ドコモが扱う「TONE for iPhone」の狙い 料金は約50%値下げ、課題はAndroid端末石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2021年12月18日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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ドコモにとっても補完的なサービスに、課題は独自モデルのAndroidの扱い

 ドコモにとって、トーンモバイルを招き入れるメリットも明確だ。ドコモは子ども向けの端末として「キッズケータイ」を販売しており、付随するサービスとして「イマドコサーチ」を用意しているが、このモデルはあくまで小学生ぐらいまでの子どもがターゲット。TONE for docomoのように、スマートフォンを使うティーンエージャー用の端末やサービスは限定的だ。TONE for docomoがなければ、この年齢層のユーザーを取りこぼすリスクがある。

TONE for iPhone ドコモの子ども向け端末は、現状だとキッズケータイ1機種のみ。ティーンエージャー向けのサービスも手薄になっていた

 トーンモバイルは全年齢をターゲットにしたMVNOではないため、親の保護が必要ない年齢になったとき、ドコモ本体に戻ってくることも期待できる。家族がドコモのユーザーであれば、その確率はさらに高くなりそうだ。ドコモを契約している親が訪れる可能性の高いドコモショップでTONE for docomoを販売するのは、非常に合理的といえる。TONE for docomoが料金プランを絞り込んでいることもあり、同じエコノミーMVNOでもOCN モバイル ONEよりシナジー効果は分かりやすい。

TONE for iPhone ドコモとTONE for docomoでは、ターゲットが明確にすみ分けられている。ドコモとしても、販売がしやすいだろう

 その意味で、2社の関係は相互補完的だ。トーンモバイル側は販売拠点やサポート、端末が手に入る一方で、ドコモは間接的ながらも、手薄になっていたティーンエージャー向けのサービスをラインアップに加えられる。TONE for docomoのユーザーが増えれば、フリービットはより多くの帯域を必要とするようになるため、ドコモが得られる接続料の額も上がっていくはずだ。さらに、iPhoneの販売収入も期待できる。

 課題は、iPhoneしかターゲットになっていないことだ。子どもからの人気が高いiPhoneだが、ハイエンドモデルで価格も高く、家庭の経済的な負担が大きくなる。トーンモバイルでは比較的安価なAndroidの端末を販売しているが、これは、同社のオリジナルモデル。見守りサービスを搭載するため、ソフトウェアの深い部分にまで手を入れているのが独自開発の理由だ。端末と通信を融合させ、垂直統合的にサービスを提供しているのがトーンモバイルの特徴だが、裏を返すと、提供できる端末が限られてしまう点がデメリットになる。

TONE for iPhone トーンモバイルは、独自のAndroid端末を販売して、垂直統合的にサービスを提供している。これは、ソフトウェアの深い部分までカスタマイズするためだ。エコノミーMVNOではこうした端末を提供できず、iPhone限定のサービスとしてスタートした

 TONE for docomoがiPhone限定のサービスで始まったのも、このような事情が関係している。エコノミーMVNOは、あくまで回線や回線にひも付くサービスを販売する取り組みで、トーンモバイルの独自端末をドコモショップで販売できないからだ。石田氏も、「(同社のサービスをAndroid上で実現するには)やはりハードウェアから作らないといけない」と語る。ドコモの提供するAndroidスマートフォン上では、思い描くサービスが提供できないというわけだ。

 「Androidの方も多くいるため、こういった方々にリーチできる形はないかドコモと取り組んでいきたい」(同)というものの、ドコモショップで独自端末を販売できない以上、トーンモバイル側が取れる選択肢は少なくなる。サポート体制も含め、ドコモ以外のMVNOが販売する端末をどう扱っていくかは、エコノミーMVNOの今後の課題になりそうだ。

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