「ハイスペック」ではないが使い心地良好――1年ぶりのフラグシップ「arrows NX F-01J」(2/2 ページ)

» 2016年10月27日 17時50分 公開
[井上翔ITmedia]
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オーディオ回路はオンキヨーが監修 液晶は色域を拡大

オンキヨーの中野副社長 オンキヨーの中野副社長

 arrows NXシリーズでは、2014年冬モデルの「ARROWS NX F-02G」からイヤフォンマイク端子出力でのハイレゾ再生に対応している。もちろん、F-01Jも同様だが、単に再生できるだけでなく「Tuned by ONKYO」認定を受けたオーディオ回路を搭載しており、再生時のノイズやゆがみを低減する取り組みも行っている。

 この取り組みは、富士通コネクテッドテクノロジーズとオンキヨーとの開発協業(PDF形式)にもとづくもので、オーディオ回路の設計や部品選定などにおいてオンキヨーの技術者がノウハウを注入している。

F-01Jはオンキヨーが監修したオーディオ出力を搭載 F-01Jはオンキヨーが監修したオーディオ出力を搭載

 ディスプレイは、先代の「arrows NX F-02H」と同様にIPS-NEO液晶を搭載しているが、先述の通り、解像度がWQHDからフルHDに落とされている。これは、WQHDに最適化された映像コンテンツが出てこないことや、処理能力の最適化の観点から“あえて”決断したことのようだ。

 その代わりというわけではないが、F-01JのIPS-NEO液晶は表示色域をさらに拡大している。「DCI(Digital Cinema Initiatives)規格(DCI-P3)」で定める色域の98%をカバーし、色再現性を96%まで高めているのだ。これにより、「有機ELディスプレイにひけを取らない」(関係者)表示の美しさを実現した。

 さらに、富士通独自の高画質化エンジン「Xevic」に搭載されている非線形超解像技術が、動画に加えて静止画でも適用可能になった。解像度が低めの写真や画像でも、よりクッキリと楽しめる。

IPS-NEO液晶の比較 IPS-NEO液晶は、先代のF-02Hと比べると解像度は落ちたが、サイズは大きくなり色再現性も高まっている
非線形超解像技術 富士通が工学院大学と共同開発した非線形超解像技術は、動画に加えて静止画でも適用可能に

便利な機能も充実

 富士通の携帯電話は、他社に先駆けて便利な機能を搭載することが多い。ただ搭載するだけではなく、それを後継機種において地道に改善することも忘れていない。

 まず、「ARROWS NX F-04G」でスマホとして世界で始めて搭載した虹彩認証「Iris Passport」では、赤外線カメラのフィルター処理を変更することでより明るく鮮明に虹彩を記録できるようになった。これに認証ソフトウェアのアルゴリズム改善を合わせることで虹彩の登録や認証にかかる時間の短縮、直射日光下や振動環境下での認証通過率の向上を実現した。特に、虹彩の登録時間と直射日光下での認証通過率は、従来機種(F-04GやF-02H)と比較して差がハッキリと分かるレベルで改善している。

F-01JのIris Passport F-01Jの「Iris Passport」は、赤外線カメラのフィルター処理を変更し、ソフトウェアのアルゴリズムを改善することで性能が向上

 arrowsの特徴でもあるシンプルすぎる標準カメラアプリにも変更が加えられている。

 従来は撮影画面で左右にフリック操作をすると「撮影画面」と「撮影済み写真の表示画面」を行き来できたが、F-01Jではこの操作が静止画・動画撮影の切り替えに置き換わっている。この変更は「動画撮影への切り替えをもっと簡単にしてほしい」という声を受けたものであるという。なお、撮影画面から撮影済み写真の表示に切り替えるには、撮影画面内のサムネイル表示をタップという、他社のAndroid端末と同じ操作に“戻って”いる。

 撮影画面では、インカメラでセルフタイマーを利用した際に、インカメラ付近にタイマー表示することで目線誘導するという機能も追加されている。「どこに目線を合わせればいいのか分からない」という自撮り時にありがちな悩みを解決してくれるはずだ。

カメラアプリ 標準カメラアプリでは、フリック操作で静止画・動画の切り替えができるようになった

 写真や画像を表示する標準ギャラリー(アルバム)アプリもリニューアルされ、リプレックスが開発したアルバムアプリ「Scene(シーン)」ベースとなった。

 従来のアルバムアプリでは基本的にフォルダ別表示がデフォルト設定だったが、新アプリではデイリー(撮影・保存日別)表示がデフォルト設定になり、ユーザーインタフェース(UI)の改善で写真・画像の整理の操作もしやすくなった。他のユーザーとの「共有アルバム」を作る機能も追加されている。

※アルバムアプリに関する記載を一部修正しました(10月27日19時)

SceneアプリSceneアプリ ギャラリー(アルバム)アプリは「Scene」ベースとなった

 さらに、ワンタッチで文字表示を拡大して読みやすいフォントに切り替える「はっきり文字」や、画面表示そのものを拡大する「いつでもズーム」を搭載することで、高年齢層のユーザーにも配慮している。

「はっきり文字」と「いつでもズーム」 「はっきり文字」と「いつでもズーム」

 特にプロセッサや画面解像度の面で「ハイスペック」ではなくなったarrows NX F-01J。思い返せば、F-04G(2015年夏モデル)からF-02H(2015年冬モデル)へのモデルチェンジにおいて、その伏線は敷かれていた。このモデルチェンジでは、プロセッサがスペックダウンした上、モバイル通信での対応周波数帯も一部削減されたからだ。

 従来のarrowsの便利機能は、プロセッサのスペックアップや技術革新に支えられて実現、あるいは改善を重ねてきた面もある。スマホのスペックアップや技術革新が一段落付いた結果、arrows(あるいは富士通コネクテッドテクノロジーズ)が目指す「フラグシップ」の姿を「ハイスペック」でなくとも実現できるようになった結果が、F-01Jということなのだろう。

 「ハイスペックなarrows」を期待していた人にとっては、F-01Jはやや「肩すかし」だろうが、ハイスペックでなくても「arrowsの理想」を実現できるという意味では、良い時代になったのかもしれない。

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