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» 2018年09月08日 11時45分 公開

石野純也のMobile Eye:ソフトバンクの「ギガモンスター+」はどれだけお得? 業界への影響は? (1/3)

ソフトバンクが新料金プラン「ギガモンスター+」を提供開始。月に50GBのデータ通信を利用でき、一部サービスの通信量がカウントされない。一方で「月月割」が付かない分離プランとなっている。新プランの狙いと業界に与えるインパクをと解説する。

[石野純也,ITmedia]

 ソフトバンクの新料金プランが、9月6日に提供開始した。容量別に複数のデータ定額を選択できたこれまでの形から、「段階制」と「大容量」の2つへとシンプルに分け、音声プランも従量制、準定額、定額と3種類を用意した。また、自前で設備を持つMNOが、特定のサービス、コンテンツの通信量をカウントしない、ゼロレーティングに踏み切ったのも大きなニュースといえる。【訂正あり】

 もう1つの大きな特徴は、新料金プランがいわゆる端末購入補助の付かない「分離プラン」であることだ。これまでの料金プランと同様、月月割を付けることもできるが、そのぶん基本使用料が上ってしまうため、基本的には分離プランを選んだ方がお得になる格好だ。抜本的に料金を見直したソフトバンクだが、そこには一体どのような狙いがあるのか。新料金プランの中身と、同社の狙いを読み解いていきたい。

ウルトラギガモンスター+ 9月6日に、ソフトバンクの新料金プランがスタートした。当初は新規契約や機種変更に限定され、既存のユーザーの純粋なプラン変更は11月以降に開始される

「ウルトラギガモンスター+」と「ミニモンスター」の2本立てに

 新料金プランの目玉は、月に50GBのデータ容量を利用できる「ウルトラギガモンスター」を改定した、「ウルトラギガモンスター+」だ。同プランは使える容量は据え置かれている一方で、YouTube、TVer、AbemaTV、GYAO!、Hulu、LINE、Facebook、Instagramと8つのサービスの通信が“無制限”になる。SNSに関しては50GBの中で見れば微々たる容量かもしれないが、データ量が大きくなりがちな動画まで対象に含まれるインパクトは大きい。 

【訂正:2018年9月10日11時18分 初出時に、「ウルトラギガモンスター+」のデータ消費なしの対象サービスに「Twitter」を記していましたが、誤りでした。また、「Hulu」が抜けていましたので追加しました。おわびして訂正致します 】

ウルトラギガモンスター+ 当初は8つのサービスがゼロレーティングの対象になる

 ソフトバンクは前進となるウルトラギガモンスターを「ほぼ使い放題」とうたっていたが、ウルトラギガモンスター+では、上記サービスに限り、“ほぼ”がいらない使い放題になる。こうしたサービスを全面に打ち出したのは、「より自分ごと化できるのではないか」(モバイル事業推進本部 事業企画統括部 統括部長 郷司雅通氏)という狙いがあったからだ。確かに、YouTubeなどのサービスを使い、毎月容量に悩まされているユーザーにとって、それらが使い放題になるというメッセージは強く響きそうだ。

ウルトラギガモンスター+ ユーザーが“自分ごと化”して捉えられるようすることが狙いだと語る、ソフトバンクの郷司氏

 同時に「料金プランが分かりにくいというお声は多かった」(郷司氏)という声を受け、料金体系そのものを見直している。もともとは音声プランに容量別のデータ定額を選ぶ形だったが、新料金プランでは、まずウルトラギガモンスター+とミニモンスターのどちらかを選び、音声を従量制にするか、準定額にするか、定額にするかを決める。毎月使用するデータ量が多ければ前者に、そうでない場合は後者にすればよく、あとは通話をどうするのかを選択すればいい。

ウルトラギガモンスター+ 料金は大枠で2つになり、シンプルになった。通話定額、通話準定額はオプションとして付けられる

 料金プラン発表直前に、菅義偉官房長官から「携帯電話料金は4値下げできる余地がある」との発言が飛び出し、業界を揺るがしたが、期せずして新料金プランは「端末代を除いた状態の通信費だけで見れば、3割ぐらいは安くなっている」(郷司氏)という。実際、ウルトラギガモンスターの料金は、音声通話を準定額にすると9000円(税別、以下同)。これに対し、ウルトラギガモンスター+では、音声通話を従量制にすれば7480円に収まる。

