AppleがApp Storeの手数料を“半額”に下げる狙い アプリ開発者に与える影響は?石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)

» 2020年11月21日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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根強い大手デベロッパーのApple批判、解決の道はあるか?

 Appleが、App Store Small Business Programを導入した背景には、30%の手数料に対し、デベロッパーの不満がくすぶっていることがある。その代表例といえるのが、Epic Gamesの「フォートナイト」がApp Storeから削除されたことだ。経緯や理由は他の記事が詳しいが、App Storeの手数料などに不満を持っていたEpic Gamesは、自社の独自課金システムをアプリ内に導入。これが規約に反したとして、8月にApp Storeからアプリそのものが削除された。AppleとEpic Gamesの戦いは訴訟問題にも発展し、現在も係争中だ。

 同様に、サブスクリプション型の音楽ストリーミングサービスを提供するSpotifyも、Apple Musicを開始したAppleに対し、たびたび批判を繰り返している。30%の手数料がかからないApple Musicに対し、自社が競争上不利な立場に立たされているというのが同社の主張だ。

Apple Epic Gamesは、フォートナイト内でかつてのAppleのCMをパロディー仕立てにした映像を流し、痛烈に同社を批判した

 Epic GamesやSpotifyのような“超大手”以外でも、30%に対する評価は複雑だ。先の大手企業に所属する開発者は、「面倒なことを考える必要なく、アプリを世界中に展開でき、決済の後始末をしなくていいという視点で考えると、それほど高くはない」との見方を示す。一方で、「iモード時代を知っていると(iモードの公式サイトは手数料が9%だった)、やはり高いという印象がある」(同)。「特に日本の場合、今のユーザーがプラットフォームのプッシュであまりコンテンツを選ばなくなってきている」(同)ことも、割高感を感じさせる一因になっているようだ。

Apple グローバルでアプリを流通させることができ、レコメンドもしてくれる上に決済の手間が少ないため、30%でも安いと評価するデベロッパーがいることも事実だ

 AppleのApp Store Small Business Programには、こうした批判をかわす狙いもありそうだ。実際、適用されるのは売り上げの小さいデベロッパーだが、Appleの説明通りなら、大多数がその恩恵にあずかれるため、評価する声は多い。逆に超大手のデベロッパーは、数の上では少数派になり、業界を代表してAppleを批判するという大義名分が成り立ちにくくなる。収益的なダメージを抑えつつ、デベロッパーを味方につけるという意味で、非常に戦略的な値下げといえる。もちろん、先に挙げたように、App Storeのエコシステム自体も活性化できる。

 これに対し、Epic Gamesのティム・スウィーニーCEOは米国でのイベントで、「開発者を分断して、征服する皮肉な策略」とApp Store Small Business Programを批判。Spotifyも、「AppleのApp Storeポリシーが恣意(しい)的で気まぐれなものであることをさらに示している」との声明を発表したことが報じられている(THE VERGEより)。

 こうした声にAppleが応えるかどうかは未知数だが、超大手デベロッパーの一部の不満を解消するには、別の対策も必要になる。一定の売り上げを超えた分を割り引くボリュームディスカウントや、地域限定で配信する場合の手数料を抑えるなど、小規模デベロッパー以外が恩恵を受けられる踏み込んだ対応が求められるかもしれない。

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