「iPhone 13 Pro」自腹レビュー:プロ用機器としては便利だが、スマホとしての完成度は「13」が上だ(2/3 ページ)

» 2021年11月19日 06時00分 公開
[島徹ITmedia]

iPhone 13 Proのカメラは大型化で撮影範囲も拡大、だが重さなどのマイナス部分も

 個別の要素についてもう少し詳しく見ていこう。まずは、カメラとデザインや重量周りからだ。

iPhone 13 Pro カメラはいずれも1200万画素。上から望遠、超広角、広角カメラだ

 カメラ周りでiPhone 13との最大の違いは、3倍の望遠カメラ(77mm相当)と超広角カメラのマクロ撮影への対応だ。やや遠くの風景を切り取る撮影から、最短約2cmで寄れるなど撮影の幅は大きく広がった。旅行はもちろん、荷物を抑えたい登山やトレッキングで気軽に絶景撮影を楽しむ人にとっては、スマートフォンサイズで撮影範囲を追求したこのカメラは非常に魅力的だ。とにかくカメラ機能だけを重視する人なら、少々重いことなど気にならないだろう。

iPhone 13 Pro 超広角13mm相当
iPhone 13 Pro 広角
iPhone 13 Pro 望遠3倍77mm相当

 望遠は従来の2倍(52mm相当)から3倍(77mm相当)になったことで、ポートレートや風景撮影で使いやすくなった。一方、手元や室内の撮影には使いづらそうに見えるが、実際に使うと広角カメラのセンサー性能の向上と超解像処理により、2倍デジタルズームもかなり高品質だ。撮っている際もズーム倍率の変更や、最短撮影距離に合わせたマクロ撮影とのスムーズな切り替わりを含め、カメラやレンズ性能と「コンピュテーショナルフォトグラフィー」の両方を進化させることで、とにかく利用者に不自由さを感じさせにくいカメラへと進化している。

iPhone 13 Pro マクロ撮影で新500円硬貨を撮影。肉眼ではほぼ見えない、本の上の外周のマイクロ文字「JAPAN」がはっきり見える。桐の花の上に散らされているNIPPONの隠し文字も、解像感の高い中央部のPとOとNは読み取れる
iPhone 13 Pro 広角カメラはiPhone 13と比べレンズが明るくセンサーも大きい。このためか、室内撮影でものっぺりとした印象ではなく、ハイライトもシャドーもはっきりした明るく鮮やかな写真を撮れやすくなった

 動画でもポートレート撮影のような背景ぼかしの撮影や編集を利用できるシネマティックモードは、iPhone 13とiPhone 13 Proのどちらでも利用可能だ。インカメラでも撮影可能だ。この機能、YouTuberなどのVlog用途やショートムービー作成で役に立つだろう。この機能の進化の方向性として、PCの動画編集アプリで作業するような人物の顔だけをぼかすといった作業の自動化も欲しかったが、将来のモデルでの対応に期待したいところだ。

iPhone 13 Pro iPhone 13とiPhone 13 Proのどちらでも使えるシネマティックモード。インカメラを含め、写真のポートレートモードと同様に被写体以外をぼかす撮影が可能になる
iPhone 13 Pro 撮影した映像を編集すると、ピントを合わせる被写体を選べる他、ぼかしの強さも変更できる

 一方で、そこまでカメラにこだわらない人、望遠レンズが必要な人は無理にiPhone 13 Proを選ぶ必要はない。標準の広角レンズでの比較になるが、iPhone 13 Proは確かにレンズが明るくセンサーの画素ピッチが大きくなっているが、iPhone 13も画素ピッチは前機種のフラグシップモデルiPhone 12 Pro Maxと同等に大型化している。

 画質の満足度だけで言えば前機種iPhone 12シリーズやさらに前のiPhone 11でも十分高品質だ。並べて比べれば、やや暗いシーンでiPhone 13シリーズの方は若干階調がやや豊かなのと、ナイトモードも撮影秒数が1秒ほど早いといった違いには気付く。だが、カメラにこだわらない人ならどの製品でも不満を感じることはほぼないだろう。

iPhone 13 Pro iPhoneシリーズの広角カメラにおける画素ピッチ
iPhone 13 Pro iPhone 13 Proのナイトモードで。肉眼では暗闇に近い路地から、奥の明るい大通りの建物を撮影。全体を明るく撮影でき、撮影秒数はほぼ1秒だった
iPhone 13 Pro あえて2世代前のiPhone 11のナイトモードと比較。撮影秒数は3秒かかるが、撮れる写真はiPhone 13 Proとさほど違いはない

 だが、iPhone 13の高級モデルとして、見栄えの少し違うトリプルカメラのiPhone 13 Proを求める人にとっては、カメラ部分が極端に大型化し重量が30gも増したiPhone 13 Proを好意的に受け取れないだろう。重たい分、片手持ちでの操作や、就寝前に本体を持って画面を見るといった用途にあまり向かない。店頭などで短時間操作するぶんにはあまり気付かないだが、リラックスした状態で従来モデルとの差が顕著に出る。

iPhone 13 Pro iPhone 13 Proを側面から撮影。カメラ部が約3.7mm出っ張っているのに加えて、iPhone 12シリーズと比べると厚みも7.65mmと0.2mm厚くなっている

