有料サービスの開始が4月と発表されたが、現時点ではまだ料金体系が不透明だ。完全仮想化ネットワークで抑えたコストをユーザーに還元し、「インパクトは出さなければいけないと思っている」(同)というものの、具体的な金額がいくらになるのかが見えない。無料サポータープログラムでは、平均すると月15GBのデータ容量が使われているため、これを踏まえると、低価格な大容量プランにはニーズがあるといえそうだ。
ただし、以前の連載でも指摘した通り、auのローミングに頼っているうちは、構造的に大容量プランを打ち出しづらい。ローミング利用料が、従量課金で設定されているからだ。ユーザー向けに提示されている約款では、1GBあたり約500円程度の料金がかかる。この額がそのまま楽天モバイルからKDDIに支払われるわけではないが、ある関係者は「大差はない」と話す。ローミング込みで大容量プランを設定してしまうと、KDDIへの支払いで大赤字になってしまう恐れもあるというわけだ。
無料サポータープログラムは提供地域を絞っているが、有料サービスとなれば全国区に展開せざるを得なくなる。無料サポータープログラムを提供している地域では、自社の基地局でカバーできても、それ以外の道府県ではauローミングが必須になる。有料サービス開始とともに、ローミングのトラフィックが一気に増える可能性もあるため、料金とのバランスをどう取るのかは難しい問題。逆にいえば、基地局の設置は今以上にペースを上げていく必要がある。
ネットワーク以外のオペレーションにも課題が残る。2019年10月に無料サポータープログラムを開始した直後には、回線が開通できなかったり、サポートにつながらなかったりといったトラブルが起こった。山田氏も「不備があったのは事実で、ご迷惑をおかけしてしまった。おわび申し上げたい」と語る。山田氏によると、アクティベーションの仕組みを変更した上で、コールセンターの人員も大幅に増強したというが、有料サービス開始後にユーザーがどう動くのかは読みづらい。
実際、発表当日の1月23日には、Rakuten Miniの契約に必要なeSIMのシステムに不具合があり、一時的に機種変更が受け付けられない状態になった。すぐに復旧はしたものの、オペレーションの準備が万全ではないことが露呈した格好だ。有料サービス開始後は、他社端末のまま、SIMカードだけを楽天モバイルに移すユーザーも出てくるはずだが、現状では、SIMロックフリー端末の全面的な受け入れも行っていない。こうしたトラブルを洗い出すために実施している無料サポータープログラムではあるが、有料サービス開始まで、残された時間は少ない。
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