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» 2020年12月11日 14時27分 公開

ドコモとソフトバンクはいまだ「スマホ向けeSIM」に消極的 KDDIは一歩前進 (1/2)

総務省が12月8日、第2回の「スイッチング円滑化タスクフォース」を開催した。第2回では、eSIMの促進について、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルに対してヒアリングを行った。eSIMを提供する上での課題として「セキュリティ上の懸念」「ユーザーの利便性を損なう恐れ」が挙がっている。

[田中聡,ITmedia]

 総務省が12月8日、第2回の「スイッチング円滑化タスクフォース」を開催した。

 同タスクフォースでは、総務省が掲げる「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を踏まえ、事業者間の乗り換えをより円滑にするための施策を検討していく。

 第2回では、eSIMの促進について、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルに対してヒアリングを行った。

 eSIMは、遠隔でSIMの情報を書き込める仕組み。物理SIMを受け取る必要がないため、オンラインで契約から開通までの作業が完結する。ユーザーにとっては、スムーズにキャリアと契約できることがメリットとなる。eSIMに対応するスマートフォンも、iPhoneやPixelを筆頭に増えつつある。

eSIM iPhone 12シリーズを始め、eSIMに対応するスマートフォンも増えつつある

 ただ、日本でeSIMサービスを提供しているのは、キャリアでは楽天モバイルのみで、MVNOでは自らSIMを発行できる「フルMVNO」の形態を持っているIIJ(インターネットイニシアティブ)やソラコムなどに限られる。KDDIはiPhone向けに「海外データeSIM powered by GigSky」を提供していたが、2020年11月30日にサービスを終了している。

セキュリティ上の懸念あり?

 ドコモ、au、ソフトバンクはいまだスマートフォン向けにはeSIMサービスを提供していない。その理由として「セキュリティ上の懸念」と「ユーザーの利便性を損なう恐れ」が挙がっている。

 セキュリティの懸念についてはドコモとソフトバンクが主に主張。eSIMの通信に必要なプロファイル情報が漏えいした場合に、クローンSIMが作成され、不正に利用されてしまう恐れがあるというものだ。

 ドコモは、現在取り扱っているeSIM対応のタブレットなどは、セキュリティの安全性を確認した上で提供している。一方、GSMA認証を取得したeSIMベンダーは2020年11月時点で52社と乱立しており、メーカーがeSIMベンダーを選定していることから、物理SIMよりもバックドアなどのセキュリティリスクが高まっていると指摘する。

eSIM ドコモの資料より。eSIMは端末メーカーがeSIMベンダーを選定するため、キャリアでセキュリティを担保できないとしている

 ソフトバンクは、GSMAが策定した標準仕様にのっとっていれば一定のセキュリティが担保されるが、多様な端末や事業者がeSIMを取り入れる中、本人確認などで適切な運用がなされないと、セキュリティリスクが高まるとしている。加えて、オンライン特有の不正契約のリスクも高まると指摘する。データカード契約で大量にSIMを入手、アカウントを作成してキャンペーン特典や還元を不正に受ける事案を例に出し、本人確認が不十分だと、eSIMでも同じようなことが起こりうると指摘する。

eSIM ソフトバンクは、プロファイルの不正入手とオンラインでの不正契約を懸念している

 KDDIは、QRコードの読み取りを必要としない専用アプリを用いることで、不正利用のリスクを最小化できるとの考え。ちなみに、アプリを用いたeSIM契約は、ソラコムがiOS向けに採用している。一方、プロファイルのダウンロードに必要なQRコードが第三者に渡る恐れはあるが、物理SIMでも端末からSIMが抜き取られる恐れがあり、双方にリスクがあるとしている。

eSIM KDDIは、プロファイルの不正利用は防げるとのスタンス

 既にeSIMサービスを提供している楽天モバイルは、セキュリティ上は問題ないとの認識。GSMAセキュリティ認定スキームに準拠したデータセンターとサーバにeSIMのプロファイルを格納し、暗号化をすることで、プロファイルを安全にダウンロードできるとしている。eSIMと物理SIMの差分は「プロファイルのダウンロード」だが、暗号化によって物理SIMと同程度のセキュリティは担保できると説明する。実際、これまでセキュリティに関して楽天モバイルのeSIMで問題は起きていないという。

eSIM 楽天モバイルの資料より。GSMAの仕様に準拠することで、セキュリティは担保できるとしている

QRコード読み取りとWi-Fi環境がネックに

 KDDIが懸念しているのはユーザビリティの面だ。eSIMのプロファイルをダウンロードする際にQRコードを読み取る必要があるが、これはeSIMを使うスマートフォン以外のデバイスに表示させる必要がある。ダウンロードをする際にWi-Fi環境が必要になることもハードルに挙げる。また、eSIMのデータは端末内部に保存されているが、誤操作で消去してしまうリスクも指摘する。

eSIM KDDIの資料より。eSIM設定までのハードルが高いことを課題に挙げている

 楽天モバイルも、QRコードとWi-Fi環境の件については「お客さまが初めてeSIMを利用するケースがあったので、分かりにくさはあった」と話すが、「チラシやマニュアルなど、お客さまが設定するにあたって、確認できる素材を見直すことで、営業上の問題もなくなっている」とのこと。ユーザビリティに関する問題は改善しつつあるようだ。

 また楽天モバイルは、本人確認にeKYCを導入しており、「eSIMとの組み合わせにより、利用開始まで2日以上かかっていた開通作業が即時になる」とメリットを挙げる。即時開通の体制を24時間取っていることで、「ショップが閉店している夜間や早朝でも対応できる」と、利便性の向上に貢献できていることを強調した。

eSIM 楽天モバイルの資料より。eSIMとeKYCを組み合わせることで、即時開通が可能になる

 ドコモは、オンラインでeSIMの手続きを完結させるためにはeKYCが必須としている。eSIMを利用しなければ物理SIMと同様、本人確認書類のアップロードや郵送によるやりとりが発生するため、利便性は向上しないとの考えだ。

 ソフトバンクは、eSIMの契約はオンラインが前提となるため、ユーザーに一定のリテラシーが求められ、初期設定や不具合発生時のサポートで、運用が煩雑になる恐れを指摘した。

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