ユーザーにとっての魅力が増した楽天モバイルのUN-LIMITだが、収益性は別の話だ。先の述べた通り、ユーザーがauローミングを利用すると500円の料金が発生する。5GBをフルに使われると、2500円。このうち楽天モバイルからKDDIへの支払いは、2000円以上になる。現時点では料金が発生していないため、使われれば使われるほど赤字幅は大きくなる。仮に2980円を取っていたとしても、5GB使われた場合、楽天モバイルに残るのは1000円を下回る。
しかも、auローミングの課金単位は、あくまでデータ量だ。5GB超過後に速度制限をかけても、ユーザーに利用されればされるだけ、楽天モバイルからKDDIへの支払いは発生することになる。制限後の速度を128kbpsから1Mbpsに緩和したため、そのリスクは高まったといえる。ユーザーによっては、いわゆる逆ザヤになってしまうケースもありそうだ。
楽天モバイルがこの状態を脱するには、いかにauローミングを減らしていくかが鍵になる。そのためには、自社回線のエリアを早急に広げる必要がある。3月末時点に予定していた4400局は達成したといい、基地局は急ピッチで増やしているが、首都圏単位で見ても、まだまだ面的にカバーできていない部分は多い。総務省に提出した開設計画では、2026年3月までに人口カバー率96%を達成する見込みだが、今以上のペースで、これを前倒しにしていく必要がありそうだ。
料金面では一定のインパクトを出せた楽天モバイルだが、その他の課題は多い。端末ラインアップは、その1つだ。特に日本でのシェアが高いiPhoneを取り扱えていないのは、ユーザーを獲得する上でのハードルになりそうだ。SIMロックフリーのiPhoneとSIMカードを別々にそろえる手はあるが、現状では正式にサポートはしておらず、RCSを使ったRakuten LinkのiOS版もないため、電話をするたびに通話料が20円/30秒かかってしまう。
本サービスを開始したばかりとあって、今は十分なスピードが出るものの、楽天モバイルの持つ周波数は、1.7GHzの20MHz分と限りがある。2980円が無料になる300万人を超えたとき、今の快適さを維持できるのかは未知数だ。完全仮想化ネットワークにも、一抹の不安は残る。無料サポータープログラム期間中にも、12月、2月、3月と通信障害が発生しているため、本サービス開始後に同様の事態が起こらないことを期待したい。
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