ドコモにとって、トーンモバイルを招き入れるメリットも明確だ。ドコモは子ども向けの端末として「キッズケータイ」を販売しており、付随するサービスとして「イマドコサーチ」を用意しているが、このモデルはあくまで小学生ぐらいまでの子どもがターゲット。TONE for docomoのように、スマートフォンを使うティーンエージャー用の端末やサービスは限定的だ。TONE for docomoがなければ、この年齢層のユーザーを取りこぼすリスクがある。
トーンモバイルは全年齢をターゲットにしたMVNOではないため、親の保護が必要ない年齢になったとき、ドコモ本体に戻ってくることも期待できる。家族がドコモのユーザーであれば、その確率はさらに高くなりそうだ。ドコモを契約している親が訪れる可能性の高いドコモショップでTONE for docomoを販売するのは、非常に合理的といえる。TONE for docomoが料金プランを絞り込んでいることもあり、同じエコノミーMVNOでもOCN モバイル ONEよりシナジー効果は分かりやすい。
その意味で、2社の関係は相互補完的だ。トーンモバイル側は販売拠点やサポート、端末が手に入る一方で、ドコモは間接的ながらも、手薄になっていたティーンエージャー向けのサービスをラインアップに加えられる。TONE for docomoのユーザーが増えれば、フリービットはより多くの帯域を必要とするようになるため、ドコモが得られる接続料の額も上がっていくはずだ。さらに、iPhoneの販売収入も期待できる。
課題は、iPhoneしかターゲットになっていないことだ。子どもからの人気が高いiPhoneだが、ハイエンドモデルで価格も高く、家庭の経済的な負担が大きくなる。トーンモバイルでは比較的安価なAndroidの端末を販売しているが、これは、同社のオリジナルモデル。見守りサービスを搭載するため、ソフトウェアの深い部分にまで手を入れているのが独自開発の理由だ。端末と通信を融合させ、垂直統合的にサービスを提供しているのがトーンモバイルの特徴だが、裏を返すと、提供できる端末が限られてしまう点がデメリットになる。
TONE for docomoがiPhone限定のサービスで始まったのも、このような事情が関係している。エコノミーMVNOは、あくまで回線や回線にひも付くサービスを販売する取り組みで、トーンモバイルの独自端末をドコモショップで販売できないからだ。石田氏も、「(同社のサービスをAndroid上で実現するには)やはりハードウェアから作らないといけない」と語る。ドコモの提供するAndroidスマートフォン上では、思い描くサービスが提供できないというわけだ。
「Androidの方も多くいるため、こういった方々にリーチできる形はないかドコモと取り組んでいきたい」(同)というものの、ドコモショップで独自端末を販売できない以上、トーンモバイル側が取れる選択肢は少なくなる。サポート体制も含め、ドコモ以外のMVNOが販売する端末をどう扱っていくかは、エコノミーMVNOの今後の課題になりそうだ。
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