Xperia PRO-Iでは、動画用、手ブレ補正分も含めて1220万画素以上を1型センサーから切り出しており、センサーの実力を発揮するためPRO-Iではレンズも大型化した。八木氏は「大きなレンズで一定の画質を実現するのが大変だった」と話す。
ZEISSブランドのTessarレンズを搭載しており、「画像周辺部のゆがみも少なく、シャープな質感の描写」(八木氏)が特徴だという。レンズユニットの厚みを最小限にするために、一般的にスマホカメラで使われるプラスチックレンズではなく、ガラスモールド非球面レンズを採用。より薄型のユニットを実現した。
それでもレンズ自体は「非常に大きくなった」と八木氏は話す。さらにAFを駆動させるためのアクチュエーターで苦労したという。いかに速く、いかに正確にAFを合わせるか、その点に技術課題があった、と井口氏も同意する。
Xperia PRO-Iのレンズには、AF、手ブレ補正、絞りという3つのアクチュエーターを内蔵。レンズが重いため、特にAFと手ブレの可動するためのストロークが大きく、αカメラのエンジニアも参加して開発。「実力で解消していった」と井口氏。
このTessarレンズは新規開発で、井口氏は「イメージセンサーとレンズを最適化し、アルゴリズムも作り込んだ」と話す。「レンズ、センサーのアルゴリズムをベストミックスで組み合わせたことで、解像感、AF、画質(の良さ)につながっている」とアピールする。
こうしたレンズの大型化に対して、デザインでも配慮した。「メインカメラの大型センサーをスマートフォンに入れ込むのが第一命題」と語るのはデザインを担当した日比啓太氏。1型センサーを搭載しながら、「日常生活で使えるようなものにしなければならない」という命題があり、「Xperiaのデザインとカメラのアイコニックをバランスよく融合させた」(同)のがPRO-Iのデザインだという。
メインカメラは他のカメラよりも飛び出しているが、他のカメラと階段構造になっており、上下のカメラと融合させることで、「視覚的にはそこまで飛び出ていないように錯覚する。そういったデザイン技法を使った」と日比氏は工夫を説明。メインカメラをフィーチャーしてカメラを強調しながら、デザインとしてなじみ、「絶妙な狙い通りの設計に落とし込めた」と日比氏は胸を張る。
カメラだけでなく、RXシリーズと同じメカ機構のシャッターボタンは、Xperia 1 IIIには搭載できないサイズだったが、これも「メカ設計の努力で採用できた」(日比氏)そうだ。側面に凹凸を入れたフレームのデザインも、強度や剛性感などさまざまな検証の結果採用されたもので、「スマートフォンよりもカメラに寄せたかった」(同)という。
特徴の1つであるストラップホールも、本来は「なかなか捻出できない」(日比氏)というスペースを、他の機能を省くことなくどうにか確保した、と日比氏。それぐらい苦労してでも搭載したかった機能ということで、「アクロバティックな撮り方をするときに、ストラップホールがあると撮る画も変わるのではないか」と日比氏は話し、撮影の幅が広がることにもつながるという認識を示す。
Xperia PROシリーズは、「特定のコミュニティーに対して特別な価値を提供する」ことをビジョンとしており、PRO-Iでは「イメージングコミュニティーのトップの人にも使ってもらえるようにした」と井口氏。
「特定のユーザー層には唯一無二の製品」(八木氏)がXperia PROシリーズのコンセプト。今回はスマートフォンの形状をしているが、八木氏は、「普通のスマートフォンの範囲にとどめず、技術と価値をひも付けて、新たな価値を提供していきたい」と、今後のPROシリーズに対して意気込みを語る。
ソニーでは、「モバイルのカメラチームとカメラ専用機のチームが、これまで以上に密接に連携して、お互いの交流はかなり加速している」と八木氏。井口氏も「α、RX、Xperia、業務用カメラのエンジニアは、同じフロアで開発しており、ノウハウを共有している」と説明する。
そうした体制によって、それぞれのノウハウなどの「秘伝のタレ」(井口氏)が蓄積され、今後の製品開発にも生かされていく。個人的には、「カメラに5G」「DMC-CM1のように、スマートフォン+カメラのような製品」を期待しており、ソニーの今後のXperia PROシリーズの展開に注目したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.