一般層にも広がり約70万契約 好調「mineo」を支える“コミュニティー”MVNOに聞く(3/4 ページ)

» 2017年07月12日 15時27分 公開
[石野純也ITmedia]

昼に速度が出ないのは、単純にコストの問題

―― パケットの有効活用といえば、mineo渋谷では、コーヒーの割引にも使えますね。

上田氏 渋谷では、100MBで100円引きをやっています。あれも確かに価値交換の1つですが、渋谷の近くにいないとなかなか使えません。いろいろな形で考えたいと思っています。

mineo 1階がカフェのmineo渋谷

―― パケットがデータ通信以外に使えるとなると、通信する以上により大きなプランを契約する人が出てくるかもしれません。現状、プランの分布はいかがでしょうか。

上田氏 今も一番多いのは3GBプランです。ただ、以前は500MBや1GBプランも多かったのですが、だんだんと大容量にシフトしているということは感じています。5GBから6GBに料金を据え置いたまま容量を拡大しましたが、その6GBを選ぶ方も増えています。3GBの次に多いのが、6GBを選ぶ方で、直近の割合でいうと17%ぐらいになります。累計でいうと6GBはまだまだ少ないのですが、これは最近の流れですね。

―― 20GB、30GBプランも始めました。

上田氏 これは割合からすると、そんなに多くありません。1%もないですね。キャリア(MNO)がやっていて、われわれも大容量化の流れになるとは見ていました。ただ、1人で20GB使おうとすると、自分のスマホだけでは限界があります。テザリングして複数人で使ったり、家に光が来ていないのでスマホで賄ったりする人がある程度いて、それが今後増えていくことを見越して出しました。

―― 契約するプランが大きくなり、ユーザーの利用量が増えると、会社にとってはプラスかと思いますが、一方でネットワークへの負荷も上がります。速度についてはいかがでしょうか。

上田氏 ユーザーさんがよく使う平日の12時から13時は、どうしても遅くなってしまいます。最近では、夕方から夜も、それなりに混雑するようになってきました。こちらでも常にスピード測定はしていて、状況は定点観測していますが、希望してはお昼に1Mbps、夕方には3Mbpsは出したいという目標で回線増強しています。ただ、なかなかタイムリーに追い付くのも難しいのですが……。

 なぜ遅くなるのかというと、単純にコストだけの問題です。回線を増強すれば速くなることは確かですが、MVNOのコストの中で一番大きいのは、やはり接続料です。そのバランスをどう取っていくのかが事業の肝で、遅くなりすぎるとやめていかれてしまいますが、かといって昼間に10Mbps出そうとすると、どのくらいのコストになるのかは大体見えています。そのバランスをどう取っていくのかですね。

 各社のSIMも一緒に測定していますが、全体の傾向として、参入したてのところは、ある程度の帯域を最初に確保していて、ユーザーの数が後からついてきます。そのため、速度は高めのところからスタートしますが、一定程度のユーザー数になったときに、常に速度をキープするのは(キープしながら収益を出すのは)非常に難しいと感じています。

―― 昼1Mbps、夜3Mbpsという数値は、公にしているものなのでしょうか。

上田氏 スタッフブログの中で毎月速度測定の結果を出していますが、目標値は挙げていて、それを超えたのか、超えられなかったときはなぜ超えられなかったのかを説明するようにしています。

―― そこまでぶっちゃけるMVNOも、珍しいですね。

上田氏 できるだけ情報公開は、積極的にしていこうと思っています。最初のころから、回線増強日を出そうと思っていました。うちは、ドコモとauで月3回、増強していますが、遅いと思っても、明日増強することが分かっていれば、待ってみようとなります。また、どのくらいの増強なのか、小規模なのか、大盛りなのかが見えた方がいいということで、それもやっています。今からmineoに入りたいが、速度が心配という方も、ブログを読めば、あらかじめ状況を分かった上で入っていただくことが可能になります。

mineo ネットワークの増強予定日とその度合いもマイネ王で公開している

―― 特に増強の度合いについては、ある程度収益が見えてしまうところなので、情報公開を渋る会社も少なくありません。

上田氏 それを気にして言わない会社が多いことは分かっていますが、できるだけ正直に情報を出そうと心掛けています。

ソフトバンクのSIMは「高い」

―― 話は変わりますが、ショップ展開の方針について教えてください。

上田氏 もともと店舗は、あまりリテラシーが高くない方でも安心して契約ができるように広げていきました。渋谷については、ブランド発信の拠点にしたいという2つの目的もあります。

―― 目標数はありますか。例えば、Y!mobileは1000店舗ですが、そのくらいは難しいですか。

上田氏 そこまでいくとコストに跳ね返ってしまい、MVNOの料金体系ではやっていけません。今は即日渡しができる店舗が105店あり、直営店、専売店、家電量販店、サポート店など、いろいろなところと組みながら、できるだけ安くそういった環境ができるようなことを考えています。

 ただ、店舗はもうちょっと広げていくべきだとは思います。店舗でできることも広げたい。最近始めたのは初期設定のサポートで、電話帳移行などをいくばくかの料金をいただいてやることにしました。今後は、契約変更や端末修理をできるようにするなど、メニューを増やしていきたいですね。

―― マルチキャリア対応なのもケイ・オプティコムの強みですが、Aプラン、Dプランときて、Sプランはいかがでしょうか。

上田氏 高いんで……ね(笑)。接続料だけを見ても高いですし、市場の大きさも見なければいけません。最新のiPhoneは、SIMロックを解除すれば、AプランやDプランでも使えます。そうでないユーザーがどれだけいて、どれだけ来てもらえるのかは考えないといけないですね。ですので、会社として決定したことは、まだ何もありません。

―― その流れで、フルMVNOになるというお考えはありますか。

上田氏 今、勉強中ですね。IIJさんの45億円という数字を見ると、相当な覚悟がないとそこには行けません。それだけの投資をして、mineoとしてどういう市場を切り開いていけるのかは、ちゃんと見てからでないと判断ができません。それがIoTなのか、海外でそのまま使えるSIMなのかは分かりませんが、いろいろな広がりもあります。そこがはっきり見えればやるかもしれませんが、今は勉強をしているところです。

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