ウルトラギガモンスター+ ウルトラギガモンスター+の料金は7480円。ここにさまざまな割引がつく形になる

 これだけだと、およそ2割程度の値下げだが、端末を購入した際に1年間限定で付く1000円の割引や、固定回線などのセット割である「おうち割 光セット」、家族で加入すると受けられる「みんな家族割+」まで考慮に入れると、3割からそれ以上の値下げになる。一方で、郷司氏が「端末代を除いた状態」と断っていたように、この料金差にはカラクリもある。分離プランがその答えだ。

「端末購入補助なし」と「通信料値下げ」を実現した分離プラン

 分離プランとは、端末の代金と通信料がきっちり分かれたものを指す。ソフトバンク以外では、ドコモが「docomo with」で部分的な分離プランを導入済み。KDDIの「auピタットプラン」「auフラットプラン」は毎月割がつかない分離プランだ。両プランとも、もともとの通信料の安さが受け、利用者が急増している。docomo withは9月に300万ユーザーを突破。分離プランに大きくかじを切ったauはよりユーザー数が多く、7月時点で800万契約を超えている。

ウルトラギガモンスター+ 競合他社では、分離プランの利用者が急増している。写真は8月1日に開催されたKDDIの決算会見でのもの

 ソフトバンクも、新たに導入したミニモンスターの前身となる「おてがるプラン」で、docomo withのような端末限定の分離プランを導入していたが、ウルトラギガモンスター+とミニモンスターでは、これを全機種に拡大した格好になる。月月割を付け、端末の“実質価格”を下げる手法はソフトバンクが率先して導入してきた経緯があるが、「どちらかというと、分かりづらいという声もいただいていた」(郷司氏)という。「シンプル化をする中では、通信と端末を独立させるというやり方もあるのでは」(同)と考えたのが導入の理由だ。

 一方で、分離プランは、見かけ上だが端末価格が上ってしまうため、販売不振を招きかねない劇薬でもある。これに対しKDDIは、割賦の期間を2年から4年に延ばし、購入から2年後に端末の下取りを条件に残債を免除する「アップグレードプログラムEX」を導入し、ユーザーが機種変更しやすい環境を作った。公正取引委員会からの指摘もあり、利用時に同プログラムへの再加入が必須となる点は撤廃される見通しだが、ハイエンドモデルを購入する多くのユーザーがこれを利用しているという。

 端末代が上ることに対する手当の仕方は、ソフトバンクも同じだ。同社は2017年から4年割賦の「半額サポート」を導入しているが、新料金プランでもこれを継続させる。「半額サポートはもともとあったものだが、これまでは実質負担額を半分にしていた。これからは絶対額を半分にするので、ユーザーのメリットは大きくなる」(郷司氏)といった違いもある。

ウルトラギガモンスター+ 「半額サポート」を提供することで、端末代の負担感を軽減していく

 一見すると、分離プランはこれまでの端末購入補助を通信料の値下げに当てただけにも思えるが、長く同じ端末を使えば使うほど、ユーザーにとってメリットは大きくなる。「月月割は2年間、4年間限定という形だったが、(安いままの価格が永続するので)長く使っていただくと分離プランの方がお得になる」(郷司氏)というわけだ。

 ただ、やはり端末購入補助が付いていたときに比べると、ユーザーは端末価格に対してシビアな目で見るようになる。もともと、4万円以下のミドルレンジモデルに絞って分離プランを展開していたドコモはもちろん、auでもシャープの「AQUOS sense」や、Huaweiの「P20 lite」が売れ筋の上位に顔を出すようになった。4年割賦を敬遠するユーザーがこうした端末を支持することで、端末のトレンドは変わっていく可能性がありそうだ。

 ちなみに、ソフトバンクの新料金プランでは、従来通り月月割のある形を選択することもできる。ただしこの場合は2年契約を選択できず、基本使用料が3900円となり、2年契約ありのプランより基本料金が2400円高くなってしまう。最新のiPhoneであれば、この差額以上の月月割を受けられるが、端末によっては月月割が2400円を下回ることもあり、一概にどちらがお得とは言いづらい。長期利用時に差が出るうえに、ソフトバンク自身も分離プランの金額を押しているため、ユーザーの多くが新料金プランに移行することになるだろう。

ウルトラギガモンスター+ 月額3900円の2年契約なしプランなら月月割を受けることもできるが、プレスリリースでも注釈扱いで、あくまで例外的なケースと見てよさそうだ
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