ベンチャー企業として、MVNO市場に向けたfreetelブランドのSIMロックフリースマートフォンを開発、販売してきたプラスワン・マーケティング。同社はブランドを「FREETEL」に刷新し、「SIMフリーキャリア」にかじを切ることを発表した。合わせて、Windows 10 Mobile搭載予定の「KATANA 01」「KATANA 02」や、「日本のもの作りの粋を詰め込んで作った」(代表取締役社長 増田薫氏)というAndroid端末の「極(KIWAMI)」「雅(MIYABI)」も披露している。
“フルラインアップ戦略”を掲げる同社の端末は、どういったものなのか。また、キャリアとして本格的に事業を展開する意図はどこにあるのか。今回の連載では、FREETELの発表から見えてきた、同社の戦略を解説していきたい。
プラスワン・マーケティングが発表した機種は、全部で5機種。Androidは「極(KIWAMI)」と「雅(MIYABI)」、Windows PhoneはWindows 10 Mobileを搭載する予定の「KATANA 01」と「KATANA 02」だ。これらに加えて、OSにAndroidを採用した「Galaho(仮)」の発売も予定している。同社は、これまでローエンドからミッドレンジまでのAndroidスマートフォンを幅広く取り扱い、MVNO市場の拡大とともにラインアップを増やしてきたが、OSや端末の形状までバリエーションはさらに広がる。
極と雅は従来と同様のAndroidだが、極はその名のとおり「オクタコアの非常にハイスペックなモデル」(同)。チップセットのメーカー、型番やディスプレイの解像度など、詳細は一切明かされていないが、現状では6インチ、オクタコアCPUを搭載していることが分かる。対する雅は、1万9800円と低価格なミッドレンジモデルで、5インチのHD(720×1280ドット)ディスプレイを搭載する。こちらもチップセットの型番は不明だが、クアッドコアCPUを採用する予定だ。どちらもOSはAndroid 5.0。LTEはドコモの800MHz帯(Band 19)や、ソフトバンクの900MHz帯(Band 8)に対応しており、日本のMVNO市場を強く意識した端末となっている。
2つの機種に共通しているのは、「Made by JAPAN」(同)である点だ。誤解がないようにあえて述べておくと、どちらの機種も製造は中国で行っている。同社が「in」ではなく、あえて「by」を使っているのも、そのためだ。一方で、日本メーカーならではの“品質”にはこだわりを持っているといい、増田氏は次のように語る。
「一般的には『Made in Japan』という言葉があるが、これは場所しか示していない。そうではなく、日本のモノをしっかり作る、品質のいいものを作るという日本人の資質。これがあったからこそ、資源の乏しい国なのに、戦後ここまで復興することができた。そういった日本の心を込めたモノづくりをする。(製造は)今は一部だけが日本。ゆくゆくはこれを全部日本に持ってきたい。たとえば、極は裏ブタも日本の職人が1枚1枚作っている」
同社はこれまでも、日本メーカーとして最終的な品質を管理することを売りにしていたが、例に挙げられていた極では、さらに一歩踏み込んでいるようだ。極については、ハイエンドになるためもあって、パーツの多くが日本メーカー製であることも明かしている。
もう1つのラインアップが、Windows 10 Mobileを搭載して発売する、KATANAシリーズだ。KATANA 01は1万9800円(税別、以下同)で販売される、ローエンドな端末で、4.5型のフルワイドVGAディスプレイを搭載。ミッドレンジのKATANA 02は、価格が2万9800円で5型のHDディスプレイを搭載する。どちらもクアッドコアCPUを搭載しているが、プロセッサの型番などは明かされていない。
ただし、同社の増田氏はこれらのモデルを「Windows 10のマスターができたら、そこから最短で出す」と述べていることから、おそらく、現時点でWindows 10 Mobileへの対応がうたわれているSnapdragon 410やSnapdragon 200がプロセッサに使われると思われる。スペックや価格を考えると、KATANA 01がSnapdragon 200、KATANA 02がSnapdragon 410といったところだろう。
