インタビュー
» 2018年05月30日 06時00分 公開

Y!mobileが「クラウドSIM」対応ルーターを採用した理由は? ソフトバンクとuCloudlinkに聞く (2/3)

[石野純也,ITmedia]

ニッチな市場を狙っている

Y!mobile uCloudlinkの林霖(Lin Lin)氏

―― 出会いは秋口とのことですが、期間としてはかなり短いですね。

寺尾氏 半年ちょっとですね。どうしようかな、面白いなとなって、実際に深センに行ったのはその月の末ぐらいだったので、本格的に動いてからは4カ月ちょっとですね。

林氏 中国の春節(旧正月にあたる大型連休)も挟んでいるので、実際にはもっと短いかもしれません。

寺尾氏 汗臭い人に無理をさせてしまいました(笑)。

―― 大手キャリアがこのようなサービスを提供するのは、世界的に見ても珍しいと思います。uCloudlinkのルーターが大手キャリアに採用されるのは初でしょうか。

郁氏 はい。正式に直接契約したのは、Y!mobileさんが初めてです。

―― 日本のキャリアは端末採用のハードルが高いと聞きますが、期間も含めて異例のことですね。

寺尾氏 ある意味ニッチ市場を狙っていて、動いてみないと分からないところがあるからです。いつも言っていることですが、われわれは常に動いていないと止まってしまう。市場はどんどん動いているので、新しいものを見つけたら、取りあえず世に問うてみる。それほど大きなリスクではないですし、ものも実際に出ていたので、まずはやってみました。この評価をしてから次のステップに行きたいと考えています。

―― 先ほど寺尾さんが海外でよくSSIDを見るというお話をされていましたが、海外ではどのような状況なのでしょうか。確かにSSIDを見る機会は多いと思っていました。

林氏 メインのマーケットはアジア、ヨーロッパ、アメリカで、あまりタッチしていないのはアフリカぐらいですね。もちろん、アジアが一番で、弊社も相当力を入れているところです。

―― 日本法人を作ったのは3月とうかがいましたが、今回の端末発売がきっかけでしょうか。

林氏 法人を作ったのは、今回、Y!mobileさんとパートナーシップを結べたからです。日本できちんと法人を作らないと、いいサービスを提供できないということで、日本法人を設立しています。

クラウドSIMの仕組み

Y!mobile 郁星星(Yu Xingxing)氏

―― 次に、クラウドSIMについて詳しく教えてください。これはどういう仕組みなのかを、改めて解説していただけないでしょうか。

郁氏 一言でいえば、物理SIMを挿入せずに通信ができる、バーチャルなSIMのシステムです。具体的にはサーバ側に、クラウドSIMの技術基盤になるプラットフォームが実装されています。そのサーバは主に香港に置かれています。端末側には「シードSIM」と呼ばれるSIMが内蔵されていて、端末の電源を入れると、シードSIMで位置情報を送り、サーバはその情報を受け取って物理SIMのプロファイルを端末側に返します。

―― ネットワークにいったんつながった後、情報を書き込むということですか。

寺尾氏 補足すると、シードSIMはローミングした状態で位置情報を送り、香港側から適切なSIMの情報を端末に書き込む形になります。そのため、シードSIMは世界中、どこでもつながることが前提に設計されています。クラウドSIM側には「SIMバンク」と呼ばれる装置があって、物理的なSIMカードが何十枚も刺さっています。この仕組みがあるため、容量が足りなくなったらSIMカードを挿すだけで、すぐに増設もできます。まずキャリアAにつないで、容量が足りなくなったら次にコストの安いBにつなぐということもできます。

―― SIMが何十枚も刺さっているのは壮観ですね。見てみたいです(笑)。世界各国のSIMがあると思いますが、それはどうやって手に入れているのでしょうか。現地キャリアと提携しているのか、プリペイドSIMを勝手に挿しているのか、どちらでしょうか。

林氏 両方のパターンがありますが、大体はキャリアと直接契約を結んでいます。プリペイドは容量が足りなくなったときの補充として使う形が多いですね。

郁氏 例えば中国でも、年に何度かデータ通信が使われるピークがあり、容量が足りなくなりそうになると、アラームが上ってきます。そのタイミングでプリペイドSIMに切り替えています。

―― GSMAで標準化されたeSIMとは違うものという理解でいいのでしょうか。

郁氏 まったく違う独自技術で、クラウドSIMには(サーバ側に)物理SIMが必要になります。

―― 個人的に気になるところですが、現地のSIMカードの情報が書き込まれるということだと、中国だとGoogleやFacebook、Twitterなどは使えなくなってしまうのでしょうか。

郁氏 基本的には、(現地SIMを買うのと)同じくできなくなります。この部分は、各国の法令に基づいてやるようにしています。

―― ちなみに、そのSIMバンクには、Y!mobileのSIMカードも挿さっているのでしょうか。

寺尾氏 挿していて、日本国外の方が日本に来るときに提供しています。これは、端末の取引がある前からやっていました。ただし、われわれは国内では物理SIM、海外ではクラウドSIMと切り替えるようにしています。

―― クラウドSIMにプロファイルを書き込めるのであれば、国内もクラウドSIMに一本化した方がシンプルではないでしょうか。

寺尾氏 そこは止めてもらっています。ドコモとつながったらマズイですし(笑)。日本で通信するのにわざわざ香港を経由するのもちょっとおかしいですし、問題は主にコストで、下世話な話だと、なぜ国内でサービスを提供するのにuCloudlinkさんにお金を払うのかという話にもなります。

【訂正:2018年5月31日16時46分 初出時に、林霖氏と郁星星氏の写真とキャプションが入れ替わっておりました。おわびして訂正致します。】

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