開発陣に聞く「Xperia PRO-I」 1型センサーで“高速・高精度”のカメラを実現した秘密とは(1/3 ページ)

» 2021年12月14日 06時00分 公開
[小山安博ITmedia]

 ソニーが12月15日に発売する「Xperia PRO-I」。アピールポイントが山盛りのハイエンドスマートフォンだが、何より「1型センサーを搭載したカメラ機能」が大きな特徴だ。スマホカメラとしては最大級のセンサーによる高画質カメラを生かしたXperia PRO-I登場の背景について、開発担当者に話を聞いた。

Xperia PRO-I ソニーのコンパクトカメラ「RX100 VII」の1型センサーをベースにしたセンサーを登載した「Xperia PRO-I」

 話を聞いたのは、ソニーのモバイルコミュニケーションズ事業本部企画マーケティング部門企画部の八木隆典氏、イメージングプロダクツ&ソリューションズ事業本部システム・ソフトウェア技術センター、モバイル設計部門カメラ設計部の井口和明氏、モバイルコミュニケーションズ事業本部企画マーケティング部門プロダクトマーケティング部の間下健介氏、ソニーグループのデザインプラットフォーム クリエイティブセンター スタジオ 3の日比啓太氏。

スマホカメラとデジカメの違いに苦労した1型センサー

 ソニーのXperiaシリーズは、基本的に通信事業者経由で提供されているが、2021年になってSIMロックフリーモデルとして「Xperia PRO」が発売された。その名の通りプロフェッショナルをターゲットにした製品で、特に映像制作の現場を想定した製品だった。

 今回登場したXperia PRO-Iは、ターゲットは同じくプロフェッショナルながら、「Imaging」の「I」の名称が加わった通り、撮影の現場をターゲットに、カメラとしても使える製品を目指したものとなっている。そこで決定したのが「1型センサーの搭載」だ。従来のスマートフォンではほとんどなかった大きなサイズのセンサーを搭載したことで、高級コンパクトデジカメ並みの機能を求めたもの。

 企画を担当した八木氏は、「Xperiaのビジョンとして、想像を超えるエクスペリエンスを提供するというものがあり、それを体現する技術を入れなければならない」と話す。そこでソニーの強みは何かを検討した結果、「1型センサー」の採用に至ったという。

 開発自体は「一般的なスマートフォンよりも仕込みの期間が長く、1年以上前から検討してきた」(八木氏)という。これまでXperia 1シリーズでは、レンズ交換式カメラ「α」シリーズで培ったAFなどのスピード性能を盛り込んで「AF性能を極めた」(八木氏)が、その性能を維持しながら1型センサーというさらなる大型センサーの搭載を図ったのがXperia PRO-Iだ。

Xperia PRO-I 企画を担当した八木氏

 α部門でも設計を担当していた井口氏によれば、「一般的にカメラの開発で最もリードタイムが長いのは半導体(イメージセンサー)で、次いでレンズ、ソフトウェアと開発をしていく」。

 今回、Xperia PRO-Iでは「サイバーショット RX100VII」のイメージセンサーをそのまま使っているため、最も長いリードタイムは不要だったが、逆にカメラ用のセンサーをスマートフォンのアプリケーションと組み合わせることが「技術的に大きなチャレンジだった」(井口氏)という。

 通常のデジタルカメラとスマートフォンカメラ、それぞれのイメージセンサーを比べると「業界として作り方が違う」(同)そうで、例えばセンサーのデータの出力の仕方、タイミング、LSIの仕様など、さまざまな点で違いがあるそうだ。その結果、イメージセンサー出力のデータを処理するアプリケーションプロセッサでの処理、制御にはかなりの違いがあるのだと井口氏は説明する。

Xperia PRO-I 設計を担当した井口氏

 その対処のために搭載されたのがフロントエンドLSIだ。αシリーズなどにも搭載されていて画像処理に関する役割を担っていたが、Xperia PRO-Iでは「カメラとスマートフォンの橋渡しを担う」(同)役割も担当している。

 しかもスマートフォン用のプロセッサとカメラ用のセンサーをつなぐため、開発陣はセンサーがどのようにデータを出力するか、そのタイミング、アプリケーションプロセッサの受信の方式、タイミングなどを詳細に分析。αやXperiaのエンジニアが集まって協議した結果、高速動作を可能にして、1型センサー比では小さなセンサーを搭載したXperia 1シリーズと同等の性能を実現したという。

フロントエンドLSIに「α」の技術を搭載

 フロントエンドLSIは、もちろんそれ以外にも重要な役割を担っている。井口氏は、「フロントエンドLSIと(スマートフォンの)アプリケーションプロセッサのいいとこ取りをしている」と説明する。フロントエンドLSIを搭載したことで、ソニーが培ってきた信号処理を、ハードウェアとして導入できるのがメリットの1つだ。

 例えば、RAW段階でのノイズリダクション処理や連写時のノイズリダクション処理が可能になった。AFでも専用の信号処理を搭載したということで、これは「αの像面位相差AFを支えてきた高精度なアルゴリズム」(井口氏)であり、「かなり精度は高い」と井口氏は自信を見せる。

 今回、ハードウェアとしては画像処理エンジンのBIONZは搭載していないが、実際の画像処理のスピードは「スマートフォン(のSoC)の方が速い」(同)。そのため、センサーはRX100VIIをベースに、スマートフォンのSoCを活用してより高度な処理を組み合わせることで画質を向上させることを目指した。

 「特にスマートフォンのGPU、CPUの性能アップが著しい」(同)。専用ハードウェアの搭載には一定のメリットはあるが、スマートフォン側の性能向上を有効活用し、フロントエンドLSIによるハードウェア処理と、ソフトウェア処理も可能なアルゴリズムの部分を「ベストミックス」(同)したのがXperia PRO-Iだという。

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