さてここからが本題。今回の一番の目玉はイメージセンサーである。世界初の3層構造を実現したのだ。
従来の積層構造センサーは、イメージセンサーと信号処理回路を重ねたものだった。今回の三層構造は、イメージセンサーと信号処理回路の間に「DRAM(メモリ)」を入れたものである。
なぜそこにDRAMが必要だったのか。簡単に言えば「高速読み出し」のため。CMOSイメージセンサーは「順次読み出し」といって、光を捉えたら、1ラインずつデータを読み出す。だから一番上のラインと一番下のラインではタイムラグが生じる。
普段は気にならないけど、高速に移動するものを撮ったり、カメラを高速に動かしながら撮ったりすると、そのタイムラグでゆがんで写るのだ。
そうだな、新幹線から窓の外を撮る、あるいは高速に動いてるもの(電車や自動車)を真横から撮ると分かりやすい。こういうのをローリングシャッターゆがみ、などという。
動画撮影時もこれが気になる。このゆがみを減らすには、よりタイムラグを短くすればいい。そのとき、センサーと回路の間に挟まれたDRAMが活躍するのである。
順番に信号処理回路に流すより、素早く読み出して中間のDRAMにためる方が速いのだ。それで読み出し速度は5倍速くなったという。そして後からDRAMにあるデータを信号処理回路を通して画像処理エンジンに流してやればいい。
それによってゆがみを減らすことができる。具体的には、読み出しに40msかかっていたところを8msに減らしたことで、ゆがみが小さくなるのである。
3層構造の新型センサーの強みはそれ。これはすごくうれしい。動画を撮る人にもうれしい。
さらに、高速に読み込んでいったんDRAMに溜めることで、DRAMをバッファとして使った機能を実現できた。
1つはHDRの高速化。HDRは露出が異なる2枚の写真を連写してそれを合成することでダイナミックレンジが広い画像を作り出すのだが、連写が必要なため、高速に動く被写体だとズレが生じることがあった。
このイメージセンサーなら「読み出し速度が速い」=「超高速で連写可能」なので、よりリアルタイムに近いHDRが可能になったのだ。高野氏は「ほぼリアルタイムです」と言っていた。
2つ目はスーパースローモーション。720pサイズになるが、960fpsでの撮影を実現したのだ。
具体的には0.182秒分を6秒で再生する動画になる。なぜ0.182秒? 高野氏いわく、「実は、DRAMの容量なんです。720pでDRAMがいっぱいになるまで960fpsで撮るとちょうど0.182秒なんです」
なるほどそういうことだったのか。
0.182秒ってすごく短いようだが、960fpsで撮影するので、30fpsで再生すると6秒にもなる。いざ再生してみるとほどよい時間である。
具体的にはこんな感じ。機能の詳細はレビューで。
こういうのを見ちゃうと欲が出る。
「せっかくだから、フルHDでもスーパースローしたいですよね、DRAMの容量を増やせばできますよね」と気軽に口にしたら、高野氏に「これ以上DRAMの容量を増やすのは非常に困難なんです。今のままでフルHDでスーパースローをしようとすると非常に短時間しか撮れません」と言われてしまった。
でも何年かしたら実現してくれるのではないかと思っている。
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