20GBに、5分の音声定額が付いて2980円という料金水準は、大手キャリアのメインプランとしては“激安”だ。しかも、5Gまで使えて国際ローミングは無料だ。他社のサブブランドはおろか、MVNOとの比較でも優位性がある料金プランといえる。井伊氏も、「競争戦略でこの料金をつけたが、少なくとも他社に勝てる価格だ」と自信をのぞかせた。
実際、10月にKDDIが発表したUQ mobileの「スマホプランV」は、20GBで料金が3980円と、ahamoより1000円高い上に、音声通話定額は付かない。ソフトバンクがY!mobile向けのプランとして発表した「シンプル20」は、10分間の音声通話定額が付くものの、20GBで料金は4480円になり、ドコモのahamoより1500円高くなる。
MNOでは、楽天モバイルの「UN-LIMIT V」がahamoと同額の2980円で、データ通信は使い放題と、唯一スペック上はドコモをリードしているものの、エリアには大きな開きがある。楽天モバイルはユーザーのデータ通信量が多く、他キャリア平均の2倍というが、現状では15GB前後といったところ。“ドコモ品質”のエリアや速度で20GB使えて価格が同じなら、あえて新興キャリアの楽天モバイルを選ぶ理由は少なくなる。
MVNOも、例えばIIJのIIJmioは、12GBの「ファミリーシェアプラン」が音声通話付きで3260円で、容量、価格ともにドコモのahamoには及んでいない。mineoには20GBプランが用意されているが、こちらの価格はドコモ回線を使うDプランで4680円と、ドコモより1700円高く、音声通話定額が付かない点も差がある。
ahamoを投入した背景には、20代のユーザーを取り逃していたドコモの焦りがある。井伊氏は「ahamoは中容量の若いお客さま、具体的には20代の世代がターゲットになるが、当社はこの層に大変弱い。他社にどんどん取られているし、そこにピッタリのプランがなかった」(同)と話す。
確かに、ドコモは平均トラフィックが他社に比べて低い。2019年4月にギガライトを発表した際には、実に4割ものスマートフォンユーザーが、1GB未満の最低料金で済むことが明かされていた。データ使用量の多い、若年層のユーザーを取りこぼしていなければ、この割合はもっと低くなっていたはずだ。井伊氏が「ギガホ、ギガライトで申し上げると、大層の方が低容量」と語っていたのも、それを裏付ける。
若年層の獲得が進まないと、ドコモユーザーの人口ピラミッドがいびつな形になる。低容量のユーザーだけが大量に残ることになれば、将来的に、ドコモの収益性は悪化する。「緊急的にでも20代の方を取り戻さないと、われわれの10年後、20年後にそこだけが低くなってしまう」(同)ことに対し、危機感を持っていたというわけだ。政府からの要請で新設したかのように見える20GBプランだが、「ドコモにとって切実な競争戦略上の打ち手」(同)だったともいえそうだ。
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