シスコシステムズが11月12日、5Gネットワーク上で実証実験を可能にする施設「5Gショーケース」の運用を開始した。
5Gショーケースはシスコ東京オフィス27階に設置され、法人やパートナー企業が5Gソリューションを開発するためのテスト環境を提供する。通信事業者の商用インフラをモデリングしたネットワークと企業システムを模したネットワークを接続し、5Gを活用したソリューションのデモを行う。例えばローカル5Gの導入テストや、企業内ネットワークでWi-Fiと5Gのシームレスな接続を実現するためのテストなどが可能。その際、シスコのエンジニアがPoC(概念実証)をサポートする。
5Gショーケースの狙いは、通信事業者、企業、パートナーとともに、5Gのユースケースを創出していくことにある。パートナー企業にはIntelやQualcommに加え、NTT東日本、NEC、京セラコミュニケーションシステムなどローカル5Gに携わっている事業者も多く、ローカル5Gでのユースケース創出が期待される。
2021年度におけるシスコシステムズ日本法人の重点戦略は「ニューノーマル化における経済成長と、安心・安全な社会実現の貢献」であり、その基盤となるのが5Gインフラだ。
シスコシステムズの副社長 情報通信産業事業統括の中川いち朗氏は「4G以前のネットワークの接続性を中心とした機能から、デジタルとリアルを融合した新しい価値を創造する。コンシューマー向けの映像配信やゲームなどだけでなく、医療やIoT、工場、街、クルマ、農業、運輸、公共サービスなどあらゆる産業に新しい価値を提供する」と話す。
こうした世界を実現するためには、「通信事業者と企業のネットワークがエンドツーエンドでセキュアに連動し、運用が自動化、可視化される必要がある」と同氏。そこで、5Gネットワークと企業ネットワークを連携可能な検証施設を設立した。
日本では2020年3月に5Gの商用サービスがスタート。通信事業者はエリア拡大に尽力し、スマートフォンを中心に対応デバイスも増えつつあるが、シスコシステムズ 業務執行役員 情報通信産業事業統括 システムズエンジニアリング本部長の吉田宏樹氏は「付加価値の高いサービスを実現するには、ICTインフラにはまだ課題がある」と話す。
5G時代には全ての通信が5Gに取って代わるわけではなく、Wi-Fiや固定回線も併存する。その中で「複数のアクセス手段を統合的に管理して、どのようにポリシー管理するかは未確定」と吉田氏。5Gの特徴でおなじみの「低遅延」は、コンピューティングリソースをユーザーやデバイスに近い場所に設置するものだが、最適な設計方法やマネジメント方法の定義も必要だとする。
インフラ自体が仮想化、オープン化されることで、攻撃にさらされることも増えるため、それに向けたセキュリティアーキテクチャも必要になると吉田氏は続ける。
用途に応じてネットワークを仮想的に分割するネットワークスライシングも、単に分割するだけでなく、「端末からアプリまで本当の意味でエンドツーエンドを担保するには、もう少し課題がある。アプリレベルで可視化することも求められていく」とする。
シスコはこれまでも、企業と通信事業者のネットワークを連携させるソリューションを支援してきており、「いいところまで来たと思っている」(吉田氏)が、これをさらに一段上のレベルに上げる取り組みが、5Gショーケースとなる。
中川氏は「ビジネスの成長性において、日本の5G市場は最も注目されているマーケットだ」と評価する。特に5Gのユースケースを創出している点で、グローバルでも「日本はパイオニアだと位置付けられている」という。「5Gのユースケースも含め、これだけ本格的にエンドツーエンドのショーケースを開設するのは日本が初めて。ユースケースを創造することがグローバルでも期待されているので、積極的に発信していきたい」と中川氏は意気込みを語った。
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