開発陣に聞く「Xperia PRO-I」 1型センサーで“高速・高精度”のカメラを実現した秘密とは(3/3 ページ)

» 2021年12月14日 06時00分 公開
[小山安博ITmedia]
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レンズを大型化してもAFを高速・高精度に

 Xperia PRO-Iでは、動画用、手ブレ補正分も含めて1220万画素以上を1型センサーから切り出しており、センサーの実力を発揮するためPRO-Iではレンズも大型化した。八木氏は「大きなレンズで一定の画質を実現するのが大変だった」と話す。

 ZEISSブランドのTessarレンズを搭載しており、「画像周辺部のゆがみも少なく、シャープな質感の描写」(八木氏)が特徴だという。レンズユニットの厚みを最小限にするために、一般的にスマホカメラで使われるプラスチックレンズではなく、ガラスモールド非球面レンズを採用。より薄型のユニットを実現した。

 それでもレンズ自体は「非常に大きくなった」と八木氏は話す。さらにAFを駆動させるためのアクチュエーターで苦労したという。いかに速く、いかに正確にAFを合わせるか、その点に技術課題があった、と井口氏も同意する。

 Xperia PRO-Iのレンズには、AF、手ブレ補正、絞りという3つのアクチュエーターを内蔵。レンズが重いため、特にAFと手ブレの可動するためのストロークが大きく、αカメラのエンジニアも参加して開発。「実力で解消していった」と井口氏。

 このTessarレンズは新規開発で、井口氏は「イメージセンサーとレンズを最適化し、アルゴリズムも作り込んだ」と話す。「レンズ、センサーのアルゴリズムをベストミックスで組み合わせたことで、解像感、AF、画質(の良さ)につながっている」とアピールする。

RXシリーズと同じメカ機構のシャッターボタンを搭載

 こうしたレンズの大型化に対して、デザインでも配慮した。「メインカメラの大型センサーをスマートフォンに入れ込むのが第一命題」と語るのはデザインを担当した日比啓太氏。1型センサーを搭載しながら、「日常生活で使えるようなものにしなければならない」という命題があり、「Xperiaのデザインとカメラのアイコニックをバランスよく融合させた」(同)のがPRO-Iのデザインだという。

Xperia PRO-I デザインを担当した日比氏

 メインカメラは他のカメラよりも飛び出しているが、他のカメラと階段構造になっており、上下のカメラと融合させることで、「視覚的にはそこまで飛び出ていないように錯覚する。そういったデザイン技法を使った」と日比氏は工夫を説明。メインカメラをフィーチャーしてカメラを強調しながら、デザインとしてなじみ、「絶妙な狙い通りの設計に落とし込めた」と日比氏は胸を張る。

Xperia PRO-I 階段状になったカメラ部。こうしたデザインはコストも掛かるが、それでも選択したという

 カメラだけでなく、RXシリーズと同じメカ機構のシャッターボタンは、Xperia 1 IIIには搭載できないサイズだったが、これも「メカ設計の努力で採用できた」(日比氏)そうだ。側面に凹凸を入れたフレームのデザインも、強度や剛性感などさまざまな検証の結果採用されたもので、「スマートフォンよりもカメラに寄せたかった」(同)という。

Xperia PRO-I RXシリーズと同じメカ機構だというシャッターボタン。側面の凹凸フレームも独特。RX0に影響されたというよりも、同じ方向性で検討していった結果、同じようなデザインになったという

 特徴の1つであるストラップホールも、本来は「なかなか捻出できない」(日比氏)というスペースを、他の機能を省くことなくどうにか確保した、と日比氏。それぐらい苦労してでも搭載したかった機能ということで、「アクロバティックな撮り方をするときに、ストラップホールがあると撮る画も変わるのではないか」と日比氏は話し、撮影の幅が広がることにもつながるという認識を示す。

Xperia PRO-I ストラップホールはスペースがギリギリだったので、あまり太めのストラップは装着できないが、スマートフォン用だけでなくコンパクトデジカメに付属するようなハンドストラップは十分装着できる

今後のPROシリーズはどうなる?

 Xperia PROシリーズは、「特定のコミュニティーに対して特別な価値を提供する」ことをビジョンとしており、PRO-Iでは「イメージングコミュニティーのトップの人にも使ってもらえるようにした」と井口氏。

 「特定のユーザー層には唯一無二の製品」(八木氏)がXperia PROシリーズのコンセプト。今回はスマートフォンの形状をしているが、八木氏は、「普通のスマートフォンの範囲にとどめず、技術と価値をひも付けて、新たな価値を提供していきたい」と、今後のPROシリーズに対して意気込みを語る。

 ソニーでは、「モバイルのカメラチームとカメラ専用機のチームが、これまで以上に密接に連携して、お互いの交流はかなり加速している」と八木氏。井口氏も「α、RX、Xperia、業務用カメラのエンジニアは、同じフロアで開発しており、ノウハウを共有している」と説明する。

 そうした体制によって、それぞれのノウハウなどの「秘伝のタレ」(井口氏)が蓄積され、今後の製品開発にも生かされていく。個人的には、「カメラに5G」「DMC-CM1のように、スマートフォン+カメラのような製品」を期待しており、ソニーの今後のXperia PROシリーズの展開に注目したい。

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