ドコモの「エコノミーMVNO」で“弱点”解消なるか 対サブブランドでは収益性が課題石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2021年10月09日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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対サブブランドでは収益性が課題、NTTコムの子会社化も鍵に

 ドコモにとっての課題は、収益性といえる。ドコモの料金カテゴリーとはいえ、実態としてはユーザーを自らMVNOに送り出していることになるからだ。UQ mobileはKDDIが、Y!mobileはソフトバンクがそれぞれ運営しているため、ユーザーが支払った金額はほぼ全額が2社の収益としてカウントされる。これに対し、エコノミーMVNOはユーザーの支払先がMVNOになり、通信料としてはドコモに1円も入らない。

 エコノミーMVNOに参画するMVNOは、ドコモのネットワークを使っているため、回線の貸出料として間接的には収入を得られるが、MVNOは1ユーザーあたりいくらという形で対価を支払っているわけではない。相互接続では、ユーザー数やトラフィックの量に応じて、帯域単位で回線を借りている形だ。エコノミーMVNOの取り組みでユーザー数が増えれば、そのままだとキャパシティーが不足するため、より多くの帯域を借りることにはなるが、少なくとも、MVNOと同料金でドコモ自身が低容量のプランを提供するより収益性は下がる。

エコノミーMVNO ドコモが公開しているMVNO向けの資料。ネットワークの貸出料は、ユーザーあたりではなく、帯域あたりになるため、エコノミーMVNOを契約するユーザーが増えると収益性は悪化する

 また、いったんドコモを出ていくことになるため、データ通信を多く使うようになったユーザーに対し、ahamoやギガホ/5Gギガホなどを勧めにくくなるのも、今後の課題になりうる。アップセルがしづらくなるということだ。例えば、エコノミーMVNOとしてトーンモバイルを契約した子どもの年齢が上がり、より大容量のプランにくら替えしようとした際にもMNPが必要になる。ドコモ内の料金プラン変更で済めばオンラインでも簡単にできるが、MNPの手続きが間に入ると、他社に流出してしまうリスクも高まる。

 もっとも、収益性の問題は、NTTコミュニケーションズの子会社化である程度解消される。子会社化されれば、OCN モバイル ONEを契約するユーザーが増えても、収益はドコモに残るからだ。ドコモグループとして一体的に料金プランをすみ分けていくことも、これまでより容易になる。この関係性は、統合前のauとUQ mobile、ソフトバンクとLINEモバイルに近い。OCN モバイル ONEが事実上のサブブランドになるというわけだ。

エコノミーMVNO スケジュールが遅れているが、NTTコミュニケーションズはドコモの子会社になる予定。MVNOではあるが、より一体感は強まる

 NTTコミュニケーションズの子会社は、他社からの“待った”がかかり、当初のスケジュールより遅れているが、エコノミーMVNOは、この動きを見越した仕掛けといえそうだ。一方で、上で挙げたUQ mobileやLINEモバイルも、結局はKDDIやソフトバンクに統合され、一体的な体制で運営されるようになった。子会社や関連会社とはいえ、会社が分かれていると機動性が落ちるうえに、システムの二重投資でコストもかさむ。エコノミーMVNOだけで競合他社に対抗しきれない場合、ドコモとの統合を含む一歩踏み込んだ対応が求められそうだ。

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