「有機ELスマホ増加」「画面さらに大型化」――iPhone Xが変えたスマホディスプレイ事情

» 2018年01月30日 06時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 Appleが「iPhone X」のディスプレイに有機ELを採用したことにより、スマホ向けディスプレイ市場に変化が起きている――。調査会社のIHS Markitは、1月24日に行った記者説明会で、2017年から18年にかけてのスマホ向けディスプレイ市場の動向を解説した。

iPhone X需要で有機EL出荷数増 サムスンは内需下げる

 スマホ向け有機ELの17年の出荷動向は、AppleがiPhone X向けに17年第3四半期から調達数を増やしたことで全体としては出荷数増となっている。一方で、有機ELの供給メーカートップのサムスンは、16年第4四半期から調達数を下げ続けている。

スマホ向け有機ELの17年の出荷動向

 これは、他の中華系メーカーの有機EL搭載端末が、3万〜4万円(日本円換算)といった低価格のレンジで競合してくることから、部材調達コストの兼ね合いで同価格帯のサムスン端末への有機EL採用を減らしたことが考えられるとIHS Markitのシニアディレクター早瀬宏は分析する。

 液晶パネルの出荷動向を見ると、サムスンが16年第3四半期ごろから液晶パネルの調達数を増やしていることが分かる。液晶パネルの調達数はHuaweiがAppleに次ぎ2番手となるが、17年第3四半期からはXiaomiがHuaweiに迫る勢いで調達数を増やしている。

スマホ向け液晶パネルの17年の出荷動向

ディスプレイの平均サイズはさらに大型化

 四半期ごとのサイズ別のディスプレイ出荷数量の比率を見ると、基本的には平均サイズは右肩上がりの傾向にある。16年第1四半期には平均サイズが約4.5型だったのに対し、18年第1四半期には約5.0型(予測値)まで上がる見通しだ。

ディスプレイの平均サイズはさらに大型化

 基本的には右肩上がりだが、17年は第4四半期以外で下げ調子となっている。これは「iPhone 8/8 Plus/X」の発売を他メーカーが待ったことによる新製品立ち上げの停滞だったという。グラフでは、8/8 Plus/X発表後の17年第4四半期から5.8〜6.0型のディスプレイ出荷比率が上がっており、iPhoneに合わせて大画面化が進んでいることが分かる(iPhone 8は4.7型、8 Plusは5.5型、Xは5.8型)。

iPhone Xが有機ELけん引 しかし陰りも

 このように、iPhone Xは2017年のスマホ向けディスプレイ市場で存在感を放っている。一方、この有機EL需要が続くかというと「雲行きが怪しい」と早瀬氏。

 部材の供給不足の懸念も解消し、潤沢な出荷体制が整ったiPhone Xだが、高価な端末価格に対して一般ユーザーの反応が鈍いと早瀬氏は指摘。従来型のiPhone 7や8に関心が戻る傾向が強く、有機EL需要の先が読めないという。

 また、iPhone Xや「Galaxy S8」などに採用されている狭額縁ディスプレイを実現するフレキシブル有機ELは、部材コストを「アグレッシブに」下げられないと、ミドルレンジのスマートフォンに販路を広げることは難しいだろうとも指摘する。

 中国の春節(2018年2月16日)のセールを越えて、iPhone Xがどれほどユーザーに受け入れられるかが有機ELの実需要を予測する上で重要な指標になりそうだ。

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