ウイコウ・ジャパンは2月14日、SIMロックフリーのAndroidスマートフォン「Tommy(トミー)」を日本市場に投入することを発表した。
同社はフランスのマルセイユで創業したベンチャー企業「Wiko(ウイコウ)」の日本法人として2016年1月に設立された。約1年間の準備期間を経て日本デビューを果たすことになる。
ヨーロッパを中心に広い支持を集めているベンチャースマホメーカーは、どのような戦略で日本市場に挑むのだろうか。
Wikoは2011年に創業した。社名は英語の「we(私たち)」と「community(コミュニティ)」を掛け合わせた造語で、「コミュニティーを形成するためのツールを提供する」(ウイコウ・ジャパンの前田浩史社長)という思いが込められている。社名の「Wi」には、フランス語の「oui(英語の「yes」)」の意味も含んでいるという。
そんなWikoは2012年に初めての端末を世に送り出し、本格的に販路拡大を開始。2013年には世界6カ国へ進出し、地元のフランスで端末販売シェア2位を獲得した。2014年には同社初のLTE(4G)対応スマホを発売し、進出国は21を数えるまでになった。
アフリカ、中東、東南アジアと販路を拡大していく中で、Wikoの「34カ国目」として選ばれたのが日本だ。
2014年のマレーシア進出を皮切りに、Wikoはアジア市場へ進出した。今回の日本進出は、そこからさらに3年ほどの時間を要している。時間が掛かった理由は、日本が「非常に特殊なマーケット(市場)」(前田社長)で、「十分に考慮した上で」(同)展開の準備を行う必要があったからだ。
日本では、昨今SIMロックフリー端末市場は拡大傾向にあり、それと親和性の高いMVNOによる通信サービスの普及も進んでいる。また、2020年を目標に「5G(第5世代移動体通信)」の実用化に向けたさまざまな実証実験が進んでいる。
そういう意味では、Wikoにとって日本は単に端末を販売する舞台としてだけではなく、先進の通信インフラから得られるノウハウを学ぶ「ラーニングバリュー」のある場所でもある。「SIMロックフリー端末への追い風」に「次世代通信に向けたノウハウ蓄積の必要性」が相まって、このタイミングでの日本進出につながったようだ。
日本の携帯電話・スマートフォン市場は7〜9万円台のハイエンド端末が売れ筋である点でも特殊だ。その一方で、売れ行きを伸ばしているSIMロックフリー端末は、2〜3万円台で買えるミドルレンジモデルに人気が集中する傾向にある。
二極分化が一層進むと予想される端末市場において、ウイコウ・ジャパンは1万円台半ばで買えるエントリースマホであるTommyをまず投入する。LINEやSkypeといったコミュニケーションアプリやInstagramのようなエンターテインメントアプリを駆使する10〜20代の若者を主なターゲットに据え、「エンターテインメントガジェット」という位置付けで販売する。
たくさんのラインアップを擁するWikoのスマホの中でTommyが選ばれたのは、ヨーロッパのキャリアの声を反映して開発された機種であり、品質面にこだわる人の多い日本市場でも受け入れられると考えたからだという。また、ターゲットとする若者(子供)のおこづかいでも買える価格帯であることも決め手となったようだ。
今後、ウイコウ・ジャパンは2017年内に数機種のスマホを日本国内に投入するという。2月27日(現地時間)からスペインのバルセロナで開催される「Mobile World Congress 2017」において発表される新機種を含めて、日本市場に最適なものを吟味して投入するようだ。
販路については、当初は家電量販店(ヨドバシカメラ、ビックカメラグループなど)やWeb通販サイトを中心に販売するが、MVNO経由での販売にも注力するという。
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