2つ目のコスト面での課題は、やはりローカル5GがWi-Fiなどと比べ機器が高いというだけでなく、電波免許の取得が必要であるなど導入や運用のハードルが高いことも大きく影響しているようだ。そこで富士通は、ローカル5Gの導入ハードルを下げるべく、10月8日に「プライベートワイヤレスマネージドサービス」と「プライベートワイヤレスクラウドサービス」という2つの取り組みも発表している。
これらはいずれも、ローカル5Gをはじめとした自営無線システム環境の構築や運用、保守を富士通が請け負うサービスになる。前者は顧客が用意したネットワーク設備を富士通の技術者が直接サポートするというもので、「ネットワーク構築などに慣れていない顧客を支援するサービス」(宮本氏)になるとのことだ。
一方後者は、基地局やコアネットワークなどをクラウドで提供することで、自営無線ネットワークを導入しやすくする月額制のサービスであり、初期導入コストを抑えられることが大きな特徴となる。こちらはSXGPや自営BWAなどのプライベートLTEからサービスを始め、その後ローカル5G向けに展開するとのことだ。
ちなみにプライベートワイヤレスクラウドサービスは初期費用100万円とのことだが、実際にはアンテナや端末などを別途用意する必要があるため「純粋に100万円で全てを実現できるわけではない」と宮本氏は話す。だがコアネットワークや基地局などの用意や運用にかかる手間やコストを考えれば、導入しやすい仕組みであることは確かだろう。
富士通は長年キャリア向けに通信機器やサービスを提供してきた実績もあるだけに、ネットワークからサービスまで、業種に応じた複合的な価値を垂直統合型で提供できることが、ローカル5Gでもやはり強みになっているといえよう。宮本氏は「従来のネットワークインフラビジネスの延長線ではないやり方やアプローチが必要」と話しており、ローカル5Gパートナーシッププログラムなどを活用し、ネットワーク構築だけにとどまらないビジネスを展開する考えを示している。
一方で、ローカル5Gはまだコスト面の問題もあることから、実際に取り組んでいるのは大規模から中堅クラスまでの企業が多いという。これらの課題をクリアしていく上でも、4.7GHz帯やプライベートワイヤレスクラウドサービスなどの活用を積極化していきたいとも話していた。
そうした傾向を考えると、やはり同社もローカル5Gのビジネスを本格化するのは4.7GHz帯の割り当てがなされた後の2021年以降になるといえそうだが、この時期になると他社も一斉にローカル5Gのビジネスを本格化し、競争が急速に激化すると考えられる。富士通はモバイル通信やICT技術への知見を多く持ち優位性が高いだけに、導入ハードルを下げる取り組みの強化でいかに顧客に安心感を与えられるかが、この市場で高い存在感を示す鍵になるといえそうだ。
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