iPhone 12 Pro/Pro Maxのみの対応なんだけれども、10月のApple Eventで約束された「Apple ProRAW(以下、ProRAW)」がiOS 14.3でやってきた。読み方は「プロロー」、平仮名で書くと「ぷろろー」、ちょっと間抜けな感じでかわいい。
それはどうでもいいんだけど、そもそもRAWとは何か。デジタルカメラに詳しい人なら周知のことだけど、そうじゃない人のためにちょっとだけ解説。
解説はいらん、さっさと使い方や効果をって人は次の項は読み飛ばしてください。
カメラはイメージセンサーからのアナログ信号をデジタルデータに変換し、それを元に色や明るさやディテールやその他もろもろを調整して写真として成り立つ画像を作り出し(この作業を「現像」と呼ぶ)、JPEGやHEIF(heic)といった出力用の汎用(はんよう)フォーマットで保存する、という一連の作業を行っている。
そして「現像処理」をする前の元のデジタルデータを「生のデータ」あるいは「未処理のデータ」ということで「RAWデータ」と呼んでいるのである。
われわれがiPhoneの画面で見ている写真は全て「現像」済みのもの。現像にはデータを解析して、写真の色合いや階調、コントラスト、ディテールのシャープネス、ノイズ低減、肌の色、空の色やその他もろもろの細かいところを決定して、最終的な画像を生成する。このようにややこしい処理が必要で、スマートフォンの画質の多くはそこの処理で決まると思っていい。
最終的な画像が生成されたら、それに不要な成分を削除してデータ量を減らし、さらにJPEGやHEIFという方式で人間の目に分からないように巧妙かつ絶妙にデータ量を落として圧縮して記録している。だから1200万画素ながらファイルサイズは1〜4MBに収まっている。
対してRAWデータは現像や圧縮をする前の、色や階調やその他もろもろの情報が全て残った状態で、しかもデータ圧縮もしないので、ファイルサイズは1枚あたり20〜30MBと超デカいのだ。下手したらJPEGやHEIFで保存した時の10倍以上にもなる。
そんなRAWデータだが、アップルは今回わざわざ「Pro」をつけた「ProRAW」という名前にした。何が違うのか。
普通のRAWデータは「イメージセンサーの出力をデジタル化したデータ」をファイルにしたもの。でも、iPhoneはそういうわけにはいかない。周知の通り「コンピュテーショナルフォトグラフィー」のたまもので、毎回「複数枚の撮影をして解析して合成している」から、1枚分のRAWデータだけでは済まないのだ。
そこで、詳細は分からないけれども、イメージセンサーからの複数の出力を合成したけど現像処理はしてない段階のデータを「RAWデータ」とし、一般的なRAWデータとは違うという意味で「ProRAW」と付けたのだろう。
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