ahamo対抗プランをいち早く打ち出した日本通信 なぜここまでの値下げが可能なのか?MVNOに聞く(2/4 ページ)

» 2021年01月29日 10時39分 公開
[石野純也ITmedia]

音声を原価ベースで調達できるから安くできる

福田尚久 オンラインでのインタビューに答える福田氏

―― そのahamo対抗の合理的20GBプランですが、20GBで1980円は非常に安いと思います。まず、なぜこの金額がつけられるのかを教えてください。

福田氏 音声を原価ベースで調達できるから。シンプルにそれだけです。データ通信の仕入れの条件は、基本的に変わっていません。一番大きいのは音声で、そこが変われば、あの金額でやっても十分な収益を得られます。それがあるからこそ、音声部分の卸料金が高すぎるということは、ずっと言い続けてきました。

 内容的な詳細はありますが、大臣裁定をよく読んでいただき、公表されたいるもの見れば、単純に卸価格は8割下がります。その違いです。

―― 確かに音声通話が下がれば、データ通信は帯域を借りているだけなので、極端な話、同じ金額で100GBプランにしてユーザーを詰め込むこともできます。

福田氏 それはそうですが、100GBにしたらみんな使ってしまうので(笑)。20GBができたのは、イネイブラー(MVNE)として25GBのデータプランを結構な数、出してきたからです。その経験値がないと難しいかもしれませんが、うちにはその経験値がある。そうなると、あとはトータルコストに占める音声通話が最大のボトルネックになります。何かというと、基本料が高すぎる。その部分があるので、積み重ねていくと結構な金額になってしまいます。

―― 基本料は音声通話を使うだけでかかるので、データ通信部分が安くなればなるほど、比率は上がりますね。

福田氏 卸約款が公開されていますが、ドコモは(割引適用後で)666円です。他も、大体そんな感じの金額です。大臣裁定で言っているのは、データ通信と同額ということで、そちらに関しては80円前後で提供されています。

 何をもって基本料なのかということは、直接交渉してきました。回線見合いコストとして、通信を使っていてもいなくてもかかるコストがあります。HLRやHSS(加入者管理機能)で管理するといったコストは、確かに使っていてもいなくてもかかります。後は、音声が従量課金、データは帯域幅での課金になっていますが、それと比べると、回線見合いコストが700円弱と異様に高くなっていました。音声と言いつつも、実はそこが非常に大きなところです。

大臣裁定が履行されないことはあり得ない

―― ただ、ドコモはまだ原価ベースの料金を出していません。

福田氏 心配されている株主がいらっしゃるので新年にブログを書きましたが、僕は心配していません。大臣裁定が履行されないのは、あり得ないからです。時間の問題はあるかもしれませんが、原価ベースのコストが出ないことはない。ここは、妥協してやるつもりはありません。

日本通信 NTTドコモは、大臣裁定が指定した期日内の2020年12月29日までに新たな音声卸料金を提示しなかった

―― そのまま引っ張り続けてしまうと、日本通信が困ってしまうことにはならないでしょうか。

福田氏 それをやったら、さすがに総務省が命令を出すと思います。電波の割り当てにも影響しますから。剛腕な総務大臣の命令を聞かないわけにはいかないと思いますね(笑)。

―― ここまで対抗値下げをすぐにできるのは、ドコモと以前から個別に交渉していたからということですね。

福田氏 少なくとも(MNOとの)交渉は必要になります。ドコモがどう考えているかですが。データ通信の場合は接続約款を出しましたが、なぜか同じ金額の卸金額約款も出し、多くのMVNOはそちらでやっているようです。

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