プラスワン・マーケティングがWindows 10 Mobile搭載端末を手掛けるのは、「法人に入っていくうえでもキーになる商品」だからだ。発表会ではダイワボウ情報システムとの提携も明かされており、Windows搭載スマートフォンへの引き合いの高さがうかがえる。ダイワボウでは、ソリューションとセットにしてWindows 10 Mobile端末を訴求していく方針だ。また、一般のコンシューマーにとっても、PCとの相性のよさや、目新しさという点では売りになる。日本市場では、まだマウスコンピューターの「MADOSMA」が発売されたばかりで、Windows 10対応スマートフォンはほかに発表されていない。その意味では、OSそのもので他社と差別化を図った製品ともいえるだろう。
これらの4製品に加え、「Coming soon」(取締役 大仲泰弘氏)という「Galaho」も用意する予定だ。製品名は仮称だが、これはいわゆるテンキーを搭載した折りたたみ型のスマートフォン。OSにはAndroidを採用する予定で、「うちのはGoogle Playが使えないといったことはない」(増田氏)とのことで、アプリにも対応する方針。
機能やスペックなどの詳細は伏せられたままだったが、Google Play搭載の必須要件にタッチパネルがあるため、テンキーに加えてタッチで操作できる製品になりそうだ。ドコモやKDDIから発売されているAndroid搭載の折りたたみケータイは、どちらかといえばフィーチャーフォンのOSを置き換えた商品。これに対し、FREETELのGalahoは、よりスマートフォンの色合いを濃くしたものになりそうだ。海外では、LGエレクトロニクスなどが折りたたみ型のAndroidスマートフォンを発売しており、イメージとしてはそちらに近い。
フルラインアップをそろえた新生FREETELだが、同時に、MVNO事業も強化を図る。プラスワン・マーケティングは、もともとMVNEを活用して「freetel mobile フリモバ」というサービスを展開していた。ほかのMVNOより割安感を出しており、あえて1Gバイト、2Gバイトのプランを残すなどの工夫もあった。
この料金プランを大きく変え、7月15日から新サービスの「FREETEL SIM」を開始する。データ通信の料金は100Mバイト、299円から。1Gバイト、3Gバイト、5Gバイト、8Gバイト、10Gバイトと段階的に料金が上がっていく仕組みで、最大で2470円となる。音声通話付きのプランは、基本使用料として700円がここに加わる。段階制の料金プランという点では、日本通信が始めた「おかわりSIM」に近い。あらかじめ通信量を選ぶのではなく、あとから最適な料金になるのでデータ量を追加で購入して割高になる心配はい。途中で高速通信をストップして、料金を抑えることも可能だ。
「日本のキャリアが素晴らしいのは、非常に高速なLTEを最速で持ってきたこと」と語る増田氏は、通信速度にもこだわりを見せる。回線を貸すドコモと完全に同じにはならないとしつつも、帯域を多く借り、なるべく通信品質を落とさないようにする方針だ。また、「(通信速度を)アプリごとに最適化する」(同氏)のも特徴。データ量の少ないSNSなどでは帯域を絞り、動画のような大容量サービスでは高速に通信させるといった制御を行うようだ。具体的には、「レイヤー7というアプリ単位で制御する機械と、ポリシーを制御する機械をクロスで提供して、このアプリは遅く、このアプリは速くするといったことができる」(担当者)という。
このようなサービスを実現するために、プラスワン・マーケティングはMVNEの活用をやめ、自社でドコモとの相互接続を行う。増田氏が「こうしたサービスはどんどん強化していきたい」と述べているように、相互接続を行ったことで料金プランや機能の強化を図る。プラスワン・マーケティングとしては、FREETELブランドで端末から回線までをワンストップで提供できるのがメリットだ。サポートの一元化もでき、通信料収入が入れば継続的なビジネスにもなる。メーカーがMVNOまでを手がける例はまだ少ないが、パナソニックやエレコムなどが、自社製品に組み込むことを狙い、同様の事業を立ち上げている。FREETELの戦略も、こうしたメーカーと同様、垂直統合的なサービス提供を志向するものといえるだろう。
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