ハード、ソフト、AIの三位一体で攻める「Pixel 4」 “我が道を行く”ゆえの課題も石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2019年10月19日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

ハードウェアメーカーが原点ではないゆえの課題も

 GAFAの1社であるGoogleが開発したスマートフォンであるだけに、Pixel 4、4 XLはどうしても、もう1社のAppleが開発したiPhoneと対比されがちだ。ただ、ここまで見てきたように、その開発思想や狙いは、ハードウェアメーカーが原点であるAppleとは大きく異なる。むしろアプローチは真逆で、ソフトウェアやAIから逆算して設計されたハードウェアにも見える。当然ながら、ビジネスの規模感も文字通り桁が違うため、直接的な比較はあまり適切ではないだろう。ただ、カメラに注力しているところや、端末の2サイズ展開、価格設定などに関しては、Appleを強く意識していることもうかがえる。

Pixel 4 2サイズ展開で、それぞれの価格設定はiPhoneを強く意識していることがうかがえる

 それゆえに、発売時点で非対応の機能が多いのは、残念なところだ。後からアップデートし、完成度を高めていくという発想は、ソフトウェアを主軸にしたGoogleらしい発想だが、あまりにそれが多いと、「対応してから買えばいい」となってしまいかねず、スタートダッシュに悪影響を与えそうだ。電波法の規制が絡むモーションセンスは仕方がないとしても、ハードウェアとソフトウェア、AIの三位一体で力を発揮する端末であるだけに、せめてボイスレコーダーの文字起こしは、英語以外の言語でも発売時に対応していてほしかった。

 ハードウェアメーカーとは真逆ゆえにPixel 4、4 XLには斬新さもある一方で、同時にそこが課題として浮かび上がってくる。ハードウェアは、確かに上質な仕上がりの一方で、分かりやすい高級感がない。Appleであればステンレススチールをフレームに採用して光沢感を出したり、すりガラスを使って金属のような表情を出したりと、一目で分かる“価格相応感”がある。対するPixel 4、4 XLは、シンプルゆえにじっくり見ないと質感が伝わりづらいと感じた。他のAndroidスマートフォンと比較しても、これは同じだ。

Pixel 4 上質な仕上げであることは確かだが、一目で分かる高級感はなく、玄人好みといえそうだ

 ハードウェア起点の発想をしていないためか、機能面で、スマートフォンのトレンドを追っていないところもある。iPhoneに搭載され、一気に火が付いた超広角カメラはその1つだが、指紋センサーがないのも、高価格帯のAndroidでは珍しい。よく言えば我が道を行くGoogleらしさではあるものの、近い価格帯のハイエンドモデル同士で比較したとき、どうしても見た目や機能以上の値段に見えてしまう。

 販路の開拓も課題といえる。冒頭で述べたように、Pixel 4、4 XLは、Googleストアとソフトバンクのみの扱いになり、ドコモは発売を見送ってしまった。Pixel 3、3 XL、3aの販売実績がいまひとつだったことを考えると、5Gの開始を控えた今、積極的に導入するのは難しかったのだろう。現時点でリアル店舗での販売はソフトバンクのみで、MVNOの取り扱いもない。

Pixel 4 ドコモが抜け、キャリアの取り扱いはソフトバンクだけになってしまった

 海外に目を移すと、例えば米国では主要キャリア全てに販路を拡大するなど、徐々に成長はしているものの、その他の国でどう拡大していくかの戦略があまり見えてこない。端的に言えば、メーカーとしての営業力が弱い印象を受ける。一方で、カメラを筆頭に、ソフトウェアやAIに強みを持つGoogleだからこそ実現できた機能は魅力的で、インパクトもある。こうした特徴を、ユーザーに対して丁寧に伝えていけるかが、成否を分ける鍵になりそうだ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. 楽天モバイルのスマホが乗っ取られる事案 同社が回線停止や楽天ID/パスワード変更などを呼びかけ (2024年04月23日)
  2. シャープ、5月8日にスマートフォンAQUOSの新製品を発表 (2024年04月24日)
  3. スマホを携帯キャリアで買うのは損? 本体のみをお得に買う方法を解説 (2024年04月24日)
  4. Vポイントの疑問に回答 Tポイントが使えなくなる? ID連携をしないとどうなる? (2024年04月23日)
  5. 通信品質で楽天モバイルの評価が急上昇 Opensignalのネットワーク体感調査で最多タイの1位 (2024年04月25日)
  6. 貼り付ければOK、配線不要の小型ドライブレコーダー発売 スマート感知センサーで自動録画 (2024年04月25日)
  7. 中古スマホが突然使えなくなる事象を解消できる? 総務省が「ネットワーク利用制限」を原則禁止する方向で調整 (2024年04月25日)
  8. ドコモ、「Xperia 10 V」を5万8850円に値下げ 「iPhone 15(128GB)」の4.4万円割引が復活 (2024年04月25日)
  9. スマートグラス「Rokid Max 2」発表 補正レンズなくても視度調節可能 タッチ操作のリモコン「Rokid Station 2」も (2024年04月25日)
  10. 「iPhone 15」シリーズの価格まとめ【2024年4月最新版】 ソフトバンクのiPhone 15(128GB)が“実質12円”、一括は楽天モバイルが最安 (2024年04月05日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年