携帯電話のデータ(パケット)通信のうち、特定のアプリやサービスに関するものの課金を免除(無料)とする「ゼロレーティング」サービス。日本でもこのサービスに対応するプランやオプションを提供する通信事業者が増えている。
しかし、日本ではゼロレーティングについて法令上の整理がなされていない。そこで総務省は「ネットワーク中立性に関する研究会」において議論を実施。ゼロレーティングに関するルールを検討すべく同研究会傘下に「ゼロレーティングサービスに関するルール検討ワーキンググループ」を設置した。
ゼロレーティングサービスのメリットと課題はどこにあるのか。そしてその法令上のルールはどのような方向性となるのか。分かりやすく解説する。
(特に断りのない限り、この記事では大手キャリア(MNO)とMVNOをまとめて「キャリア」と呼ぶ)
先述の通り、ゼロレーティングサービスは特定のアプリやサービスに関するデータ通信に課金をしないことが特徴だ。
日本では2015年、NTTコミュニケーションズがMVNOサービス「OCN モバイル ONE」においてゼロレーティングサービスを導入。この時は自社で提供する一部のサービスが対象だったが、2018年4月から一部の音楽ストリーミングサービスもゼロレーティングに加えるオプションサービスを試験提供。8月からは事前申し込みの必要な無償オプションとして本サービスに格上げされた。
現在では、他の一部MVNOでもSNSや音楽・動画ストリーミングサービスをゼロレーティングとするプランやオプションを提供している。さらに、MNOでも、2018年9月にソフトバンク、2019年6月にau(KDDIと沖縄セルラー電話)がゼロレーティング対応プランの提供を開始した。
ある意味で、ゼロレーティングサービスがキャリアの“差別化要素”の1つとなっているのだ。
スマホのスペック向上と通信ネットワークの高度化、音楽・動画ストリーミングサービスの発達に伴い、データの総通信量(トラフィック)は「幾何級数的に増加」(総務省資料:PDF形式)を遂げている。特にモバイル通信は、固定通信よりも増加ペースが速くなっている。
当然、トラフィックが増えているということはユーザー1人当たりのデータ通信量も増えている。1カ月単位で割り当てられた容量を使い切る、いわゆる「パケ死」に直面するユーザーも少なくない。
パケ死を避けるには、より上位のデータ容量を持つプランの変更(アップセル)も有効だが、上限があることには変わりない。データ通信を頻繁に行うアプリやサービスが明確なら、当該アプリ・サービスを対象に含むゼロレーティングサービスを契約した方が、出費をより抑制できる可能性もある。
個々の事情次第な面もあるが、ゼロレーティングサービスはユーザーにもメリットがあるのだ。
しかし、ゼロレーティングサービスには課題もある。
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