では実際のところ、ローカル5Gにはどのような業種からの問い合わせが多いのだろうか。宮本氏によると、やはり工場のスマート化に対するニーズが高く、製造業からの問い合わせが多いとのことだ。
製造業でのローカル5G活用は以前から注目されている分野の1つだが、富士通は栃木県小山市にある自社工場でローカル5Gを活用し、技能伝承や作業支援などの取り組みを進めているとのこと。コロナ禍以前より、少子高齢化による作業伝承の問題は大きな課題の1つとされていたことから、ローカル5Gと映像伝送、AIを活用して作業の省人化や最適化を進めたり、品質管理の自動化などを支援したりする取り組みを、自ら実践しようとしているようだ。
一方で、製造業以外では農業、そして教育などの分野からも問い合わせがあるとのこと。教育にローカル5Gというのはあまりピンとこない部分もあるが、宮本氏によるとコロナ禍でのニューノーマル時代による変化として、デジタル教育や遠隔での授業、動画教材の活用などに対する要望が増えているとのこと。そこで5Gの高速大容量通信による高精細な映像伝送が注目され、ローカル5Gへの関心の高まりにつながっているようだ。
ただ実際のところ、ローカル5Gのビジネスを推し進める上では「ローカル5Gを利活用するメリットがまだ見えづらい」こと、そして「導入コストに対する不安があること」の2つが、大きな課題になっている。前者に関しては、そもそもローカル5G、さらに言えば5G自体サービスが始まったばかりということもあって、確立したユースケースがあまり存在しないことが影響している。
そこで富士通では2020年10月8日に「ローカル5Gパートナーシッププログラム」を打ち出した。これはデバイスやセンサー、プラットフォームやアプリケーションなどの技術を持つパートナー企業と、ローカル5Gを活用した具体的なユースケース創出とソリューション開発を進めるというものだ。
宮本氏によると、「われわれはネットワークインフラを提供するが、それだけでは顧客がやりたいことを実現できない。パートナー企業が持つアセットを持ち寄って、共同でソリューションを作り上げる」のが、同プログラムの狙いになるという。現在参加しているパートナー企業は「10社弱くらい」(宮本氏)で、富士通からスピンアウトした富士通コネクテッドテクノロジーズも、パートナー企業の1つとして協力しているとのことだ。
宮本氏はローカル5Gパートナーシッププログラムの実例として、日本マイクロソフトと共創した製造業向けのソリューションを挙げている。これはローカル5Gと、マイクロソフトのクラウド基盤「Microsoft Azure」「Azure IoT Edge」を活用し、カメラやセンサーの情報をエッジでAI解析するというもの。今後も宮本氏は「実際に動くものを多く、早く提供していきたい」と、このプログラムでのユースケース創出に力を入れていくとしている。
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