「安い」「速い」「真の大容量」――モバイルWi-Fiルーターの生き残る道5分で知る最近のモバイルデータ通信事情(1/2 ページ)

» 2016年11月01日 11時00分 公開
[島田純ITmedia]

 前回の連載「こんにちは『大容量プラン』さよなら『モバイルWi-Fiルータ』?」でも触れたように、各キャリアがより安価な大容量プランの提供を始めたことで、単純な「大容量なモバイルデータの通信手段」としてのモバイル無線LAN(Wi-Fi)ルーターの存在意義は徐々に小さくなっていくことが予想されます。

 それでも、モバイルルーターを使った方が大容量プランでスマートフォンやタブレットのテザリングよりも便利なケースは多々あります。そこで、今回は便利なモバイル無線LANルーターのメリットを生かす使い道を探ってみたいと思います。

大容量プランでもルーターは死なず? 大容量プランでもルーターは死なず?

メリットその1:モバイルルーターには「真の大容量プラン」がある

 前回も少しだけ触れましたが、UQ WiMAX(UQコミュニケーションズ)やY!mobile(ソフトバンクとウィルコム沖縄)では、モバイルルーターに対して月間の通信容量制限のないプランを用意しています。UQ WiMAXなら「UQ Flat ツープラス ギガ放題」(略して「ギガ放題」)、Y!mobileなら「Pocket WiFiプランL」がそれに当たります。これらのプランは各種割引を適用すると月額4380円(税別)で利用でき、使い方次第では月間100GBを超えるデータ通信を利用できます。日常的にデータ通信量が多い使い方をしても、これらのプランなら月末の通信容量不足に悩まされることはありません(ただし、後述の通り注意点もあります)。

 もともと、モバイルルーターはPCとつないで使うことを前提としてきました。そのこともあって、モバイルルーター用プランは通信量無制限、あるいは速度制限のあまり厳しくないものが中心でした。スマホ用の安価な大容量プランが開始された今、ギガ放題やPocket WiFiプランLは事実上の「真の大容量プラン」といえるでしょう。

 これらのプランを心強く感じるのは、特に国内出張・旅行中に大容量のデータ通信をしなくてはいけない時です。筆者も、国内出張で助けられたことが幾度となくあります。

WiMAX 2+対応のモバイルルーター 筆者のWiMAX 2+対応のモバイルルーター。国内出張時に非常に役立つ

 国内のホテルでも、宿泊者向けの無料無線LANサービスを提供することが増えてはいます。しかし、ホテルのそれは通信速度が安定しなかったり、そもそも客室まで電波が届かなかったりすることがあります。「確実につながるデータ通信の手段」として、モバイルデータ通信の手段(モバイルルーター)があると心強いです。

 ただし、難点がないわけではありません。まず、「WiMAX 2+」や「AXGP」といった月間容量制限のないプランが対応する通信規格は、地方の温泉旅館などでは圏外となってしまうことが多いのです……。

地方の温泉旅館では圏外に 地方の温泉旅館などでは圏外になることもある

 また、「月間容量制限なし」は確かに安心なのですが、「直近3日間の通信容量が3GBを超えた場合」に通信速度制限の対象になってしまうことにも注意が必要です。要するに、「超高速なモバイルデータ通信が、完全無制限で使い放題」とはなっていないのです。

 もっとも、現状では制限中もまずまずの速度(UQの場合は数Mbps程度)が出るようにはなっていますが……。

メリットその2:スマホに先駆けて高速な通信ができる

 スマホ・タブレットと比較すると、モバイルルーターは新技術の導入による通信速度の高速化、あるいは新しい通信周波数帯(Band)への対応をより早いタイミングで行う傾向にあります。要するに、スマホ単体、あるいはスマホのテザリング経由で通信するよりも、モバイルルーターを使った方がいち早く、より高速な通信ができる可能性があるのです。

 例えば、UQコミュニケーションズが先日発表した「WX03」では、「4×4 MIMO」と「キャリアアグリゲーション(CA)」の併用によって、下り最大440Mbps(理論値)での通信に対応しました。WX03は、上り通信でのCAにも対応し、64QAM変調と組み合わせることで上り最大30Mbps(理論値)で通信できます。記事執筆時点では、この速度はUQコミュニケーションズが回線を提供しているau(KDDI・沖縄セルラー電話)のどのスマホよりも高速です。

UQコミュニケーションズの「WX03」 UQコミュニケーションズの「WX03」は、4×4 MIMOとCAの合わせ技で下り最大440Mbpsに対応。WiMAX 2+の上り通信速度も、64QAMとCAの適用で30Mbpsに高速化

 ただし、モバイルルーターと各種機器を無線LANで接続する場合、公衆無線LANスポットが使う帯域と干渉して無線LAN側の実効速度が落ちてしまうことがあります。そうすると、いくらモバイル通信側が高速化してもそのメリットを生かしきれない、ということになります。“Wi-Fi密集地帯”での利用時には注意が必要です。

都市部での無線LANアクセスポイント乱立 都市部では、さまざまな無線LANアクセスポイント・ルーターが乱立している。結果、同じ帯域を使う無線LAN同士が干渉して通信品質が低下することもある
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年