ITmedia Mobile 20周年特集

公約を果たしたドコモ、果たせなかった楽天/スマホは二極化が進む――2019年のモバイル業界を振り返る石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2019年12月28日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

大手3社も肩透かしを食らった楽天モバイルの「無料サポータープログラム」

 一方で、果たせなかった公約もあった。楽天モバイルだ。2月には、コアネットワークと基地局側の双方を仮想化した「完全仮想化ネットワーク」の実験が成功したことを発表。2月にスペイン・バルセロナで開催された「MWC19 Barcelona」で、楽天の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏や、楽天モバイルのCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)を務めるタレック・アミン氏らが、大々的にその構想を披露した。三木谷氏いわく、完全仮想化ネットワークは「携帯電話業界のアポロ計画」だという。

三木谷 MWCの基調講演に登壇した三木谷氏は、自社の新規参入を「携帯電話業界のアポロ計画」と豪語した

 ただ、当時から基地局の展開計画には疑問符もついていた。いくら完全仮想化ネットワークとはいっても、最後は電波をアンテナから飛ばさなければならず、物理的なスペースはどうしてもなくならない。そこからコアネットワークに接続するのも有線で、工事が必要になる。特に都市部はビルの屋上などに基地局を密に設置していかなければならず、サービス開始までに十分な用地を確保できるのかどうかが注目を集めていた。

 その遅れが表面化し始めたのは、夏ごろのこと。総務省は楽天モバイルに対し、3月、7月と口頭で行政指導を行っていたが、3回目となる8月に、その事実が公表された。サービス開始までに行政指導が3回も続くのは異例の事態。結果として、9月には事実上のサービスイン延期を発表し、10月には5000人を抽選で集めた無料サポータープログラムを開始した。大手3キャリアにはできない低料金で新規参入し、料金値下げの起爆剤になるといわれていた楽天モバイルだが、その公約は果たされなかった。

楽天 7月には自社イベントの「Rakuten Optimism」を開催し、完全仮想化ネットワークをアピールした。一方で、このときには、既に2回目の行政指導が行われていた
楽天 当初の予定とは異なり、10月からは無料サポータープログラムを開始。サービス開始を事実上延期した

 楽天モバイルの料金プランについては、既存の大手3社も警戒感をのぞかせていた。ドコモの代表取締役社長、吉澤和弘氏は、7月に筆者のインタビューに応じた際に、10月1日の改正・電気通信事業法に合わせた料金プランの改定に向け、楽天モバイルへの対抗施策を加味することを語っていた。

 KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏も8月に開催された決算説明会で「楽天が秋に参入し、新た強い料金を発表する。そういうものを見ながら、下期の対応を進めていきたい」と、対抗を示唆している。サービス開始の事実上の延期は、ユーザーだけでなく、大手キャリア3社にとっても、肩透かしだったといえる。結果として、先に触れたように、3社とも、料金プランの改定は契約解除料の引き下げなどに止まっている。

高橋誠 「楽天の料金を見たい」と語った高橋氏だが、一方で「10月1日にサービスを始められるとは思っていなかった」と半信半疑だったことを明かしている

 もっとも、エリアに関しては、実際に使ってみると、予想を上回っている部分もあった。筆者はあくまで東京で試しただけで、他の地域まで同じとは限らないが、屋外のカバー率は思いのほか高く、「圏外」の文字を目にする機会は非常に少なかった。1つの基地局のカバー範囲を広げているためか、通信速度が低下する場所が多々あるうえに、屋内はauローミング頼りになってしまうものの、少なくとも東京都内では、それなりにつながるサービスにはなっていた。2020年に、本サービスへの早期移行ができることを期待したい。

楽天 11月の決算説明会では、基地局の開設予定が明かされた

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月12日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
  2. 庵野秀明、GACKT、ひろゆき、ドワンゴ川上らが集結 “カメラのいらないテレビ電話”をうたう新サービス「POPOPO」18日に発表へ (2026年03月11日)
  3. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  4. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  5. 自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート (2026年03月10日)
  6. 携帯キャリアの通信9サービス、総合満足度はpovoがトップ サブブランド勢が好調 MMDが調査 (2026年03月10日)
  7. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  8. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  9. どこでもウユニ塩湖? 3COINSで550円の「スマホ用反射ミラークリップ」を試す (2026年03月12日)
  10. 「Galaxy S26」シリーズはどこが安い? 一括価格と2年間の実質負担額を比較、お得なキャリアはココだ (2026年03月11日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年