付けたチップを埋め込んだワナを山の中に置いておき、そこに入ったらすぐにアラームが出て、カシャっと檻が閉まるようなものを作りました。振動検知センサーを使い、位置情報を飛ばすものですね。檻のメーカーは小さなところですが、これを全国に売り出そうとしています。

 また、神戸市との協定のほかに、ルネサンスと組み、子どもの健康を促進していく取り組みも、米原市と合意しています。このように、どこかの企業と組み、自治体も含めて3者でやるという取り組みも増えています。

ドコモ関西 米原市・ルネサンスとの取り組みでは、「ドコッチ」を活用した「子どもの健康増進プログラム」を実施している

1週間のうち、数時間は+dに関わる仕事をする

―― 関西支社として、+dを打ち出してから、組織的に何か動き方を変えたようなことはあったのでしょうか。

関根氏 携帯電話の単体売りから脱却しようということは、10年以上前から言われていました。B2BやB2B2C、B2B2Gという動きもありましたが、全社的に+dと位置付けられた昨年(2015年)のことです。それによって全社的な目線で動けるようになったことが1つあり、関西独自の取り組みとしては、法人営業だけでなく、ネットワークを保守する人間やコンシューマー系の人間も、+dのことを意識するようになりました。

 今、支社長と相談しているのは、1週間のうち、数時間でもいいから+dを推進する仕事をしようというもので、これは他の支社にはない動きです。法人部門だけでなく、関西一丸となって+dを推進する。関西はベースとして、ポテンシャルの高いエリアであるという意識は常に持っています。

―― Googleの「20%ルール」のような形で、+dのことを考えるということですね。法人営業だけでは出てこなかったアイデアも出てきそうです。ネットワーク系なら、基地局を生かしたりというように、幅も出るかもしれません。

関根氏 例えば「モバイル空間統計」はもともとが基地局の情報ですし、基地局にセンサーを付けて花粉などの情報を集めるといったこともあります。ああいったものだと、ネットワーク系の人間の方が、われわれよりも上手にできたりする。そういう意識を持っています。

 関西は法人営業のグループで900人弱ですが、ネットワーク系やコンシューマー系の営業まで入れれば、数倍の規模に膨れ上がります。勤務地や地元でのお悩み事がドコモのアセットで解決できるかもしれませんし、ビジネスのネタを拾ってきてくれるだけでも、意味があると思っています。

―― 法人営業に限らず、それぞれの部門で、何か+dにつながることがないかを考えていくということですね。そういった取り組みから生まれたモデルケースを、他の本社や支社に広げていくこともあるのでしょうか。

関根氏 関西で成功事例を作り、うまくいけば本社も含め、全国にPRしていきたいという思いはあります。例えば、+dになってから始めたものではありませんが、今、阪神電気鉄道さんと一緒に、GPSを使った「ミマモルメ」というサービスをやっています。これも東急電鉄グループの東急セキュリティさんが同じサービスを入れています。

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