意外なのが、「セキュリティ/不正利用防止対策」が14%と、一番ウェイトが低い結果になったこと。梅澤氏によると「セキュリティや不正利用を気にしている人は、まだこのマーケットに入ってきていない」とのこと。顧客満足度調査にサービスを利用していない人の声は反映されない。コード決済業界は、セキュリティよりもキャンペーン/ポイントサービスを優先する人がアーリームーバーとして動いている状況だ。
「コード決済を使っているユーザーはまだまだ少なく、別の調査によると、1カ月以内に利用したキャッシュレスの方法でコードは24%にすぎません。ただ、今後利用してみたいと思っているキャッシュレス決済をたずねると、コード決済が40%もあるので、期待値が非常に高い。ポテンシャルは最もある業界です」
今回の調査ではウェイトが低かったセキュリティだが、コード決済を「使わない」理由として挙げられるのが不正利用される不安だ。「ここの満足度をいかに上げていくかが本質的に問われていく」とセキュリティの重要性を梅澤氏は指摘している。
今はキャンペーンが盛んに行われており、キャッシュレス・ポイント還元事業でポイントバックがあるなど注目度も高いが、キャンペーンはそのうち減り、キャッシュレス還元事業も2020年6月までとされている。コード決済のブームは続くだろうか。
梅澤氏は現在を「キャンペーンやポイントによって初期利用を促している第1フェーズ」と見る。第2フェーズになったときに「利便性を評価して使ってもらえるかがポイント」で、各事業者がこれから考えるべきことだと指摘する。
それには「普段使いの習慣化」がどれだけできるかがポイントだ。各事業者もそれは考えており「中長期的に、その先の事業を踏まえて考えている」と梅澤氏は述べている。
では、その先の事業とは何か? 今回の調査を通して梅澤氏が予想したことの1つに「業界横断的な共通ポイント」がある。「ポイント経済圏の中で顧客データを取得し、将来的なマーケティング戦略を考えていると思います。それがどこまで実現できるかが重要でしょう」と同氏。
メルカリのメルペイ、ドコモのd払いのように、自社のメインのサービスの利便性を高める側面もある。
ただ、ソフトバンクグループとはいえ、PayPayのように決済専業でやっている事業者にとって、それは難しいように思える。梅澤氏は「送金」がキーになるかもしれないと見ている。今回の調査では、当時サービスを提供していなかった事業者もあり、送金についての質問項目は入れなかった。
「日本銀行が得ている『通貨発行益』を各プレーヤーも狙っていると思います。今はマイナス金利なので目立ちませんが、普通の金利が出る状態になると通貨発行益が非常に大きくなる可能性があります」
海外では、中央銀行がデジタル決済に進出し、電子通貨を発行するという議論があるという。決済事業者と中央銀行がクロスオーバーしてくる領域になっていくだろうと梅澤氏は語った。
この他にも、今後のコード決済業界の動向について、梅澤氏に気になる部分を予想してもらった。
現在、支払い方法には現金のチャージもあれば、クレジットカードひも付け、銀行口座からの引き落としもあるが、何が普及していくかは「ユーザーの利便性が高い基準で選ばれていく」との立場だ。幅広く対応することが、今後のサービス普及の要因にもなると見ている。もちろん、ポイント還元率に差をつけて、自社グループのサービスに誘導する施策も出てくるだろう。
「自社サービスに呼び込んで、グループの経済圏の中でどれだけお金を落としてもらえるかを狙う。単体では無理でもグループで採算を取るという考えもあります」
最近は女性の利用者が多いスーパーマーケットでもコード決済を導入するところが出てきている。女性にも利用を広げるため、女性にフォーカスしたキャンペーンが増えているので、ユーザーの男女比が半々になっても驚かないという。
なお、事業者ごとにはユーザーに違いが見られるという。携帯電話系サービスでは携帯電話ユーザーがベースになるので比較的男性が多め。一方でメルペイはメルカリのユーザーに女性が多いので、女性比率が高いという。年齢は比較的ばらけているが、これも事業者によって違いが多い。携帯電話系は年齢が高く、メルペイとLINE Payはメルカリ/LINEで若者ユーザーの比率が高いので決済利用者も若者が多い。
基本的にJ.D. パワーの調査は1年に1回、同時期に行われているが、このQRコード・バーコード決済サービス顧客満足度調査は半年に1回行う予定だという。コード決済業界は「動きがあまりにも速いため、1年前の使用経験にあまり意味がない」ためだ。次の調査は2020年3月だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.