ドコモの激安「ahamo」で携帯業界に激震も、“料金プラン”扱いには疑問石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2020年12月05日 08時05分 公開
[石野純也ITmedia]

他社比較でも優位性のある料金プラン、投入の狙いは若年層の獲得にあり

 20GBに、5分の音声定額が付いて2980円という料金水準は、大手キャリアのメインプランとしては“激安”だ。しかも、5Gまで使えて国際ローミングは無料だ。他社のサブブランドはおろか、MVNOとの比較でも優位性がある料金プランといえる。井伊氏も、「競争戦略でこの料金をつけたが、少なくとも他社に勝てる価格だ」と自信をのぞかせた。

ahamo 「他社に勝てる戦略」と自信をのぞかせた井伊社長

 実際、10月にKDDIが発表したUQ mobileの「スマホプランV」は、20GBで料金が3980円と、ahamoより1000円高い上に、音声通話定額は付かない。ソフトバンクがY!mobile向けのプランとして発表した「シンプル20」は、10分間の音声通話定額が付くものの、20GBで料金は4480円になり、ドコモのahamoより1500円高くなる。

ahamo UQ mobileの20GBプランは3980円で、音声通話定額は付かない
ahamo Y!mobileは10分間の通話定額が付くものの、料金は4480円とさらに高い

 MNOでは、楽天モバイルの「UN-LIMIT V」がahamoと同額の2980円で、データ通信は使い放題と、唯一スペック上はドコモをリードしているものの、エリアには大きな開きがある。楽天モバイルはユーザーのデータ通信量が多く、他キャリア平均の2倍というが、現状では15GB前後といったところ。“ドコモ品質”のエリアや速度で20GB使えて価格が同じなら、あえて新興キャリアの楽天モバイルを選ぶ理由は少なくなる。

ahamo 楽天モバイルの2020年度第3四半期決算説明会の資料より。楽天モバイルユーザーの利用データ量は他キャリアの2倍としており、他のMNOの平均値は、総務省が2020年3月に公表している「我が国の移動通信トラヒックの現状」で約7GBとされている。つまりその2倍の14〜15GB程度が楽天モバイルの平均利用データ量であることが分かる
ahamo 楽天モバイルは同額の2980円で、データ容量は無制限。ただし、エリアはドコモと比べて大きく見劣りする

 MVNOも、例えばIIJのIIJmioは、12GBの「ファミリーシェアプラン」が音声通話付きで3260円で、容量、価格ともにドコモのahamoには及んでいない。mineoには20GBプランが用意されているが、こちらの価格はドコモ回線を使うDプランで4680円と、ドコモより1700円高く、音声通話定額が付かない点も差がある。

 ahamoを投入した背景には、20代のユーザーを取り逃していたドコモの焦りがある。井伊氏は「ahamoは中容量の若いお客さま、具体的には20代の世代がターゲットになるが、当社はこの層に大変弱い。他社にどんどん取られているし、そこにピッタリのプランがなかった」(同)と話す。

ahamo ターゲットはデジタルネイティブ世代の20代で、同世代の若手社員がプラン内容を検討したという

 確かに、ドコモは平均トラフィックが他社に比べて低い。2019年4月にギガライトを発表した際には、実に4割ものスマートフォンユーザーが、1GB未満の最低料金で済むことが明かされていた。データ使用量の多い、若年層のユーザーを取りこぼしていなければ、この割合はもっと低くなっていたはずだ。井伊氏が「ギガホ、ギガライトで申し上げると、大層の方が低容量」と語っていたのも、それを裏付ける。

 若年層の獲得が進まないと、ドコモユーザーの人口ピラミッドがいびつな形になる。低容量のユーザーだけが大量に残ることになれば、将来的に、ドコモの収益性は悪化する。「緊急的にでも20代の方を取り戻さないと、われわれの10年後、20年後にそこだけが低くなってしまう」(同)ことに対し、危機感を持っていたというわけだ。政府からの要請で新設したかのように見える20GBプランだが、「ドコモにとって切実な競争戦略上の打ち手」(同)だったともいえそうだ。

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