プロナビ

法人市場を“クラウドSIM”で開拓、テレワーク需要にもマッチ 「DoRACOON」の狙いを聞くMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2020年10月13日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 容量無制限をうたうWi-Fiルーターが相次いでトラブルを起こし、イメージが悪化してしまったクラウドSIMだが、この技術の魅力は本来、違うところにある。仕組みとしてはeSIMに近いもので、SIMカードの差し替えをせず、最適なキャリアをユーザーが意識することなく選択できることだ。eSIMとは異なり、キャリアの変更を事業者側が制御できるため、ユーザー側にワンストップでサービスを提供できるのも、クラウドSIMの特徴といえる。

 そんなクラウドSIMに早くから着目していたのが、経営破綻したプラスワン・マーケティング社からFREETELブランドを継承したMAYA SYSTEMだ。クラウドSIM内蔵のスマートフォンを販売している一方で、法人向けの新ビジネスも展開した。それを手掛けているのが、前MAYA SYSTEM代表で、現在はMAYAネットソリューションズの代表取締役社長を務める吉田利一氏。同社はクラウドSIMを活用し、NTT西日本の子会社にあたるNTTメディアサプライと共同で新事業の「DoRACOON(ドゥラクーン)」を7月29日に開始した。

DoRACOON クラウドSIMを使った法人向け通信サービス「DoRACOON」

 DoRACOONは、クラウドSIM内蔵端末、回線、ソリューションがセットになったサービス。オフィスや店舗に必要な回線や、中小規模の会社の内線子機、テレワークや出張時のネット回線として利用できる。とはいえ、法人市場はキャリアやMVNOとも競合する分野。なぜここを、クラウドSIMで開拓していこうとしているのか。サービス開発の経緯や今後の展開を、先の吉田氏とNTTメディアサプライでブロードバンサービス事業本部 Business Re-creation部 部長の滝祐治氏に聞いた。

企業の固定回線や固定電話としての利用を想定

DoRACOON NTTメディアサプライの滝祐治氏

―― まずは前段として、DoRACOONがどのようなサービスなのかを、簡単にご説明いただけないでしょうか。

滝氏 簡単に言うと、企業向けのクラウドSIMを使ったサービスです。技術として先行している事業者はいますが、そのクラウドSIM基盤を使ってサービスを提供しています。特徴としては、他の事業者がやっているようなモバイルWi-Fiルーターだけにとどまらず、スマホや据え置き型といった3つの端末をご用意しています。これは、ユーザーの利用シーンを想定してのことです。

 当社はNTT西日本の100%子会社なので、そこが抱える企業ユーザーに提供していく狙いがあります。光ではフォローできないお客さまをフォローしたり、有線では外に持ち出せない電話回線を子機として外に持ち出せたりするようにするのがコンセプトです。将来的にメインになってくると思いますが、ISDNのバックアップ回線として使われることも想定しています。据え置き型の端末については、このISDNのバックアップが利用シーンになります。

 クラウドSIMなら、1キャリアだけでなく、複数キャリアでサービスを提供できます。モバイル網に何らかの障害があった場合でも、すぐにバックアップに切り替えられます。また、NTT東西は光をメインで売っていますが、都市部、ルーラル(田舎)を問わず、配管が古いとなかなか光回線が引けません。ですが、お店をやられる事業者の中には、売り上げ管理システムなどにネットワークを使いたいという方は多くいます。そういったところでは、光の代替として使われることも想定しています。

 2つ目の利用シーンがスマホタイプの端末で、ビジネスフォンからの切り替えを狙っています。内線子機として使うことができ、外出した際にも「03」や「06」などの固定電話として受発信が可能なのが特徴です。クラウドPBXなどとセットで使うことで、据え置き型のビジネスフォンより利便性が高くなります。他にもモバイルWi-Fiルーターがあります。これは他の企業でもやっていることですが、昨今のリモートワーク需要もフォローしています。サービスは、この3パターンで提供しています。

―― 吉田さんのMAYAネットソリューションズは、どのような関わり方をしているのですか。

吉田氏 クラウドSIMはもともとMAYA SYSTEMでやっていたものですが、今回もクラウドSIMの黒子をやっています。クラウドのサーバを立ち上げたりといった裏方ですね。弊社はドコモのL2接続でMVNOをやっているので、そういったものを導入したり、他のキャリアのSIMカードを調達したりといったことをしています。設備の裏側をわれわれがやっているイメージですね。

無線の1キャリアは信用できない

―― そもそも、DoRACOONのサービスを開発するにあたり、クラウドSIMに着目した理由はどこにあったのでしょうか。

滝氏 ISDNのマイグレーションを将来どうするのかを考えたのがきっかけです。NTT西日本として課題を持っているとご相談いただいたところからですね。ドコモ回線はドコモ回線でいいところがありますが、バックアップ回線にISDNを使っているところを見ると、そのバックアップ自体がダメになるリスクがありました。そういったときのために、2回線契約しているというお話をうかがいましたが、それは結構なロスでもあります。

 ネットワーク側で冗長化が組めていて、特定のキャリアに縛られることなく、あるときはau、あるときはドコモ、あるときはソフトバンクといったふうにつながるネットワークは魅力的でした。(グループとして)ドコモのネットワークを使うこともありますが、ケースバイケースで提供の仕分けができる技術は有力です。それを事業として建てつけられれば、サービスとして受け入れられるのではないかと考えたことが始まりです。

吉田氏 企業では、有線回線が入っていても、そのバックアップとして細くてもいいからつながることが大事になります。ソリューションを提供している企業からは必ず言われますが、無線の1キャリアは信用できない。仮にそれが3キャリアなら、そのうちの1つだけでもつながればビジネスが続けられます。そのために3キャリアを別々に契約しているところもありますが、コストも3倍になってしまう。クラウドSIMなら1本でつながるので、コスト的に助かるという声は多いですね。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月27日 更新
  1. 「海外からの迷惑電話が解消した」との声も NTTタウンページの「詐欺対策」アプリ、累計100万ダウンロード突破 (2026年06月25日)
  2. 年会費9万9000円の価値はある? 最上位クレカ「Olive Infinite」と「Visa Infinite」の違いと持つべき人 (2026年06月25日)
  3. 「モラルが欠如している」──LINE安否確認で“悪ふざけ”、SNSで批判の的に (2026年06月26日)
  4. ソフトバンクが「今回もやる」とGalaxy S26を月額1円で販売――販売方法を早急に見直さないと撤退を迫られるメーカーも (2026年03月08日)
  5. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」どちらが買いか? 2機種を使い込んで分かった“スペック表にない違い” (2026年04月29日)
  6. スマホの短期解約、最長1年の「継続利用」容認で抑制へ 「お試し割」は統合 総務省が取りまとめ (2026年06月25日)
  7. 「日本は6G周波数の議論すら始まっていない」 クアルコムが抱く危機感と、AI時代の次世代通信 (2026年06月26日)
  8. iPhoneそっくりなだけじゃない、コラボモデルもある「HONOR 600 Pro」 (2026年06月26日)
  9. 「実質24円」は今後も続く? スマホ残価設定は「現状維持」、残価率の一律化は「適当ではない」と総務省が評価 (2026年06月25日)
  10. ソニー「aibo」の国内販売終了 なぜ、人に愛される存在になったのか (2026年06月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー