さて、カメラの解説記事で何気なく使っている「27mm」とか「125mm」って数字。実は本来注釈が必要な数字だったりする。
これらの数字は「焦点距離」というもので、イメージセンサーとレンズの光学的な焦点の距離を示す。この距離は短いほど写る範囲が広くなり、長いほど狭くなる。
そして写る範囲を「画角」と呼ぶ。画角は広いと広い範囲が写り(つまり広角になる)、狭いと狭い範囲しか写らない(つまり望遠になる)というわけだ。
でも、画角と焦点距離の関係は固定されていない。イメージセンサーのサイズが違えば、同じ画角でも焦点距離が違うのだ。ややこしくて申し訳ない。
じゃあ、なぜ焦点距離なんてややこしい値を使うのか。実はこれ、歴史的な慣習である。
デジタルカメラが登場したとき、イメージセンサーサイズが機種によって異なっていた。そこで、どのくらいの範囲が写るかをフィルムカメラの時代に最もポピュラーだった「35mm判」(今だと「フルサイズ」とも言う)に換算して表記した。
そこから、「35mm判に換算すると焦点距離○○mmのレンズに相当する画角になりますよ」っていう意味で「35mm判換算で○○mm相当」って言い方をするようになったのだ。
HuaweiのP30もOPPOのズームスマホも、一番広角のカメラは「16mm」となっている。これは「35mmフィルムでいう焦点距離16mm相当」の画角ですよという意味。だから物理的にそういう長さなわけじゃない。
まあおおざっぱに、16mmは「超広角」、メインカメラでよく使われる27mmとか28mmというのは「広角」、50mm前後が「標準」で、それより長いのは「望遠」、と思ってもらって良い。
「16mm」とか「27mm」とかいうのは、あくまでも35mmフィルム換算での焦点距離。実際の焦点距離は数mmである。
スマホカメラにおいてより大事なのは、どのくらいの範囲が写るかを示す「画角」。そんなこともあって、ややこしいことに、最近は写る範囲を「焦点距離」ではなく「画角」で示すスマホも出てきた。
例えばサムスン電子のGalaxyシリーズ。「Galaxy S9/S9+」のカメラスペックを見ると、焦点距離ではなく画角で表記されている。
スペック上で「視野角」ってなっている所が画角に相当する。英語の「Viewing angle」には「画角」「視野角」って意味があって、後者を取ったと思うのだけれど、できれば日本における用語を重視して前者で訳してほしかった。
Googleの「Pixel 3/3 XL」も、画角で写る範囲を表記している。「視野:DFoV:76°」と書かれている部分がそれ。DFoVは「Display Field of View」の略で直訳すると「表示可能な視野」だけれど、やはりこれも日本語の用語では「画角」となる。
Galaxy S9+の話に戻る。こいつの「画角」は広角が約77度、望遠が約45度と書かれている。これを35mmフィルム換算の焦点距離にすると、それぞれ約27mmと約52mmになる。
つまり、Galaxy S9+の広角カメラとP30 Proの広角カメラの画角はほぼ同じってことだ。
焦点距離より画角で表す方がより直接的ではある(分かりやすい)一方、焦点距離で表す習慣のあるデジカメとの比較はしづらくなる。
ややこしいので、どっちかに統一してほしいところなんだけど……。
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