主にMNOが提供しているキャリアメールについて、総務省は「法令を踏まえた本人確認を行った上で提供している」「信頼性の高いサービス」として位置付けている。スマホの普及に伴いニーズは少なくなってきており、MNOが3月に始めるオンライン専用料金プラン(ブランド)では非対応とすることで月額料金を抑えている。
一方で、同省が行ったアンケート調査を始めとして、複数の調査においてキャリアメールのアドレスが変わることを理由にMNPをためらう人が一定の割合で存在することも明らかとなっている。MNPの利用を促進するためには、このような「キャリアメールがないと困る」という人に何らかの対応をする必要がある。
総務省の行ったWebアンケートでは、MNPを考えない理由としてメールアドレスが変わることを挙げた人が20.3%いたという。SNSでは「キャリアメールは不要」という声も大きいが、キャリアメールがどうしても必要という人もそれなりに多いことは認識すべきなのだろう
そこで、同省は今回の方向性案で2022年夏までをめどにキャリアメールの「持ち運び」を実現する方針を盛り込んだ。実現方法などは以下の通りで、論点案で示されたものを踏襲している。
- 持ち運びは「希望制」とする(不要な場合は放棄しても構わない)
- 持ち運んだメールのサービスは、転出元キャリアが運営する(変更元管理方式)
- サービスの開発と運営に一定のコストが想定されるので、合理的な範囲内での利用料金の徴収(有料化)を認める
- サービスの方式(規格)はできる限り統一する
- MVNOを含む全てのキャリアがオープンかつ公平に利用できるようにする
- サービスについてユーザーに十分な周知を行う
- サービスの拡張や発展も考慮に入れ、サービスの在り方は不断で検討し続ける
全てのキャリアがオープンかつ公平に利用できるようにする方針は、NTTドコモの「ahamo(アハモ)」、auの「povo(ポヴォ)」、ソフトバンクの「LINEMO(ラインモ)」といったオンライン専用プランでのキャリアメールを利用する“余地”を残すものだ。これらのオンライン専用プランについて、キャリアメールが利用できないことを懸念する声に応えたのだろう。
キャリアメールの「持ち運び」に関する方向性案
現状のキャリアメールは、キャリアごとに仕様の差異が多い。そのことに伴い、持ち運びに一定の制約が生じる可能性がある。タスクフォースの下で行われた事業者間協議では、各MNOが持ち運びに関する意見や制約事項を説明している。簡単にまとめると以下の通りだが、制約事項に対する「すり合わせ」も課題となりそうだ。
- FOMA(3G)契約のユーザーにはキャリアメールの持ち運びを提供しない→持ち運び前にLTE(Xi)または5Gへの契約変更が必要
- メールの送受信にIMAP方式を用いる場合、IMAPメーラーを搭載していない一部のケータイ(フィーチャーフォン)では利用できない
- CDMA 1X WIN(3G)契約でもキャリアメールの持ち運びは提供可能
- 変更元管理方式を前提とすると、ケータイではサービスを利用できない
- Webメールとしてサービスを提供すれば、スマホへの乗り換えでも利用できる
- キャリアによって対応可否が分かれる部分については、代替策を含めた取り扱いをキャリア間で統一すべき
- アドレスの新規割り当てを終了したドメイン(※2)については対応を避けたい(新しいドメインのアドレスへの移行を促す方針)
- 旧J-PHONE由来:jp-*.ne.jp(「*」は旧地域会社に由来)
- 旧ボーダフォン由来:*.vodafone.ne.jp(「*」は旧地域会社に由来)
- 旧DDIポケット/ウィルコム由来:pdx.ne.jp、xx.pdx.ne.jp、willcom.com、wcm.ne.jp、y-mobile.ne.jp
事業者間協議において、対応要件に関してMNOから出た意見
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