ハード、ソフト、AIの三位一体で攻める「Pixel 4」 “我が道を行く”ゆえの課題も石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2019年10月19日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 Googleは10月15日、同社製のスマートフォン「Pixel 4」「Pixel 4 XL」を発表した。16日には日本でも発表会を開催。2モデルとも、10月24日に販売が開始されることが明らかになった。2018年はドコモとソフトバンクの2社が取り扱っていたが、Pixel 4、4 XLはソフトバンクがキャリアとして独占的に販売する。ドコモとKDDIは、導入を見送ったようだ。

Pixel 4 Googleの発表した「Pixel 4」(左)と「Pixel 4 XL」(右)

「ハードウェア」「ソフトウェア」「AI」の3つを融合させるPixelシリーズ

 検索を皮切りに、動画共有サービスのYouTubeや、スマートフォン向けOSのAndroidなど、各種ソフトウェアを提供してきたGoogle。そんなソフトウェアやクラウドサービスを主戦場にしてきた同社が送り出すフラグシップスマートフォンが、「Pixel」シリーズだ。Pixel 4、4 XLはその最新モデル。ハードウェアとしては、デュアルカメラ化したことや、電波を使ってジェスチャーを検知する「モーションセンス」に対応したことが、大きな特徴となる。

Pixel 4 シングルカメラからデュアルカメラになったことが、前モデルとの大きな違い
Pixel 4 ジェスチャーを検知する「モーションセンス」にも対応。ただし日本では、法令の関係で2020年春までお預けになる

 機械学習を処理するためのチップセットも刷新し、「Pixel 3」や「Pixel 3 XL」に搭載されていた「Pixel Visual Core」は、「Pixel Neural Core」へと名前を変えている。メインのチップセットはQualcomm製のSnapdragon 855だが、機械学習の処理に特化させたチップを別に搭載し、カメラ撮影時の処理や音声認識など、端末上で行う動作の高速化を図っている。

 ソフトウェアやクラウドサービスを主力にしていたGoogleが、あえてスマートフォンを開発、販売する狙いはここにある。日本でのイベントに登壇したGoogleのハードウェア事業 パートナーシップビジネス統括の織井賢氏は、「ハードウェア、ソフトウェア、そしてそれをAIが包み込むことで、今までにない経験をしていただける」と語る。

Pixel 4 ハードウェア、ソフトウェア、AIが三位一体で提供し、新しい体験を作り出すのが、Googleの狙いだ

 Googleのサービスは、スマートフォンがあれば利用することはできる。Androidである必要すらなく、Googleは競合ともいえるiPhoneにもアプリは提供している。一方で、Googleが注力するAIの実力を最大限引き出そうと思うと、どうしてもハードウェアという“入れ物”が必要になってくる。Pixel 4、4 XLに搭載されたカメラは、その代表例だ。いくらAIが優れているとは言っても、当然ながら光を受け、データに変換するレンズやセンサーがなければ、それを形にできない。

 他社のスマートフォンに提供するにしても、スペックは機種によってまちまちだ。例えば、Pixel 4、4 XLには、8倍まで被写体に寄れる「超解像ズーム」が搭載されているが、これを実現するには、新たに搭載された望遠カメラが不可欠だ。一方で、望遠カメラはスペック上、35mm判換算で44mmと、望遠と呼べるほどの画角ではなく、機械学習なしにはここまで鮮明な映像を作り出すことができない。ハードウェアとソフトウェア、さらにAIが協調することで、初めて実現できた機能というわけだ。

Pixel 4 レンズ以上のズームができる超解像ズームは、Pixelの特徴の1つ
Pixel 4 暗所でもノイズが非常に少なく、ディテールまでクッキリしている夜景モードは、Pixelの代名詞ともいえる機能だ

 残念ながら日本語には対応しておらず、現在、「提供できるように取り組んでいる」(Google広報部)段階だが、ボイスレコーダーの自動文字起こし機能も、カメラと同様、ハードウェアとソフトウェア、AIの3つの連携で生み出された機能といえる。文字起こしが可能なボイスレコーダーアプリは他にも存在するが、Pixel 4、4 XLのそれは、端末上で処理が完結するのが大きく異なるポイント。容量の大きな音声データをクラウドにアップロードする必要がないため、データ通信の速度や容量を気にせず使えるのは、大きなメリットといえる。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月06日 更新
  1. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  2. NHK受信料の“督促強化”に不満や疑問の声 「訪問時のマナーは担当者に指導」と広報 (2025年12月05日)
  3. 「スマホ新法」施行前にKDDIが“重要案内” 「Webブラウザ」と「検索」選択の具体手順を公開 (2025年12月04日)
  4. 三つ折りスマホ「Galaxy Z TriFold」の実機を触ってみた 開けば10型タブレット、価格は約38万円 (2025年12月04日)
  5. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  6. 「楽天ポイント」と「楽天キャッシュ」は何が違う? 使い分けのポイントを解説 (2025年12月03日)
  7. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  8. ドコモが「dアカウント」のパスワードレス認証を「パスキー」に統一 2026年5月めどに (2025年12月05日)
  9. NHK ONE、簡単には「閉じられないメッセージ」表示へ 目的は“NHK受信料”の徴収 なぜ強引な仕様に? (2025年11月12日)
  10. 鉛筆デザインのiPad用スタイラスペン「Nelna Pencil」発売 物理ボタンに9機能を設定可能 (2025年12月03日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー