―― 先ほどのお話だと、携帯電話はかなりとがった商品が中心に売れていましたが、スマート家電では売れ筋にどういった傾向があるのでしょうか。
近藤氏 (世界の)ガジェットだけではなかなかIoTが浸透しなかったのが、スマート家電を+Style自身で始めたきっかけです。毎日に使うものがIoT化されていなければという観点で、自社商品をやり始めました。そのため、変わったものというより、むしろベーシックな電球や家電リモコン、開閉センサー、コーヒーメーカーなどが売れています。世界中のIoTを扱うコーナーは確かに変わったものが売れていますが、オリジナルはベーシックで、元からそれを狙っていました。ベーシックでIoTのよさを知っていただき、世界中のIoT製品を買っていただくというのがわれわれのビジネスモデルです。
―― 全体を通してですが、コロナ禍の影響は何かありましたか。近藤さんと言えば、海外展示会で爆買いしているイメージがありますが(笑)、今年(2020年)はほとんどがなくなってしまったと思います。
近藤氏 やっぱり影響はありますね。実際の物を見ないと、なかなかよさが分かりませんから。Web会議だけとなると、難しいところがあります。今年で言うと、1月のCESはあったので、そこでいくつか見つけることはできましたが、来年(2021年)はWeb開催になってしまうので少し心配です。香港のエレショー(香港エレクトロニクス・フェア)なども、商材発掘の場になっていました。
―― 販売面での影響はいかがですか。
近藤氏 特にありません。立ち上げてからまだそこまでたっていないこともあり、コロナの影響より、認知の伸びの方が勝っている状況です。家中商品が10%、20%上がっているといわれていますが、売上の個数では去年(2019年)と比べて5倍になっています。コロナの影響は内数に入っている感じですね。
―― 5倍は大きいですね。
近藤氏 やはり、よく知ってもらえるようになったのが大きいですね。いろいろなところに取材いただき、露出が増えました。もちろん、安くIoTの商品が手に入るというのはありますが、ようやくスマートフォンで家電をコントロールできるのが便利という認知が広がり、その中の選択肢の1つとして+Styleを選んでいただけるようになったのだと思います。+Styleのオリジナル家電は、今だとSKUが18ありますが、こんなにラインナアプの広いスマートホームメーカーは他にないんじゃないでしょうか。大体が電球だけだったり、プラグだけだったりしますからね。
―― そういったものを取りまとめて、さらにスマートフォンもとなると、月額料金でいくらというビジネスモデルも成り立つような気がします。サブスクリプション型についてのお考えを教えてください。
近藤氏 サブスクリプションに必要な要素は何かというと、一般の方がその商材をよく理解しているか、その商材にとてつもない影響力があるかです。どちらか、もしくは両方がないものには、サブスクリプションが成り立ちません。例えば、Netflixだと映画が見放題、KINTOなら車が乗り放題でみんなが分かります。ただ、スマートホームだと、スマートホームとは何かというところからのスタートになってしまう。営業力があれば、いくらでも説明できるので、それを補えるかもしれませんが、まず体験していただく、理解していただくというところからだと、ワンショットからで、できるだけ安い価格でスタートしていくことが必要になります。
今後進めていく中で、便利に使えるよう、いくつかをセットにしてサブスクリプションにする可能性はありますが、今は時期尚早だと思っています。何か買うために、月額契約しなければいけないというのも、今のニーズにはちょっと合っていないと思います。
IoT関連製品に特化した+Styleが、SIMロックフリーのスマートフォンを本格的に販売し始めたのは、少々意外なニュースだった。普段同社が販売する製品とは違い、競合も多く、差別化が難しいのではないかと感じたからだ。ただ、TCL 10 5Gを独占的に先行販売するなど、話題性をしっかり作ってきたのは同社ならでは。ふたを開けてみると、売れ筋も一風変わっていて、一般的な販路とのユーザー層の違いを感じさせた。
詳細は明かされていないが、近藤氏は「ビックリするようなものを準備している」と語っており、TCL 10 5Gの価格のように、特化した何かを持った端末が発売されることも期待できる。+Styleならではのラインアップに注目しておきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.