5Gが創出する新ビジネス

富士通のローカル5G戦略を聞く ユースケース開拓、導入ハードルを下げる取り組みも5Gビジネスの神髄に迫る(2/3 ページ)

» 2020年11月16日 11時42分 公開
[佐野正弘ITmedia]

パートナー企業との共創でユースケース開拓に注力

 では実際のところ、ローカル5Gにはどのような業種からの問い合わせが多いのだろうか。宮本氏によると、やはり工場のスマート化に対するニーズが高く、製造業からの問い合わせが多いとのことだ。

 製造業でのローカル5G活用は以前から注目されている分野の1つだが、富士通は栃木県小山市にある自社工場でローカル5Gを活用し、技能伝承や作業支援などの取り組みを進めているとのこと。コロナ禍以前より、少子高齢化による作業伝承の問題は大きな課題の1つとされていたことから、ローカル5Gと映像伝送、AIを活用して作業の省人化や最適化を進めたり、品質管理の自動化などを支援したりする取り組みを、自ら実践しようとしているようだ。

富士通 富士通は自社工場にローカル5Gを導入し、少子高齢化で製造業からのニーズが高まっている作業効率の向上や自動化などに向けた取り組みを進めているという

 一方で、製造業以外では農業、そして教育などの分野からも問い合わせがあるとのこと。教育にローカル5Gというのはあまりピンとこない部分もあるが、宮本氏によるとコロナ禍でのニューノーマル時代による変化として、デジタル教育や遠隔での授業、動画教材の活用などに対する要望が増えているとのこと。そこで5Gの高速大容量通信による高精細な映像伝送が注目され、ローカル5Gへの関心の高まりにつながっているようだ。

 ただ実際のところ、ローカル5Gのビジネスを推し進める上では「ローカル5Gを利活用するメリットがまだ見えづらい」こと、そして「導入コストに対する不安があること」の2つが、大きな課題になっている。前者に関しては、そもそもローカル5G、さらに言えば5G自体サービスが始まったばかりということもあって、確立したユースケースがあまり存在しないことが影響している。

 そこで富士通では2020年10月8日に「ローカル5Gパートナーシッププログラム」を打ち出した。これはデバイスやセンサー、プラットフォームやアプリケーションなどの技術を持つパートナー企業と、ローカル5Gを活用した具体的なユースケース創出とソリューション開発を進めるというものだ。

富士通 富士通が展開を打ち出した「ローカル5Gパートナーシッププログラム」。デバイスやプラットフォームなどを持つ企業とローカル5Gのユースケース創出に向けた取り組みを進める枠組みになるという

 宮本氏によると、「われわれはネットワークインフラを提供するが、それだけでは顧客がやりたいことを実現できない。パートナー企業が持つアセットを持ち寄って、共同でソリューションを作り上げる」のが、同プログラムの狙いになるという。現在参加しているパートナー企業は「10社弱くらい」(宮本氏)で、富士通からスピンアウトした富士通コネクテッドテクノロジーズも、パートナー企業の1つとして協力しているとのことだ。

 宮本氏はローカル5Gパートナーシッププログラムの実例として、日本マイクロソフトと共創した製造業向けのソリューションを挙げている。これはローカル5Gと、マイクロソフトのクラウド基盤「Microsoft Azure」「Azure IoT Edge」を活用し、カメラやセンサーの情報をエッジでAI解析するというもの。今後も宮本氏は「実際に動くものを多く、早く提供していきたい」と、このプログラムでのユースケース創出に力を入れていくとしている。

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