世界を変える5G

中国の5Gスマホ販売数は5G契約者の約半数 その理由はiPhoneにあり?山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)

» 2020年07月15日 14時41分 公開
[山根康宏ITmedia]

 中国の5G利用者数は毎月数百万のレベルで増えている。しかし全ての5G契約者が実際に5Gのサービスを利用しているのだろうか?

China Unicomのみ5G契約数は非公表

 中国の現時点での契約者数をまずはおさらいしておこう。2020年5月末時点の大手3社、China Mobile(中国移動)、China Telecom(中国電信)、China Unicom(中国聯通)の総契約者数と5G契約数は、以下の通り。

  • China Mobile:約9億4000万、うち5Gは5560万9000
  • China Telecom:約3億4100万、うち5Gは3005万
  • China Unicom:約3億2400万、5G契約者数非公開

 3社の比較を行うと、総契約数ではChina MobileがChina Telecom、China Unicomの3倍弱と圧倒的な強さを見せている。ところが5Gで比較してみると、China MobileとChina Telecomの差は2倍以下となる。5Gの開始によりChina Mobile一強だった中国の通信市場の構造には大きな変化が起きようとしている。

China Mobile 5G契約数が5000万を突破したChina Mobile

 一方、総加入者数で3位のChina Unicomは2019年11月に3社そろって5Gサービスを開始して以降、いまだに5Gの加入者数を発表していない。China UnicomとChina Telecomは総加入者数や4G契約数でほぼ横並びであったことから、China Unicomの5G契約数もChina Telecom同様に3000万前後とみることもできる。しかし数を公開してないということは、5G契約数が思ったほど伸びていないからではないだろうか。もしかするとまだ1000万の大台にも乗っていないかもしれない。

 なお中国メディアは「5月末時点で中国国内の5G総契約数は1億程度だろう」と推測している。もしも1億を超えたのならば中国の工業情報化部(工信部)が大々的に発表を行うだろうが、公式には「中国の5G契約者数は1億超え」というアナウンスはされていない。となるとChina Unicomの5G契約数はやはり1000万以下かもしれない。つまり2020年5月末時点での中国3社の5G契約者数の合計は、

  • China Mobile(5560万9000)+China Telecom(3005万)+China Unicom(1000万弱)=9500万前後

 と考えるのが妥当かもしれない。

China Unicom China Unicomは5G契約数を一切発表していない。ユーザー数の実態は不明だ

5G契約と4Gスマートフォンのセット割引販売も

 このように中国の5G契約数は8500万から1億の間と推測される。しかし本当にこれだけの契約者が5Gサービスを使っているのだろうか?

 中国ではここ数カ月、毎週のようにスマートフォンの新製品が発表されており、そのほとんどが5G対応モデルになっている。5月には2000元を切る製品が相次いで登場。Xiaomiの「Redmi 10X」が1599元(約2万4300円)、Vivoの「Y70s」とHuaweiの「Enjoy Z 5G」が1699元(約2万5800円)、Xiaomiの「Redmi K30i 5G」が1799元(約2万7300円)、Huawei「Honor X10」とXiaomi「Redmi K30 5G Speed Edition」が1899元(約2万8900円)と、一気に6機種もの「格安5Gスマホ」が発表された。

Redmi 10X ついに2万5000円を切る激安5G端末「Redmi 10X」が登場

 これら低価格な5Gスマートフォンの登場により、中国の消費者の興味は5Gにフォーカスしている。4Gスマートフォンの新製品の数も減っており、数カ月前に発売された4Gスマートフォンの上位モデルより、2020年になって出てきたより低価格な5Gスマートフォンの方が性能も高く機能も充実している。キャリアも5G契約と5Gスマートフォンの割引セット販売を強化中だ。その結果、China Telecomは5月の5G契約者数を一気に1000万も増やしたのだ。5G契約者の数が増えているのは、数値が示すように事実なのである。

Mi 10 Xiaomiの5Gスマートフォン「Mi 10」。5G契約で800元(約1万2000円)から3780元(約5万7000円)まで割引される

 だが全ての5G契約者が5Gスマートフォンを使っているわけではない。3キャリアは5G契約と4Gスマートフォンのセット割引販売も行っているのだ。なぜなら中国でも人気の高いiPhoneが5Gに対応していないからだ。2019年の中国のiPhone出荷台数は3280万台(IDC調べ)と、中国での人気は衰えていない。HuaweiやXiaomiにシェアは抜かれたものの、都市部ではiPhoneユーザーが非常に多い。そのiPhoneを5G契約とセットにして割引販売することで、キャリアは5G契約者数を形の上で増やしているのだ。5G契約者は4G契約者よりもARPUが高いため、4Gから乗り換えてもらうだけでも3社は収益アップが見込めるのだ。

App Store 北京のApple Store。5G対応iPhoneが不在でも、キャリアは5G契約とバンドル販売を進める

 仮に2020年も同じ数だけのiPhoneが中国で売れるとして、その何割がキャリア経由で5G契約とセットでiPhoneを購入するかは推測しにくい。高価なiPhoneだけに契約セットの割引販売を利用する人は相当数いると考えられる。中国の全iPhone販売台数の仮に3分の1がキャリア販売なら、その数は1000万に達する。これはかなり大きな数字だ。

 同様に、Androidの4Gスマートフォンを5G契約で購入するユーザーも一定数いるだろう。5Gならより大容量のデータ通信が利用でき、データ単価は割安だからだ。

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