「映像美」を再定義するiPhone 12シリーズの新たな可能性魅力のディテールを整理(5/6 ページ)

» 2020年10月15日 15時30分 公開
[林信行ITmedia]

映画館顔負けの映像美

エマニュエル・ルベツキ氏が撮影した映像

 映画などで、美しい映像を映し出すためのDolby Visionという規格がある。家庭用TVから映画館での上映などに向けて作られた技術規格で、暗い部分から明るい部分まで広いダイナミックレンジ(いわゆるHDR)を鮮やかに映し出すためのものだ。

 2020年になって20〜30万円する映画撮影用カメラなど、一部の専用機器で、まさに採用が進みそうだと話題になっていた。これを真っ先に実現してしまったカメラがポケットの中に収まるほど薄く小さなiPhone 12シリーズだった。他の機器は、これをデータ化し記録するのは難しかった。専用の映像スタジオで高性能PCを使って映像1コマ1コマの明るさの分布をヒストグラムというグラフにした上で、Dolby Visionの規格に合わせて色のグレーディング(色調を整える)処理を加えるという流れが必要だった。

 それに対し、何とiPhone 12シリーズでは高性能なA14 Bionicに搭載された映像信号プロセッサ(ISP)が、これをリアルタイムで処理してしまっているのだ。

 新しいiPhoneは、一番手頃なiPhone 12 miniやiPhone 12に至るまで、背面カメラはもちろん、インカメラのTrueDepthカメラまでもがDolby Visionでの映像の記録、そしてDolby Vision対応を保ったままでの映像編集に対応している。

 特にiPhone 12 Pro/Pro Maxでは、より色情報が多い10bitカラーのHDRビデオに対応した。捉えられる色は従来の60倍で7億色と、自然の風景などの名前も付いていない色をリアルに再現してくれる。

 さらに一般的な映像記録の倍の60fps、つまり毎秒60フレームで記録が行える。

 ここにiPhone 12 Pro Maxでは、写真撮影に関する説明でも紹介した圧倒的に多くの光を捉えるレンズやセンサー、そして極めて性能の高い手振れ補正が加わる。

 製品発表が行われたスペシャルイベントでは、映画『ゼロ・グラビティ』、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』、『レヴェナント:蘇えりし者』でアカデミー賞を受賞した撮影監督のエマニュエル・ルベツキ(Emmanuel “Chievo” Lubezki)氏がiPhone 12 Proで撮影したという映像が、本人のナレーション付きで披露された。

 それは、小さく薄いiPhone 12で撮影したとは信じられないくらいに美しい、映像美にこだわった映画のような映像だった。映像の中で、「未来の映画監督は、既にこうしたデバイス(iPhone)で映画を撮り始めているはずだ」と語っているが、確かにこんなに美しい映像が撮れるなら、本気で映画監督を目指してしまう若者が出てきてもおかしくない。

 もちろん、美しい映像で重要なのはカメラだけではない。撮る時も、そして撮った映像を見返す時も、カメラが捉えた色や光を美しく再現するディスプレイがあってこそ良い試行錯誤ができる。

 iPhone 12シリーズは、この点でも当然抜かりはない。4モデルともAppleが自信を持って開発したSuper Retina XDR Displayを搭載している。画面としての性能は従来のiPhone 11 Proと同じだが、改めてその意味を説明しよう。

 Retinaは網膜のことで、10年前に登場したiPhone 4以来、Appleは人間の網膜では映像を構成する個々のピクセルを識別できない解像度(1インチ幅に100〜160ピクセル)のディスプレイをこう呼んでいる。さらに黒い色がしっかりと沈む有機EL採用ディスプレイはSuper Retinaと呼んでいる。

 では、XDRは何かというと「XDR(Extreme Dynamic Range)」の略だ。Dynamic Rangeとは、明るい部分と暗い部分のコントラストをきれいに描き出すことで、幅広い光っているものなど明るいものと、影になっている箇所のどちらもきれいに描き出せている映像をHigh Dynamic Range(HDR)が効いた映像と呼んだりするが、それを超えたダイナミックレンジのディスプレイという意味が込められている。

 液晶画面はそれ自体が発光せず、写真のように映し出す映像を描いた後、画面の裏側のバックライトで画面全体に光を照らすため黒い部分がどうしても少し明るくなってしまうが、有機ELのディスプレイは個々の点が、それぞれの色で光を放ち、黒い点は一切光を放たずしっかりと色が沈んでくれる。このため、液晶よりも高いダイナミックレンジを発揮しやすく、暗めのシーンでも何が映っているかをしっかりと描き出せる。

 iPhone 12シリーズのディスプレイは、一番明るい点が1200ニトとかなり明るい(iPhone SEは最新のものでも最大625ニト)。このため、コントラスト比(一番明るいところと一番暗いところの差)が200万:1と大きい(iPhone SEでは1400:1)。

 ちなみに、真っ暗な部屋で見るためコントラスト比を出しやすい映画館で見る映画も、ほとんどの場合、コントラスト比は1800:1程度とiPhone SE相当だ。最近、増えているDolby Vision対応の映画館では、これが大きく進化しているが、それでも100万:1ほどなのが普通と考えると、Super Retina XDR Displayがどれだけすごいかよく分かってもらえるかと思う。

 ちなみにDolby Visionはその名の通り、Dolbyが定めた広ダイナミックレンジの映像表現の規格だが、Super Retina XDR Displayは、これ以外にも2000以上の映像会社が加盟して作っているオープンスタンダードのHDR10や、ライブ放送などが多いテレビ中継向けに作られた規格のHybrid Low-Gamma(HLG)にも対応しており、Apple TV+やiTunes、他社製のアプリが提供する、より多くの映像コンテンツを広ダイナミックレンジで楽しめる。

 ちなみにiPhone 12 Proシリーズでは、同じディスプレイを搭載しつつも画面上の暗い部分の階調を、より正確に描き出すデジタルガンマという技術も備えており、暗所に強いカメラが写しとる写真をより美しく描き出せる。

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