 カメラの出っ張りも約3.7mmと、iPhone 13やiPhone 12シリーズと辺りと比べてほぼ倍の厚みだ。こうなると、大きく厚いカメラ部に合わせて大柄な保護ケースが必要になる。

iPhone 13 Pro 左のiPhone 13 Proと右のiPhone 12 Proを並べてみた。カメラ部の大型化により、デザインも大きく異なっている。通常のiPhone 13のカメラ部は右のiPhone 12 Proに近い
iPhone 13 Pro 左のiPhone 13 Proのように、カメラ部が大きく出っ張っている分、保護ケースのカメラ周りのバンパー部分も厚く大型にならざるを得ない。ケースを含む見た目に納得できるかも重要なポイントだ

 iPhone 13 Proのカメラに魅力を感じる人は、むしろ大柄な保護ケースを着けて持ち歩きたいだろう。ストラップやリング付きの耐衝撃ケースが欲しいぐらいだ。だが、スリムで高性能なiPhoneが欲しかった人にとっては、やや太めのケースにも不満を感じるだろう。

映画も撮れる? 注目のApple ProRes撮影をチェック

 今回iPhone 13 Proシリーズだけがレンズとセンサーをより強化した理由として、専用機能のApple ProRes撮影やApple RAW撮影で編集や現像にある程度耐える、実用的なデータの記録の実現も念頭にあったと思われる。室内や少々薄暗い場所で撮ったデータを編集した際に、すぐに階調の破綻やノイズが目立つようでは使えないのと同じだからだ。

 新機能のApple ProRes撮影を簡単に説明すると、プロの映像制作業務や本格アマチュアの映像制作などで広く使われる、Appleの低圧縮コーデックだ。記録される情報量が多い分、解像感や色の再現性がやや高くなり、編集しても階調が破綻しにくい。その代わりに、記録される容量は通常のHEVCやH.264と比べてはるかに増える。標準カメラアプリで使うには、「設定」→「カメラ」→「フォーマット」から有効化のボタンを追加する。

iPhone 13 Pro 設定でApple ProResを有効にすると、カメラアプリの上部(画像の左下)にProRes撮影との切り替えボタンが表示される

 映像業務に関わる人やこれから映像編集を学びたい人にとっては、iPhone 13 Proを1台買うだけで3種類のレンズ付きのProRes対応機器が手に入るのは魅力的だ。10万円ちょっとで、ProRes 422 HQで不可逆圧縮のイントラフレーム4:2:2 10bitの映像データを撮影できる機器を手に入れるのは難しいからだ。そしてAppleはタイミングよく、10月にProResの編集処理を支援できるM1 Pro搭載MacBook Proも投入したというわけだ。

iPhone 13 Pro iPhone 13 Proと、無償でも使えるDaVinci Resolveですぐに業務レベルの映像編集を学び始められる

 だが、一般の人がProResを使う利点はない。そもそも1分のフルHDで約1.7GB、4Kで約6GBと保存容量が非常に大きく、長時間の動画を撮るとストレージがすぐ満杯になる。用途もFinal Cut Pro やAdobe Premiere、DaVinci ResolveなどMacやPC向けの映像制作や編集がメインだ。画質も、iPhoneで撮って見るだけなら通常の撮影より微妙に解像感が高く見える程度の違いしかない。

iPhone 13 Pro 標準カメラアプリのProRes 4K24P SDRで撮影。編集環境で拡大すれば細部の解像感が良好。ただ、スマホやネット動画で見る程度の用途なら、通常のHEVCやH.264での撮影とさほど違いはない
iPhone 13 Pro 標準カメラアプリのHEVC 4K24P SDRで撮影。iPhoneの画面どころか大画面で見ても画質はProResとほぼ変わらない。見た目の印象と圧縮効率を考えれば非常に圧縮高効の高いコーデックだ

 実際のProResでの撮影は、「FiLMiC Pro」など他社のマニュアルビデオカメラアプリを使うのがメインになるだろう。ProRes 422 HQの他、圧縮率を高めた422やLT、Proxyでも撮影できる。解像度とフレームレートは、フルHD 30/60に対応。iPhone 13 Pro の256GBモデル以上のみ4K 24/30でも撮影できる。色域はRec.709とRec.2020の HLGを選択可能だ。

iPhone 13 Pro 「FiLMiC Pro」ならマニュアル撮影が可能で、Apple ProRes 422 HQの他、422やLT、Proxyでも保存できる

 PCやMacへの転送はUSB2.0のLightningケーブルやAirDropなどを利用する。1GBのデータで計測したところ、WindowsへのLightningケーブルで29秒、MacBook Air相手のAirDropで32秒だった。ProResの用途は長時間の記録撮影ではなく、数十秒から数分のカットを撮り重ねるムービー制作用途向けだ。また、422HQではなく422や3分の2程度まで容量を抑えられる。いくつか撮影したデータを、休憩時間中ぐらいでおおむね転送できるだろう。もちろん、USB3.1などでの高速転送対応や、直接SSDに記録できればベストなのだが。

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