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» 2020年09月19日 06時00分 公開

石野純也のMobile Eye:ついに携帯電話として独立したApple Watch ただし料金プランには課題も (1/2)

2020年のApple Watchは、正統進化した「Series 6」と廉価モデルの「SE」を用意した。SEのような廉価モデルは、シェアを拡大する上で重要になる。watchOS 7のファミリー共有設定もシェア拡大の鍵を握るが、auが提供する料金プランには課題があると感じた。

[石野純也,ITmedia]

 スマートウォッチとして高いシェアを誇るAppleの「Apple Watch Series 6」と「Apple Watch SE」が18日に発売を迎えた。同モデルは、16日に同社が開催したイベントで発表された新モデル。血中酸素ウェルネス機能に対応し、正統進化したApple Watch Series 6に対し、Apple Watch SEは初の廉価モデルだ。iPhoneと同じ「SE」の名を冠し、一部仕様を最新モデルにそろえながら、2万9800円(税別、以下同)からという価格を打ち出した。

Apple Watch Apple Watch Series 6(左)とApple Watch SE(右)

 ハードウェアの進化そのもの以上に注目したいのが、Apple Watchの役割が変化しつつあるということだ。もともとApple Watchは、iPhoneのコンパニオンデバイスとして誕生した。iPhoneの通知を腕で受けたり、より体に密着したデバイスとしてアクティビティーのログを取ったりするのが主な役割だ。それ自体は今でも変わっていないものの、新たに登場した「ファミリー共有設定」で、独立した携帯電話としての顔も持つようになった。ここでは、Apple Watchの進化の歩みを振り返りつつ、その意義やAppleの狙いを読み解いていきたい。

正統進化で機能を強化したSeries 6に加え、廉価版のSEが登場

 Appleは、従来1モデルで展開していたApple Watchを2つに拡大し、価格や機能にバリエーションを持たせた。1つが初代Apple Watchの流れをくむ正統進化版のSeries 6、もう1つが初めての投入になる廉価モデルのSEだ。iPhoneの場合、SEは相対的にコンパクトで、かつリーズナブルな端末に付けられているが、Apple Watchでは価格にその特徴を反映させた。

Apple Watch 正統進化版のApple Watch Series 6
Apple Watch リーズナブルな価格が魅力のApple Watch SEも新たに登場した

 金額は、Series 6が4万2800円からなのに対し、SEが2万9800円から。モバイルデータ通信が可能なセルラー版はその差がさらに大きくなり、Series 6が5万3800円からなのに対し、SEは3万4800円になる。

【訂正:2020年9月19日9時40分 初出時に「Series 3が5万3800円から」としていましたが、正しくは「Series 6が5万3800円から」です。おわびして訂正致します。】

 Apple Watch Series 6は、新たに血中酸素ウェルネスセンサーを搭載し、血液中の酸素濃度を測定することが可能。“ウェルネス”と銘打たれているように医療目的には使えないものの、Apple Watchが得意としていたヘルスケア分野の機能をさらに強化した格好だ。形状はSeries 5とほぼ同じだが、常時表示ディスプレイが非アクティブ時に25%明るくなっていたり、Wi-Fiが5GHz帯に対応していたりと、ベースとなるハードウェアも着実に進化している。

Apple Watch 血中酸素ウェルネスセンサーを搭載し、血液中の酸素の濃度を測定できる
Apple Watch 非アクティブ時のディスプレイは、25%ほど明るくなった

 対するApple Watch SEも、廉価モデルとはいえ、機能は充実している。ディスプレイサイズはSeries 4以降のApple Watchと同じで、サイズは40mmと44mmの展開。Series 5で導入された常時表示のディスプレイには非対応だが、加速度センサーやジャイロセンサーなどは備え、転倒検出は行える。チップセットは「S5デュアルコアSiP」で、ベースになっているのは2019年に登場したSeries 5とみていいだろう。そこから一部の機能をそぎ落としつつ、低価格を実現した格好だ。

Apple Watch Apple Watch SEの主な機能。Series 4とSeries 5の間ぐらいの性能といえそうだ

 Apple Watchは購入者の75%以上が新規の利用者で、スマートウォッチの中では圧倒的なシェアを誇るが、競合も徐々に増えている。調査会社カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチが8月に発表した2020年第2四半期のシェアは、Appleが30%で1位だったが、2位のHuaweiは14%で、その差は徐々に縮まっている。トップシェアを維持しているうちに、より市場を広げておき、盤石の体制にしておきたいと考えても不思議ではない。

watchOS 7のファミリー共有設定で“独立した携帯電話”に

 シェア拡大の上で鍵になるのが、watchOS 7のファミリー共有設定だ。廉価なApple Watch SEを投入した理由も、この機能と深くリンクしている。ファミリー共有設定を利用すると、iPhoneとは別の電話番号、別のApple IDでApple Watchを使うことが可能になる。一度設定してしまえば、あとはiPhoneなしで利用可能。これは、Apple Watchが1台の“独立した携帯電話”になることを意味する。

Apple Watch Apple Watchを独立した携帯電話として利用可能にするファミリー共有設定

 Appleが想定しているユースケースは、子どもや高齢者の見守りだ。GPSで子どもの居場所を調べ、いざというときには親と通話する――ジャンルで言えば、キャリアが投入してきた低年齢向けの見守り端末に近い。ドコモの「キッズケータイ」やauの「mamorino」、ソフトバンクの「キッズフォン」が、これに該当する。ただし携帯電話とは異なり、Apple Watchは腕に巻くことができるため、常時身に着けられる。ヘルスケア機能を備えているため、高齢者が自身の健康管理のために使いつつ、子どもが見守ることも可能だ。

Apple Watch
Apple Watch 電話やメッセージの相手を限定したり、位置情報を取得したりと、見守り端末として利用するケースを想定

 Apple Watchの歴史をひもとくと、徐々に“iPhone離れ”を進めてきたことが分かる。まず、Series 3でeSIMを搭載し、iPhoneがない状態でも通話やデータ通信が可能になった。ただしwatchOS 6までは、あくまでiPhoneがそばにないときに単独で通信するための、補助的な通信機能と位置付けられていた。そのため、iPhoneとは同じ電話番号で運用する仕組みが採用されている。watchOS 7では、これに追加される形でファミリー共有設定が導入された。

Apple Watch Series 3で初めてeSIMを搭載。単体で通信できるようになった。写真は2017年のイベントで撮影

 iPhoneからの独立という観点では、watchOS 6でスタートしたApple Watch版のApp Storeも、その準備だったと考えることができる。それまでもwatchOSでは、iPhone経由でしかアプリをインストールできなかったが、watchOS版App Storeの登場によって、Apple Watch単体でそれが可能になった。iPhoneとひも付けて自分でApple Watchを使う分には、そこまで必要性は高くなかったものの、単体で機能するとなれば話は別だ。watchOS 6では「計算機」や「ボイスメモ」といった、スマートフォンにとっての必須機能も加わっており、単体で動作させることを意識していたことがうかがえる。

Apple Watch watchOS 6では、App Storeをはじめとした単体利用を前提にした機能が追加された。写真は2019年のWWDCで撮影
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