「iPhone 13 Pro」自腹レビュー:プロ用機器としては便利だが、スマホとしての完成度は「13」が上だ(3/3 ページ)

» 2021年11月19日 06時00分 公開
[島徹ITmedia]
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ゲーム向け高速処理と120Hz表示対応だが、120Hz対応タイトル不足

 iPhone 13 Proのみの機能として、ディスプレイの最大リフレッシュレート120Hz表示に対応し、GPUコアも1コアだけだがiPhone 13から増えた。これにより、A15 Bionicの性能だけでなくディスプレイの面でも近年のトレンドをキャッチアップした格好だ。

 A15 Bionicは現行スマートフォンの中でもトップクラスの性能。CPUとGPUともに隙がなく、iPhone 13でもiPhone 13 Proでも現行のスマホ向け高画質ゲームタイトルは難なく動作する。

iPhone 13 ProiPhone 13 Pro Antutu Benchmark V9(画像=左)、Geekbench5(画像=右)

iPhone 13 Pro 3DMARK WildLife Unlimtied

 ゲーミング用途の最大リフレッシュレート120Hz表示は、3Dグラフィックのバトルロイヤル系ゲームで注目の機能だ。120fpsや90fpsの高fps表示だと、周りを見渡す際にチラツキが減って標的を視認しやすくなるほか、移動しながら標的に銃の照準を合わせ続けるなど繊細な操作で違いが出る。このため、人気ゲームアプリが120fpsや90fpsで動くスマートフォンは、勝てるゲーミングスマホとして人気を集めている。

 なお、通常のアプリのスクロールもやや滑らかになる。だが、画面が小さく画面全体を大きくスクロールすることの多いスマートフォンだと、実用アプリで120Hzの利点は少ない。PCやiPadなど大画面の機器は別だが、スマートフォンの120Hz表示はゲーミング用途が主と考えていい。

 だが問題点として、ゲームアプリの120fpsや90fps表示設定を各社スマートフォンで有効にするかどうかを決めるのはゲームメーカー側だ。そして、人気ゲームアプリは提携するスマートフォンメーカーに対して限定、または優先的に120fpsや90fps表示対応を提供する取り組みが増えている。「PUBG Mobile」もいくつかのゲーミングスマホでは90fps表示に対応するが、現在のiPhone 13 Proは90fps設定が用意されていない。

iPhone 13 Pro 「PUBG Mobile」は11月上旬時点でiPhone 13 Proの「90fps」表示に非対応。「極限(60fps)」までしか設定できない

 このため、iPhone 13 Proが120Hz対応で高速なA15 Bionic搭載でも、すぐに人気アプリが120fpsや90fps表示で遊べるわけではない。iPhone 13 Proで人気ゲームの120fpsや90fpsといった表示が提供されるかは、App Storeも運営するApple側とゲームメーカー側の動きが重要となる。

 ちなみに、2021年11月前半時点で「原神」が120fps対応した。だが、もともと60fpsでも高い処理性能を求められるタイトルなので、iPhone 13 Proで120fpsを有効にすると、かなり発熱して常用は難しい。120fps対応はiPhone 13 Proよりも処理性能の高い、M1搭載のiPad Pro向けと考えた方がいい。

iPhone 13 Pro 「原神」はiPhone 13 Proの120fps表示設定に対応。ただし、負荷が高くかなり発熱するので常用するのは厳しい。60fpsでのプレイが無難だ

 あと120Hzで期待したいのは、「メタバース」といったワードでも注目されているVRアプリの対応だ。現在のiPhoneのVR対応アプリは、市販の簡易ゴーグルを装着するものが多いのだが、この表示部分が120fps表示だと映像が滑らかになり快適さが増す。VRの分野は今後また力を入れる企業が増えるかもしれないだけに、120Hzディスプレイの活用も期待したいところだ。

カメラ好きにはベスト! だが日常の使い勝手重視の人には向かない

 今回のiPhone 13 Proだが、冒頭の通りカメラ好きやガジェット好き、YouTuberの撮影や、サービス開発や提供に活用する「プロ」ユーザーのカメラ機材としては非常に魅力的なモデルだ。高いカメラ性能とたまに使う機能をコンパクトにまとめており、重たさや扱いにくさといった不満点はある程度無視できる。

 だが、一般の人が普段使いに便利なスマートフォンを選ぶ場合は、iPhone 13やiPhone 13 miniを選ぶのが無難だ。普段のカメラ撮影品質やゲームなどの処理性能ともにほぼ違いはない。前のiPhone 12 Proは高級なiPhone 12として選べる部類にあったが、今回のiPhone 13 Proは普段使いの便利さを求める人にとってかなりハードルの高いモデルとなっている。

 どうしても望遠カメラが欲しいなら、外付けのスマートフォン用iPhone用望遠レンズや、スマホ対応に双眼鏡や単眼鏡を取り付けて撮影する手もある。iPhone 13の仕様のまま望遠カメラを搭載したPro未満のトリプルカメラiPhoneがあればよかったのだが、ないものは仕方がない。

iPhone 13 Pro ケンコー・トキナー製「SNAPZOOM II」など、各社からスマホを双眼鏡や単眼鏡に取り付けて撮影可能にするアダプターが販売されている。アウトドアでの撮影時に便利だ

 別の案として、iPhone 13シリーズに納得がいかないなら2021年は買い替えを見送るのも手だ。毎年iPhoneの新製品が出ているが、サイズ感などは微妙にずらしているので2022年のモデルは気に入る製品が出るかもしれない。それまでは、目先を変えてiPhone 13と同じA15 Bionic搭載のiPad miniや高性能なiPad Pro、特価販売も注目のiPhone SEやiPhone 12 miniなどに購入予算を回すのも1つの手だ。新しいiPhoneに買い替える動機のうち、処理性能の面に関しては解消できるだろう。

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