インタビュー
» 2019年12月27日 06時00分 公開

SIMロックフリースマホメーカーに聞く:「5Gに向けて弾を込めている」 ファーウェイ呉波氏が語る、激動の2019年と2020年の展望 (1/4)

2019年は政治に振り回されたHuaweiだが、日本ではミドルレンジのP30 liteが好調だった。一方で、今後の機種にGoogleサービスを載せられるかは分からず、自前のアプリサービス「HMS(Huawei Mobile Service)」に切り替えた端末がどう評価されるかは未知数だ。ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波氏に、同社の現状と今後の方針を聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 2019年は、Huaweiにとって苦難の1年だったといえる。5月に米国商務省は、同社とその関連会社を輸出規制の対象となる「エンティティリスト」に登録。それに伴い、ドコモでは販売を予定していた「P30 Pro」の発売が大幅に遅れた他、SIMロックフリーモデルの「P30」「P30 lite」も、一部MVNOは発売を延期した。現時点ではどの機種も店頭には並んでいるが、米国の規制は継続中だ。

 そのため、現状では新規で開発した端末に、「GMS(Google Mobile Service)」を搭載できない状況が続いている。例外的に、11月に発売された「nova 5T」には、GMSが搭載されていたが、これはGoogleとの契約を制裁発動前に済ませていたためだ。

 こうした状況を踏まえ、HuaweiはGoogleとの取引再開をにらみつつ、自前のエコシステムである「HMS(Huawei Mobile Service)」を強化する方針を打ち出している。12月19日には、日本でも開発者向けのイベントを開催。GMSの復活を最優先にしながらも、“プランB”としてHMSの準備を着々と進めている。

 政治に翻弄(ほんろう)された1年だったHuaweiだが、日本ではミドルレンジモデルのP30 liteが好調だった。グローバルでは業績も上向きで、制裁で会社全体が一気に傾いたZTEとは対照的な状況といえる。一方で、日本ではまだGMS搭載端末しか販売されていない。HMSに切り替えた2020年以降の端末がどう評価されるかは、未知数のところも多い。どのような端末を投入していくのかを、注目しているユーザーも多いだろう。

 そこで今回は、ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョンのプレジデントを務める呉波(ゴ・ハ)氏に、同社の現状と今後の方針をうかがった。

Huawei ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョンのプレジデントの呉波氏

スケールメリットを生かして「nova 5T」は安価に発売

―― 11月にnova 5Tを発売しました。まずは、この状況からうかがえればと思います。

呉氏 nova 5Tは、主にオフライン(家電量販店など)と一部のMVNOで販売されていますが、5万円台という価格帯においては、悪くない売れ行きであるといえます。フラグシップモデル並みの性能を持ち合わせていながら、5万円台ということもあり、ハイエンドモデルを好むユーザーからも好評を博しています。

Huawei 4眼カメラやKirin 980、8GBメモリ搭載で5万4500円(税別)の「nova5T」

―― ミドルレンジよりちょっといいものを求めるユーザーと、ハイエンドにコストパフォーマンスを求める層の両方が取れているということでしょうか。

呉氏 その通りです。10月1日に分離プランが義務化され、キャリアの端末は以前より価格が上がっています。一方で、nova 5Tはディスプレイ、メモリ、カメラなどがフラグシップ並みで、価格もキャリアの端末購入補助が適用されたあとのものより安い。結果として、ハイエンドのユーザーからも注目され、購入されています。また、SIMフリーのスマートフォンは3万円台がボリュームゾーンといわれていますが、そのユーザーがもっといい体験を求めたときの候補の1つにもなっています。

―― なぜ、この価格を打ち出せたのでしょうか。

呉氏 理由の1つとして挙げられるのはチップセットで、最新モデルには「Kirin 990」が搭載されていますが、nova 5Tの「Kirin 980」は1年前に発表されたものです。日本市場での発売が、グローバルで見て一番遅いことも関係しています。他の国で非常にいい実績を出せているため、そのスケールメリットを上乗せしてこの価格にすることができました。

 もともとの計画では、冬モデルとしてKirin 990を搭載したフラグシップモデルを発売する予定もあったのですが、5Gのネットワークが完成するのを待って、2020年の商用化後にしました。キャリアのネットワークができていないため、代わりに4Gのスマートフォンを投入したという経緯があります。

5Gの商用化に合わせて「Mate 30」を日本で出す

―― SIMフリーであれば、先に端末だけ出してしまうということもできたかと思いますが、いかがですか。

呉氏 それは考えたことがありません。5Gのネットワークが使えない状態で5Gスマートフォンとうたっても、消費者には理解しにくいからです。弊社は、冬モデルとして、2018年は「Mate 20 Pro」、その前は「Mate 10」「Mate 10 Pro」、さらにさかのぼると「Mate 9」や「Ascend Mate 7」を発売してきましたが、ネットワークやサービスがレディでない状態で「Mate 30」を発売しても、消費者がそのよさを体感できません。結果として、ブランドがダメージを負ってしまうおそれもあります。

Huawei 日本では未発売の「HUAWEI Mate 30」シリーズ

―― まずは4G版のMate 30を出し、その後5G版を追加する手もあったかと思いますが、いかがでしょうか。

呉氏 そのような計画は一切ありませんでした。なぜなら、5Gは猛烈な勢いで、一気に広がると判断しているからです。実際、中国メディアによると、中国では1カ月で500万台以上の5Gスマートフォンが売れているといいます。3Gや4Gのときは、先にネットワークができ、そこで使う端末がありませんでした。これに対し、5Gはむしろ端末が先に出て、ネットワークが一歩遅れている状況です。

 ネットを見ても、日本の消費者が5Gに対して大きな期待を抱いていることが分かります。これは、海外と非常に近い状況です。日本の5Gスマートフォンは、当初、全体の10〜15%程度になるという記事を読んだことがありますが、個人的な意見では、これをはるかに上回ると思います。現在でも、既に4Gスマートフォンより5Gスマートフォンの方が安くなりつつあるからです。目の前に、最新の技術とサービスが載った端末があるにもかかわらず、より高いお金を出して1世代前のものを買うとは考えられません。

 この現象はわれわれだけでなく、他の端末メーカーにも起きています。中国や欧州での値付けや、市場の反響を見るとそれが分かります。日本の消費者には、優れた技術の革新的な製品を真っ先に使ってみたいという方が多い。その方々のために、われわれは今、弾を込めている段階です。2020年にはそれをバッと放っていきたいと考えています。

―― 5G版のMate 30は、SIMフリーになるのでしょうか。

呉氏 今の段階で、それは申し上げられません。確実にいえるのは、2020年、日本での5Gの商用化に合わせて端末を出していくということです。

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