藤岡氏はさらに、今後の5Gの標準化動向についても説明。現在3GPPで標準化が進められているリリース16では、NRの基本性能の向上だけでなく、いくつかの機能追加もなされるとのことだ。
無線通信部分に関して追加されるのは、基地局とコアネットワークをつなぐエントランス回線にNRを用いる「IAB(Integrated Access Backhaul)」や、NRを用いてより精度の高い位置測位を実現する「NR Positioning Support」、そして自動車同士がNRで直接通信しながら、動画像情報などを交換して協調動作をする「V2X with NR Sidelink」など。中でもクロサカ氏が注目したのが「NR Unlicenced」である。
これはライセンス不要の2.4GHz帯や5GHz帯などでNRを使った通信ができるというもの。実現するとWi-Fiの需要を奪う可能性があることから、クロサカ氏が「すごい産業構造の変化が起きるが、衝突もあるのでは」と話すなど、実現によってWi-Fiと競争関係になる可能性もあるという。ただ藤岡氏は、Wi-Fiと比べコスト面は不利な部分もあることから、一定のすみ分けがなされる可能性もあるとの認識を示した。
一方のコアネットワークに関しては、産業用IoTに向けていっそうの低遅延を実現する「5G Virtical LAN」、そして固定のネットワークアクセスをモバイルが巻き取る形で統合・集約する「5G Wireless and Wireline Convergence」(5WWC)の標準化仕様も盛り込まれるとのこと。5WWCはBroadband Forumと3GPPが共同で標準化仕様を策定しており、実現によって固定・無線の境目がなくなり、通信をシームレスに利用できる時代がくるのではないかと藤岡氏は期待を寄せた。
なおリリース16は新型コロナウイルスの影響で標準化作業が遅れているが、その次の仕様となるリリース17は予定通り進められるとのこと。こちらではカバーする周波数帯を71GHzにまで拡張するための検討がなされる他、画像などが扱える高度なIoT向けの新しい通信規格「RedCap」などが検討されるという。
さらにその先には、より高い周波数帯の利用や超大量の機器を接続できるIoTネットワークや、デバイス同士が連携して通信する仕組み、AI技術の活用など、「Beyond 5G」を見据えた高度化が検討されているとのこと。また次世代の通信規格「6G」に向けた検討や研究も、既に日本をはじめ世界各国で進められているという。
従来モバイルネットワークの世代交代は10年ごととされてきたが、藤岡氏によると6Gに関しては2027〜2028年ごろという、従来よりも早いタイミングでの商用化を見据えた動きが進められているという。まだ5Gのサービスが始まったばかりだが、通信業界では既に6Gに向けた競争が激しくなりつつあるようだ。
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