世界を変える5G

ドコモのプレサービスから見える、5Gへの期待と不安石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2019年09月22日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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求められる5Gの必然性、端末の普及にも課題

 5Gプレサービスの開始に合わせ、バラ色の未来が描かれた格好だが、現実を見ると不安要素も少なくない。一例がエリアだ。プレサービス開始時点で5Gが利用できるエリアは、“スポット”といえるほど限定的になる。9月20日の時点では、約40カ所で5Gの電波を飛ばしてエリア化しているというが、残念ながらエリア化の予定があるドコモショップも、9月20日時点では5Gの電波を出せていない。端末も配備されていないそうで、一般のユーザーが気軽に5Gの実力を試せるようになるには、もう少し時間がかかる。

 打ち出していたユースケースを実現するための手段として、本当に5Gが必須になるのかも、まだ検証の余地がありそうだ。実際、基地局の数もまだ限定的なため、プレサービスの一環であるラグビーワールドカップのパブリックビューイングでは、5Gだけでなく、光回線やWi-Fiも活用されていた。むしろ、5Gに接続していた端末の方が数は少なく、厳しい見方をすると、「5Gを使うために5Gを使った」印象も受けた。パブリックビューイングが行われたのが屋内ホールということもあり、あえて5Gを使う必然性は低い。

ドコモ5G
ドコモ5G デュアルスクリーンケースを装着したV50 ThinQ 5Gは、ラグビーワールドカップのパブリックビューイングで活用されたが、5Gに接続した端末は少なく、Wi-Fi接続が中心だった
ドコモ5G パブリックビューイングのメインディスプレイも、5Gと同時に光回線を活用していた

 5G開始当初は4Gで制御し、データだけを5Gで流す「NSA(ノンスタンドアロン)」方式になるため、実態としても、今の4Gが大きく変わるわけではない。さまざまなサービスを総花的に見せているのは、「5Gならではのキラーコンテンツが何なのか、絶対にこれだというものに絞るのは難しい」(吉澤氏)という状況の裏返しというわけだ。これを検証するのも、プレサービスの目的の1つといえる。

 端末の普及が順調に進むかどうかも、未知数だ。10月1日からは電気通信事業法が改正され、端末への割引が最大2万円に規制される。Qualcommによると、2020年には5Gモデムを統合したSnapdragon 6シリーズが登場し、これを搭載したミドルレンジのスマートフォンも発売される予定だが、まだハイエンドモデルが中心なことに変わりはない。端末の価格は、否が応でも高くなる。

ドコモ5G 5GはSnapdragon 6シリーズにも拡大する予定だが、まだハイエンドモデルが中心で、端末価格はどうしても高くなりがち

 吉澤氏も、「お客さまには端末をできるだけ手軽に手に取っていただき、新しい体験をしていただきたい」とする一方で、「5Gの機能を付加すると、やはり少し高くなる。今のルールのままだとなかなか普及はしない」と、懸念を示した。「普及に対しては、国にも働きかけをしていきたい」というものの、5Gの開始まで残された時間は少ない。普及が遅れれば、総務省の政策に対する批判もさらに高まるかもしれない。

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