一人勝ちのahamo、楽天モバイルの逆襲 2021年の“携帯料金競争”を振り返る石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2021年12月31日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

0円プランで先行した楽天モバイル、2社のサブブランドも順調に拡大

 オンライン専用プランの影響を受けたのは、大手3キャリアだけではない。2020年4月に本格参入したばかりの楽天モバイルも、その1社だ。同社は4月にデータ通信が使い放題の「UN-LIMIT V」を改定。0円から3278円の間で料金が変動する、段階制のUN-LIMIT VIを導入した。段階制の料金プラン自体は大手3キャリアも導入しているが、楽天モバイルのそれは、1GB以下が無料になるのが最大の特徴。0円のままでも楽天市場での還元率が1%上がるため、ポイント目当てで契約することも可能になった。

楽天モバイル UN-LIMIT VIで段階制を導入した楽天モバイル。1GB以下は無料という衝撃の価格を打ち出した

 使い放題と20GBという差はあるものの、大手3キャリアのオンライン専用プランとUN-LIMIT Vは金額がほぼ横並び。大手3キャリアに比べ、エリアが見劣りする楽天モバイルは、そのままだと“草刈り場”になる恐れもあった。本格参入開始後に始めた1年無料キャンペーンが終わるユーザーが、4月から徐々に増え始めるからだ。もともと料金競争を仕掛けた側だった楽天モバイルだが、大手3キャリアのオンライン専用プランに引きずられる形で、さらなる値下げ競争を余儀なくされたといえる。

Rakuten UN-LIMIT データ容量無制限一択だったUN-LIMIT Vはシンプルだった半面、料金的には大手3キャリアのオンライン専用プランより高くなってしまっていた

 とはいえ、UN-LIMIT VIの導入で楽天モバイルの契約者獲得に弾みがついたことも事実だ。3月には285万契約だった楽天モバイルのユーザー数は6月に366万を突破。9月には411万にまで拡大している。1年無料キャンペーンの駆け込み需要はあったものの、半年間で100万契約以上を上乗せできたのは、UN-LIMIT VIの成果といえる。結果として、大手3キャリアはもちろん、MVNOから楽天モバイルに移るユーザーも増えている。

Rakuten UN-LIMIT UN-LIMIT VIを導入した結果、1年間無料キャンペーン終了後もユーザー数は順調に拡大。9月にはMNOだけで411万契約を突破した

 先に挙げたKDDIのpovo2.0も、楽天モバイル対抗で導入されたサービスの1つだ。同社の高橋誠社長はpovo2.0の基本料が0円になったのは、楽天モバイルへの流出を止めるためだったと明かした。povo2.0はUN-LIMIT VIとは異なり、0円のままだと128kbpsでしか通信できないが、提携した店舗での購入特典としてデータ容量をもらえる「#ギガ活」を組み合わせれば、無料で利用することができる。このリニューアルで楽天モバイルへの流出が収まり、povo全体の契約者数は100万を突破した。

povo2.0 povo2.0は、楽天モバイルに対抗するため、基本料が0円になったという。#ギガ活を駆使すれば、0円のまま利用することも可能だ

 ahamoが先鞭(せんべん)をつけた料金値下げ競争だったが、KDDIやソフトバンクの場合、むしろ好調だったのはUQ mobileやY!mobileといったサブブランドだった。両ブランドとも、2月に新料金プランを導入。UQ mobileは6月に「でんきセット割」を、9月に固定回線を対象に加えた「自宅セット割」を開始した。割引を適用した際の3GBプランの料金は990円で、オンライン専用プランと比べてもそん色のない安さになった。

UQ mobile KDDIは6月に、UQ mobileの「でんきセット割」を導入。現在は固定回線も対象に含め、「自宅セット割」に改定されている

 先行するY!mobileは700万契約、UQ mobileは5月時点で300万契約を突破するなど、両ブランドとも順調に拡大している。コンセプトの新しさから話題になりがちなオンライン専用プランだが、スマートフォンに慣れているユーザーですら、つまずくポイントは少なくない。端末を故障、紛失した際のサポート体制などにも不安が残る。店舗を構えるUQ mobileやY!mobileが、こうした点を重視するユーザーの受け皿になっているといえそうだ。

Y!mobile オンライン専用プランが注目を集めがちだが、KDDIやソフトバンクはサブブランドが好調。メインブランドからの移行もあり、契約数を伸ばしている

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