今日から始めるモバイル決済

複雑化している国内の「モバイル決済サービス」を総整理する:鈴木淳也のモバイル決済業界地図(2/3 ページ)

» 2017年12月12日 06時00分 公開

海外仕様とは異なる日本のApple PayとAndroid Pay

 モバイル端末を「財布(ウォレット)」と見立て、端末内に複数のカードや身分証、“鍵”情報を保存し、適時必要に応じて取り出す仕組みを「モバイルウォレット」と呼んでいる。モバイルウォレットの利点は大きく2つあり、1つは端末内に複数のカード情報を保存することでかさばらず、遠隔操作での削除といった形で管理が容易という点だ。

モバイル決済 Apple Pay対応のiPhoneでは、複数のクレジットカードを「Wallet」アプリで管理できる

 もう1つは、保存したカード情報を使って従来の物理的なカードではできない、より複雑で高度な仕組みが利用できる点にある。特に後者の代表例が「端末上で直接ショッピング」「インターネットバンキングの利用」といったもので、端末とカード情報が一体化しているからこそ実現可能な仕組みといえる。

 情報が集まることでセキュリティ面で不安を抱く人もいるかもしれないが、危険性があること自体は物理的なカードでも変わらず、適切な形で運用をする限りは高いセキュリティを維持できると筆者は考えている。

 このモバイルウォレットの安全性を高める仕組みの1つが「トークナイゼーション(トークン化)」だ。カード情報を素の状態で保存するのではなく、「トークン」という別の形態で端末内に保管する。万が一この情報が盗まれたとしても、トークンそのものを無効化してしまえば被害は最小限に押さえられるメリットがある。

 海外で提供されているApple PayやAndroid Payでは、対応するクレジットカードやデビットカード情報をサービスに入力することでトークンが発行され、これを「NFC」技術を使って店頭での対面決済に利用したり、あるいはアプリやWebブラウザ上でのネット決済に利用したりできる。前述のようにカード情報を直接先方にさらすわけではないため、カード情報を登録して決済する通常のインターネットショッピングよりも安全だといえる。

 Apple PayとAndroid Payのこの仕組みは海外でのもので、日本では若干仕様が異なっている。日本国内で発行されるクレジットカード等をApple Payに登録する際には、前述のトークン化された国際カードブランド(American ExpressやJCB、MasterCardなど)のカード情報のほか、発行するカード会社によって「iD」または「QUICPay」の決済番号が割り当てられ(「デバイスアカウント番号」という)、アプリまたはWebブラウザの決済では前者が、iDまたはQUICPayのFeliCa技術を使った店頭決済では後者が利用される。

 Apple Payではさらに、Suicaカードを登録して交通系ICサービスを利用することも可能だ。iPhone 8以降では海外で販売されたiPhoneでもSuicaカードの登録とオンラインチャージが可能で、外国人が日本で交通機関を利用したり買い物をしたりするのにiPhoneをそのまま活用できる。

モバイル決済 Apple PayではSuicaも利用できる

 このほか、2017年9月に配信がスタートしたiOS 11以降を適用したiPhoneでは、前者のカード番号を使って「ExpressPay」「J/Speedy」「PayPass」といった海外ではおなじみのNFCを使った対面決済手段が利用できる。残念ながら原稿執筆時点(2017年12月)ではVisaは日本国内のApple Payに対応しておらず、Visaのブランドロゴが印刷されたカードを同サービスに登録してもiDまたはQUICPayとしてしか利用できない。

 Android Payはさらに事情が複雑で、海外では「クレジットカードを登録して決済」するためのサービスだが、日本国内では現時点では「楽天Edyまたはnanacoで決済するためのサービス」あるいは「dカードとTポイントの2種類のポイントカードを登録するサービス」にとどまっている。

モバイル決済 日本の「Android Pay」でできることは限られる

 Googleに登録したクレジットカード情報で楽天Edyやnanacoへのオンラインチャージが可能というメリットがあるが、仕組み上は通常のおサイフケータイと大きな差はなく、アプリを別途ダウンロードして楽天Edyやnanacoを利用するのとは操作上の違いしかない。今後、海外仕様の「クレジットカードを登録して決済」という仕組みが導入されるとみられるが、まだ発展途上にあるといえる。

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