KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏はpovo2.0でユーザー層が2つに分かれていくと予想する。1つは、60GBや150GBの大容量をまとめて買ったり、24時間使い放題のトッピングを都度追加したりする「アクティブに使う層」(同)。もう1つは、「eSIM(を取りあえずインストールしておく)だけのお客さま」だ。60GBのトッピングは有効期間が90日あるため、約1カ月でならすと料金は20GB、2163円になる。150GBも同額。現行のpovo1.0より20GBあたりの料金が安くなるため、ヘビーユーザーが増えるというわけだ。
一方で、使わなければ料金は0円で維持できる。180日間の間にトッピングを最低1回つけるなど、契約を維持するための条件はあるものの、いざというときのためのサブ回線として契約する人もpovo1.0のときよりは確実に増えるはずだ。こうした使い方は、複数のプロファイルを端末内にインストールしておけるeSIMと相性がいい。月額料金がかからない料金プランは一定の人気があり、KDDI傘下のビッグローブが始めたdonedoneの「エントリープラン」は、一時SIMカードが不足するほど申し込みが殺到した。povo2.0でも、こうした使い方をするユーザーが増える可能性は高い。
ただ、どちらのユーザーが増えても、KDDIにはプラスになる。1GBや3GBのトッピングは確かに現行のpovo1.0より安いが、一方で大容量のデータ通信を使うユーザーも集まりやすい立て付けなっているからだ。実際、高橋氏は「povo1.0はトッピングという形で始めたが、アクティブなユーザーのARPU(1ユーザーあたりからの平均収入)は結構高かった。povo2.0も契約をしたあとトッピングを盛り上げていくことで、結果的に多様な使い方をしていただければ、減益にはつながらない」と語っている。
Circles Asiaが他国で提供しているサービスでも、同様の傾向があるようだ。同社との提携を決め、KDDI Digital Lifeの設立を発表した2020年10月の決算説明会では、「シンガポールの例を見ると、MVNOだから安いのではなく、MNOよりARPUが高いケースもある」(同)と語られていた。オンライン専用のため、ベースの料金は抑えられているが、使った分だけ支払うユーザーが増えれば、その分だけ収益を増やすことにつながる。
サブ回線として使うユーザーは、もともと月額料金を払うユーザーとはバッティングしないため、契約者の上乗せになる上に、何らかのトリガーがあればアクティブユーザーに変わる可能性もある。そのきっかけになりそうなのが、povo2.0のスタートに合わせて展開する、「ギガ活」と銘打ったキャンペーンだ。これは、小売店やスタートアップ企業との協業で、買い物をしたり、特定のサービスを発見したりするだけでデータ容量をもらえる仕組みのこと。例えば、ウエルシアや丸亀製麺、ローソンでなどでau PAYを使って500円以上支払うと、3日間有効な300MBが付与される。
他にも、シェアリングサービスを提供する各社と提携し、「FIND povo」と名付けた企画を展開。第1弾として、電動自転車や電動キックボードを提供するLUUPや、傘をシェアするアイカサ、モバイルバッテリーを貸し出すmochaと手を組む。こちらは、街中やバーチャル空間でpovoのキャラクターを見つけるとデータ容量がもらえるキャンペーンで、スタートアップ各社にとってはプロモーションを兼ねた仕組みといえる。
こうしたキャンペーンを使って無料で手に入れたデータ容量を使い、povo2.0を使うようになれば、ゆくゆくはARPUの高いアクティブなユーザーに“化ける”かもしれない。また、データ容量を付与する形で店舗への送客ができるようになれば、KDDIにとって新たな収益源になる可能性もある。この手のマーケティングにはポイントプログラムが使われるのが定石だが、トッピングのデータ容量に置き換えたところはpovoならでは。ユーザーにどのように受け入られるのか、注目しておきたい取り組みだ。
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